
裏打ちされた売りのサインには、どのようなものがあるかを知ることが大事です
本著の中でも特に重要であり、入り口を教える投資本が多い中で、出口を示す本著は貴重です。
全4回の最後は、そのほかの重要な売りの指標を紹介するとともに、逆にどんなときに我慢して持ち続けなればならないか学びましょう。
売りのテクニカル指標(再掲)
前回の記事は下記リンク先をご覧ください。
gyatuby.hatenablog.comgyatuby.hatenablog.com
gyatuby.hatenablog.com
以下、内容が非常に濃く重いです。
そこで私見ですが重要度や使用頻度から独自に3段階でつけました。
まずは他のサインは頭の片隅に置いて重要度の高いものから吸収してください。
何度も読んで少しずつ身につけましょう。
そのほかの重要な売りの指標(★・・)
リスクリワードは1:3の割合で(★★★)
今回読んでいる指標の中で、最も重要とも言えますし、わかりやすい目安と言えます。
このリスクリワード1対3を利用して、マーケットに応じてリスクを限定していくことも大事です。
たとえば弱気相場であれば損切り5%未満、利食い15%とするのもいいでしょう。
また、実際に利食いしなくとも逆指値(ストップロス)注文やトレール注文(株価の上昇に合わせて逆指値注文の位置をどんどん上げていく*1)を入れるのも有効です。
そうすることで反落したら利食いはするけど、上昇するまではその勢いに任せることが可能になります。
なお、後述しますがオニール氏はこの方法には反対しています。
事実で売れ(★・・)
- 株価が上昇して、そのあとに良い報道や大きな宣伝が発表されたときに売りを考える。
大口投資家が株を売るには、大量の株式を吸収してくれるだけの買い手が必要になります。
いわゆる「嵌め込み」と呼ばれる手法です。
また、インサイダー情報はもちろん、誰かの耳寄り情報も当てにならないことが多いです。
たとえ最初に含み益が出ても、いついかに売るかまで考えていないと文字通り嵌められてしまいます。
総強気や幸福感に浸っているときに売る(★★・)
- ある銘柄に対する期待感が高まり、その銘柄が継続してまた上昇することが明らかに見えたら売る。
- 自分が死ぬほど怖いと感じて、他人も期待を寄せていない時に買うのだ。
- そして死ぬほどうれしくて大喜びしているときに売る。
よく言われていることですが、実際に行動するのは簡単ではありません。
Twitterただの早耳。株クラ内で声の大きい人が終わったとか全部売れとか言っても、世間的には初動オブ初動のイノベーター1%以下という事が多々ある(代表例は2019年ワークマン)。
— ちょろねこ (@chorobuzz) April 22, 2021
だからやっぱり店行ったり人に聞いたりして、その商品サービスが今どの段階でどこまでいくか、予想立てて買っていく。 pic.twitter.com/CxrSMeTuPo
このようなことに関する、有名な格言としては、
また、ジャック・ドレフュスも以下のように述べています。
- 世間が楽観的な考えで浮かれていたり、他人にも買うようにいそいそと勧めているようなときには、その銘柄はすでに十分買われている。
- それ以上株価を押し上げることはできない。株価の上昇には、購買力が必要だからである。
先ほどのツイートの例にもある通り、実際にはいつ総強気なのか、具体的な目安がわからないので、強気判断をすることは簡単ではありません。
オニール氏はマーケットの動きに注目することを勧めますが、ドレフュスの言葉通り株式投資が雑談で積極的に話されるようになったら、警戒する必要があるかもしれません。
人間誰しも自分が怪しいと思われたくないから、簡単に儲かり、かつ世間のムードとして市民権を得るまでは(リアルで)話さないのかなと思っています。
これも周りの人次第なのですが、少なくとも身近な人を説得する根拠として相手に損失を与える(結果的に騙す)リスクをどの程度意識しているかという点は、大事な目線ではないでしょうか。
