はぐれ猿でも、投資がいいんだ。

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【会計士が斬る】1928 積水ハウス【銘柄分析】

『賢明なる投資家』で説明されている内容に基づいて、会計士が銘柄分析を行います。

今回は【1928 積水ハウス】について分析します。

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注意事項

  • 情報の精査には細心の注意を払っていますが、ミスや情報が劣化する可能性があるため、あらかじめご了承ください。
  • 1株当たり利益の算定では、潜在株式考慮後の金額を使用しています。

会社概要

ロゴ
  • 注文住宅大手
  • 賃貸住宅や都市開発のほか、海外にも展開。
  • 2024年、米国の住宅大手を49.9億円で買収。



セグメント売上

セグメント

戸建請負(注文住宅)のイメージが昔は強かったが、事業の多角化で収益基盤を固めています。

所在地売上

国際

海外進出にも積極的で、主に米国が強いです。

米国では戸建て住宅のニーズが強く、稼ぎ頭となっています。



定量分析

データ

『賢明なる投資家』第14章の7つの基準を用いて定量分析を行います。
gyatuby.hatenablog.com

1.企業の適切な規模:〇

平均以上の変動の影響を受けやすい小企業を排除するための基準です。

売上高4兆円規模、時価総額も2兆円を超えており、まさに大企業といえます。

2.十分に健全な財務状況:〇

財務の安全性の目安である、流動比率200%、自己資本比率50%を上回っています。(2024年1月末時点)

ただ直近は、米国の大手MDC社の買収影響で、自己資本比率は39.8%に下がっています。

これは大型買収のために借入を大幅に増やしたためです。

とはいえ、資金繰りには今のところは特に問題はないと思われます。


なお、これらの基準は、株主還元の余力も示しています。

現状、増配を図るなど、株主還元に積極的な姿勢を見せていますが、その動向には注意する必要はあります。

3.収益の安定性:〇

過去10年黒字を維持しており、収益は安定しています。

また安定指数は、過去10年間において、それに先立つ三年間の平均値と比べて1株当たり利益の最大の減少を計算しています。

つまり、減少がゼロなら安定性100%ということです。

住宅関連株は景気循環株のため、収益の波が発生していることもありますが、これは後述する収益の成長も一因です。



4.配当歴:〇

少なくとも過去20年間において、何らかの配当を出しています。

そのため、配当が無配になるリスクについて心配する必要はないでしょう。

5.収益の伸び:〇

2022年~2024年の平均と2012年~2014年の平均を比べると、成長率は276%で、年率約11%です。

目安となる成長率3分の1を上回っています。

6.妥当な株価収益率:〇

現在の株価は、目安となる過去3年間の平均収益の15倍を下回っています。

なお、PER15倍となる目標株価は4,065円です。

7.妥当な株価純資産倍率:〇

現在の株価は、目安となる純資産価値の1.5倍を下回っています。

なお、PBR1.5倍となる目標株価は4,062円です。



定性分析

定量分析では見ることができない、質的項目について分析していきます。

業界分析(業界地図などより)

1.戸建て住宅
  • 住宅販売価格の上昇により、国内の住宅市場は低迷している。
  • 資材価格や労務費、地価の高騰で建築費が上昇し、住宅各社が販売価格に転嫁している状況。
  • パワービルダーと呼ばれる低価格の分譲住宅を販売する会社に、その影響が如実に影響を受ける。
  • 中長期的に見れば、国内の住宅市場は人口減少の影響は避けられない。
  • 足元では日銀の金融政策修正によって、住宅ローン金利が上昇する可能性が高まっており、需要をさらに冷ます懸念がある。
  • 反対に、米国では慢性的な中古住宅不足を背景に、新築住宅への需要が高い状況が続いている。
  • 人口増加と所得上昇が期待できる米国は、今後も重要市場となりそう。
2.マンション
  • 用地不足と建築費増を背景に、新築マンションの価格高騰は当面続きそう。
  • デベロッパーは用地取得に苦戦している。
  • 2024年から、建設業界にも時間外労働の上限規制が設けられ、建築費の上昇や工期の延長は避けられない。
  • 一方のマンション需要は健在。
  • 共働き世帯の増加に伴い、ダブルインカムの「パワーカップル」が需要を支えている。
  • また、マンションは投資対象としても人気。
  • 金融機関も住宅ローンの貸し出しには積極的な姿勢。
  • とはいえ長期的に見れば、人口減少のなかで実需の低下は確実。
  • 金利の先高観が増せば、需要超過の市場が転換点を迎える可能性もある。



直近の決算分析

直近決算
  • 買収効果もあり、米国事業が大幅に増収、増益も達成した。
  • また国内も全事業で増収増益で、安定した成長を示している。
  • とはいえ売上総利益率は減少しており、原価率が増加している。
  • このうちMDCの粗利率は0.3ポイントの低下、インセンティブを付与して販売を強化している模様。



同業他社分析(対大和ハウス

  • 大和ハウスの株価は右肩上がりである一方、積水ハウスは右肩下がりとなっている。
  • これは米国の直近指標(住宅着工件数)が冴えない影響を受けている。
  • 買収したMDC社で、インセンティブの付与で販売を促進している状況にも疑問視があるか。
  • 他方で、大和ハウスは、国内の物流施設の開発案件が順調であるため、その点評価されている模様。
  • また1月末時点ですが、棚卸資産回転率は積水ハウスが1.87回に対し、大和ハウスが2.43回。
  • MDC社買収後に、さらに販売用不動産が増えた影響を踏まえると、在庫水準はさらに高まっていると思われる。
  • 米国の戸建て住宅事業に注力する姿勢は、両者共通。



総括

積水ハウスも注文住宅大手から、事業を多角化しており、外部環境に左右されない収益基盤を築きつつあります。

配当利回り3.25%とそこそこの配当があり、またお米の株主優待もあって、長期投資にも嬉しいかもしれません。

しかし、目標株価に間近となっており、チャートも右下がりが続いていたので、今の水準では買いづらいかもしれません。

おわりに

同業他社の間で、株価が対照的に動いているとなると何らかの要因があるはずです。

株価はすべてを映す鏡です。

分析して分かることの大抵は、株価に織り込まれているかと思います。

私は大和ハウスを所有しているため、運がよかったのかもしれません。

とはいえ分析を通じて、保有することに自信がつくようになるので、今後も分析を続けていくつもりです。
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