時の洗礼とは?
冒頭の引用は、村上春樹の「ノルウェイの森」に登場する永沢さんのセリフです。
読んだことがある方も少なくないのではないでしょうか。
死後30年が基準
永沢さんは生粋の読書家で、死後30年を経ていない作家の本を原則として手にとろうとはしません。
- 死後三十年を経ていない作家の本は原則として手に取ろうとしなかった。そういう本しか俺は信用しない、と彼は言った。
文学はコンテキストとしてその時代の文化に根づく要素があります。
そしてその時代の人々に望まれて広まる。
すると、大衆が読みたい本がベストセラーになって、それに比例して中身が薄い本も量産されていきます。
こうしたことがはっきりと書かれているわけではありませんし、よくある話でもあります。
ただ当時の私にとっては新鮮な考え方で、永沢さんもきっとそう考えて行動していたのだろうと思っています。
時の洗礼で本を厳選しよう
では読む価値のある本をどうやって選べばよいか?
時の洗礼の考え方は、そのようなときに役に立ちます。
何年も経てば、流行り物は廃れます。
しかし何か光る名作というモノは、人々の心に残る。
そこには大衆を惹きつける魅力が依然としてあります。
言葉という器を通じて、その時代の思いや考え、大事な価値観を可視化して見せてくれる。
時代を経てもなお色褪せないモノがたくさん詰まっているのです。
そして名作もまた、時の洗礼を受けて残ったものが古典となります。
かくいう私も永沢さんの考えが大好きで、学生時代に背伸びして古典文学に手を出しました。
今では著作権の切れた日本文学なら、青空文庫を利用すれば無料で読めるため、本当にいい時代になりましたね。
https://www.aozora.gr.jp/
時の洗礼を受けた投資本
さて、このブログのテーマは投資なので、資産運用の分野ではどうでしょうか?
これは悩ましい、なぜなら発展する分野だから。
それでも資産運用の分野で、古典といったらベンジャミン・グレアムの『証券分析』は間違いなく名前に上がるでしょう。
難易度はそこそこで、1000ページとボリューム満点です。ベンジャミン・グレアム渾身の一冊で、ウォーレン・バフェットの師匠としても知られる方です。
値段が1万円もするので、当時の私は図書館で借りて、何度も読んではメモしていました。
今ではKindleでセール時には半額以下で買えるため、興味がある方は狙ってみてください。
この本のすばらしいところは、株式に限らずさまざまな金融商品のことを取り上げてるところですが、それだけではありません。
目玉は正味純資産をもとに理論株価を決めて、安全域(バッファ)を設けて安値で投資することを勧めている点でしょう。
最近でいうところの、”ネットネット株”でしょうか。
古典を学ぶ価値とは?
ただ今の時代に合っているかは微妙なところです。
当時は製造業がメインだったので、機械やそれらを置く土地建物といった資産を使用して収益が生まれるため、会計上の資産額に掛け目を乗じて資産価値を算定するやり方は有効だったと思います。
しかし今の主流はGAFAMに代表されるように、人やアイデアから収益を得る、(固定)資産に頼らないハイテク企業等に勢いがあります。
加えて、当時は今みたいに情報がインターネットによって簡単に入手できなかったため、財務分析によって宝探しもできたという点も評価されていたと思います。
もちろん正味純資産(ネットネット)による投資が全く使えないというわけではなく、依然として製造業や、現金預金や株式などの換金が容易な資産を多く持つ会社には有効であり、学ぶ価値があるのは事実です。
わたしもときどき使ってます。
ただ、人々は資産よりEPSなどの収益面をより重視するようになっており、ネットネット株が報われるまでにはみんなが見つけてくれるまで根気がより必要になっただけです。
まとめ
- 時の洗礼を受けた本を読もう!
おわりに
投資本は無数にありますが、時の洗礼を受けた本となると数は限られてきます。
もちろん最新の手法は流行り物でなければ学びません。
しかしたいていのことは昔からの焼き直しで、時の洗礼を受けた古典にはその知恵がたくさん載っています。
かくいう当ブログで扱う本も、時の洗礼を前提に選んでおります。
よろしければ一緒に読んでいきませんか?