少なくともマーケットが崩壊している時に、自分はまだしも他人にまでリスクを背負わせようとは思わないでしょう。
四半期EPS増加率が2四半期連続で著しく減る(★★★)
- 四半期収益の増加率が2四半期連続で著しく鈍ったら(あるいは前回の増加率の3分の2に減ったら)、ほとんどの場合で売りのサインとなる
ファンダメンタルズ指標を売却価格の目安にするのはあまりおすすめしません。
ですが、大化け銘柄の前提でもある収益が悪化したら売ることを検討しましょう。
成長株は兎にも角にも、収益の伸びが命です。
保有株の決算は絶えず確認することも、売る判断をするうえでは重要になります。
悪いうわさで売るのはいったん立ち止まる(★・・)
- 悪い報道やうわさが流れたからといって、一時的な影響しか株価に与えないこともあるため売るのは注意が必要だ。
「事故は買い、事件は売り」という言葉もあります。
悪い報道やうわさが、今後の企業環境に影響を及ぼすかどうかは見極める必要があります。
もっと悪質なのが、握力が弱い個人投資家に恐怖を与えて持ち株を売却させようとして流されるうわさもあります。(いわゆるふるい落とし)
そのようなときは一呼吸おいて、そのうわさの真偽を確かめたり、影響がどのようになるか考えましょう。
そして何より、チャートにどう反映されるか見極めましょう。
チャートはすべてを映す鏡です。
どんな媒体よりも早くニュースを伝えます。
忍耐強く株を持ち続けるとき
- 最高の収益増加を見せる大化け銘柄を、これという正しいタイミングで買い、そしてその判断が正しかったか間違っていたかが実証されるまで、忍耐強く持ち続けることがあなたの仕事なのである。
- 市場の平均価格を分析・確認することが何よりも重要である。
- 新規に株を買ったら、日足や週足チャートに損切りをする水準(買いポイントの8%下)を、防衛ラインとして赤ペンで書きこむのだ。
- 株価の上昇に合わせて逆指値注文の位置をどんどん上げていくのは、絶対避けるべきである。
- 株価が買値から15%以上上がったら、上昇途中のどこで売るか、あるいはどのルールを使って売って利益を確定するかを考え始めてよい。
- 20%近く上昇したような株は、絶対に損失に転じるまで持ち続けてはならない。
- 8週間以内に20%も上昇するような銘柄は、8週間継続して保有し続けるべきである。
- 株で大きな利益を得るには、時間と忍耐強さ、そしてルールの順守が欠かせない。
最後になりますが、忍耐強く株を持ち続けるときを学びます。
いつ売るかという判断は、いつまで持ち続けるかと表裏一体です。
そこでオニール氏からのアドバイスを紹介していきます。
適切に成長株を買えたなら
今後1~2年の収益予想から、
- ベースをブレイクアウトしてあとに株価はどれだけ上昇しそうか
- PER(株価収益率)はどれだけ上昇しそうか
本著で紹介している、PERを使った詳細な予測手法は、
- 例えば、今後2年間の収益の見通しの数値を、その銘柄のチャートで見付けた最初の買いポイント時点のPERの数値で掛け、そこで得た結果に100%か100%強を掛ける。
- この計算は、成長株が大きく値を上げたときに、平均的にPERがどの程度上昇する可能性があるかを測定するもの。
具体的な計算を示すとイメージがつくでしょうか。(pp.214)
たとえば、最初の買いポイントにおけるPERが40倍、株価43.75ドルとします。
このときに、40に130%をかけて得た数値(=52)が今後の伸び幅となり、この銘柄はPER92(=40+52)倍にまで伸びる可能性があると仮定します。
その次に、2年後の予想EPS1.45ドルにこの予想PER92倍を掛けます。
この結果出た数字133.4(=1.45×92)ドルが、予想株価と計算できました。
売る目安が欲しいという人には便利かもしれません。
私は面倒な割に不確実なので使っていません。
マーケット全体の動きが何より重要
市場全体が弱いと、個別株も上がりづらいです。
本著では『インベスターズ・ビジネス・デイリー』の「ザ・ビッグ・ピクチャー」を紹介しています。(有料です、日経新聞みたいなものでしょうか?)
https://www.investors.com/category/market-trend/the-big-picture/
マーケット全体が売りぬけや天井を示したり、既に弱気相場入りしていると、新規に株を購入しても失敗に終わることが多いため、傍観するのがよいでしょう。
マーケットに逆らってはいけません。
損切りラインを決めて持ち続ける
通常の調整で大化け銘柄を逃すのはもったいない。
新しい強気相場が始まって1~2年の間はそれだけの余裕を与えて、株価が損切りラインを切るまで持ち続けましょう。
もちろん買値の8%損切りは絶対です。
アラートをつけるなりして注意しましょう。
損切りラインを下回っても、復活することはよくあります。
しかし、そんな気まぐれでトレードしていては自信がつくはずもありませんし、何より百回に一度の大暴落となった場合は、マーケットから(メンタル的にも)退場することになってしまいます。
まずは決めたルールを淡々と従うことが重要です。
トレール注文は絶対避けるべき
通常の調整でふるい落とすのを避けるために、損切りラインを引き上げる際は最初に買ったあとに調整した安値にとどめておきましょう。
現在の株価にあまりに近づけすぎてはいけません。
そういった理由で、トレール注文は、絶対避けるべきです。
自然な調整は必ずやってきます。手仕舞ってはもったいない。
ここはぐっと我慢して、株価が買値から15%以上上がったら初めて、上昇途中のどこで売るか、あるいはどのルールを使って売って利益を確定するかを考え始めましょう。
幻の含み益にしてはいけない
20%近く上昇したような株は、絶対に損失に転じるまで眺めてはいけません。
下落するのを眺めてしまう心理として、過去の高値を意識してしまい、ここで売るのは悔しくてやりきれないと思ってしまうからです。
七面鳥の話でも出てきましたね。
繰り返しになりますが、眺めているその時点で利益確定をし損ねたという過ちを犯しています。
それをマイナスに転じるまで我慢するという二重の過ちを犯してはいけません。
すべての損失をできるだけ最小限に抑えることが私たちのやるべきことの一つです。
8週間継続して保有し続けるべき時
大化け銘柄が最高に熟すまでには、それなりの時間がかかります。
8週間以内に20%を超える銘柄は、以下の理由がない限り8週間保有し続けるべきです。
わずか1~3週間で20%上昇する銘柄は、テンバガーの可能性があります。
このようなCAN-SLIMの条件に当てはまる本物の主導銘柄では、10週移動平均線まで、あるいはその少し下まで1~2回押しが入っても保有し続けてみましょう。
むしろ押しに増し玉をするのもいいかもしれません。
また、ある程度まとまった利益が出ているなら、10~20%の最初の短期の修正の間も保有し続けることを検討しましょう。
大幅なリターンが見込めるなら、リスクもそれなりに背負う価値もあります。
株価が適切なベースからブレイクアウトして上昇すると、その8割がたは2~6週の間に押しが入ります。
これを、8週間保有し続けることで、この最初の売り圧力を乗り越えて上昇の波に乗ることができます。
こちらは、もちろん強気相場での話です。
くどいようですが、けっしてマーケットに逆らってはいけません。
おわりに
市場で勝者になるには、まず良い売り手と良い買い手になることから始まります。
ここまで読み終えた私たちは、買う技術と売る技術を学びました。
しかし、これだけではまだ足りません。
体操に心技体があるように、株式投資にも必要な3要素があります。
それは、「①精神力、②投資術、③資金管理」 です。
どんなに優れた技術でも、それを実行するメンタルが必要です。
そして学んだ②技術と併せて、しっかりした③資金計画がなければ、凄腕トレーダーも破産してしまいます。
勝てるようになり、調子に乗って取引単位を増やし破産しては意味がありません。
そこで次回は資金管理について読んでいきましょう。
ポートフォリオの扱い方や取引単位の決め方など、やらなければならないことはまだたくさんあります。