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【会計士が斬る】9020 東日本旅客鉄道(JR東日本)【銘柄分析】

『賢明なる投資家』で説明されている内容に基づいて、会計士が銘柄分析を行います。

今回は【9020 東日本旅客鉄道JR東日本)】について分析します。

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注意事項

  • 情報の精査には細心の注意を払っていますが、ミスや情報が劣化する可能性があるため、あらかじめご了承ください。
  • 1株当たり利益の算定では、潜在株式考慮後の金額を使用しています。

会社概要

ロゴ
  • 鉄道最大手。首都圏・東日本が地盤。
  • 山手線はじめドル箱路線を多数抱える。
  • 不動産や小売でも大きな存在感。
  • 『Suica』を育成。



定量分析

データ

『賢明なる投資家』第14章の7つの基準を用いて定量分析を行います。
gyatuby.hatenablog.com

1.企業の適切な規模:〇

平均以上の変動の影響を受けやすい小企業を排除するための基準です。

時価総額は3兆円を超えており、大企業といえます。

2.十分に健全な財務状況:×

公益企業の財務の安全性の目安である、自己資本比率50%を下回っています。

新路線開設や不動産に投資をしており、ほかの鉄道会社と比べても低いです。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(純利益/支払利息)は2.8倍と現状はギリギリ安全域にあり、資金繰りに特に問題はないと思われますが、注意を払う必要があります。


なお、これらの基準は、株主還元の余力も示しています。

現状、増配を図っておりますが、株主還元の姿勢の変化には注意を払う必要があるでしょう。

3.収益の安定性:〇

コロナ危機の際は大幅赤字となりましたが、この赤字は特別な外部環境により移動が制限されたためであり、本来の実力を示しているとはいえないと考えました。

このコロナ危機以外では、過去10年黒字を維持しており、収益は安定しているといえるでしょう。


また安定指数は、過去10年間において、それに先立つ三年間の平均値と比べて1株当たり利益の最大の減少を計算しています。

つまり、減少がゼロなら安定性100%ということです。

公共事業は比較的収益が安定することが多く、JR東日本もその一つです。



4.配当歴:〇

少なくとも過去20年間において、何らかの配当を出しています。

そのため、配当が無配になるリスクについて心配する必要はないでしょう。

5.収益の伸び:×

2022年~2024年の平均と2012年~2014年の平均を比べると、成長率は-4%です。

目安となる成長率3分の1を下回っています。

これは、コロナ危機からの回復が早くなかったため、過去3年平均の利益が減少してしまったためです。

6.妥当な株価収益率:×

現在の株価は、目安となる過去3年間の平均収益の15倍を上回っています。

これは前述のとおり、コロナからの回復が遅れたため、平均収益が減少してしまったためです。

なお、PER15倍となる目標株価は1,962円です。

7.妥当な株価純資産倍率:〇

現在の株価は、目安となる純資産価値の1.5倍を下回っています。

東証はPBR1倍割れの企業に対応を求めており、その影響は無視できないでしょう。

なお、PBR1.5倍となる目標株価は3,604円です。



定性分析

定量分析では見ることができない、質的項目について分析していきます。

業界分析(業界地図などより)

1.鉄道(JR)
  • JR各社が移動需要の急回復への対応に追われている。
  • 観光・ビジネス利用好調。
  • これまでの特急の料金値上げや全席指定化に加え、各社はさらなる収益拡大策を打ち出している。
  • JR北海道は25年4月から運賃を値上げする方針。
  • JR西日本京阪神エリアの運賃体系を統一。
  • JR東日本は25年度末の運賃値上げを検討する。
  • 鉄道運賃は営業費に適切な利潤を加えた「総括原価」に基づいて決められる。
  • 国土交通省が24年3月にこの算定方法を27年ぶりに見直したことも追い風。
  • インフレ影響もこの算定方法に加えられるかも焦点。
2.鉄道(私鉄)
  • 鉄道の利用回復は一服。
  • 各社は利用がこれ以上戻らないことを前提に、ワンマン運転の導入や施設保守の合理化など経費削減に取り組む。
  • 一方、各社が成長のカギとして注力するのが不動産だ。
  • また、保有物件で賃料を得る従来のビジネスモデルだけでなく、取得した物件の価値を高めて売却する回転型ビジネスへの参入も新たな動きだ。
  • 大手私鉄は収益に占める非鉄道事業の割合がもともと高い。
  • 今後も一層その流れが強まりそうだ。



直近の決算分析

決算
  • 鉄道事業を営む当社の費用構造は、固定費の比率が高く、収益の伸びに応じて費用が増加すると言ったことがない一方で、逆に列車本数を削減して費用を大幅に削減することも困難という特徴がある。
  • 裏を返せば、収益が伸びればそのまま増益につながる収益構造ともいえる。
  • 運輸事業は、新幹線、在来線とも利用増加に伴い鉄道運輸収入が増加して増収増益。
  • 流通・サービス事業は、鉄道利用の増加に伴いエキナカ店舗の売上が増加したことなどにより増収増益。
  • 不動産・ホテル事業は、不動産販売やSC・インバウンド需要増加によるホテルの売上が増加したことなどにより増収増益。

同業他社分析

  • 既存の鉄道網は成長余地は少ないものの、運賃値上げでさらなる増益を期待できる。
  • 鉄道事業のウェイトが比較的大きいJR東日本は、この値上げを行えるよう許可申請、2026年3月改定実施を目指す。
  • 特に山手線といったドル箱路線は他社と比べて収益性が高く、JR東日本の強みといえよう。
  • 同業他社も、不動産業といった非鉄道事業の割合が比較的高く、成長余地も少なくないため将来性を左右するものとなっている。
  • JR東日本配当利回り1.73%と、同業他社のJR東海の1.03%より大きく、リニア問題を抱えていない分だけ株式還元に積極的といえる。



総括

JR東海と比べると、株価の低迷は抑えられている印象を受けます。

これは株主還元の姿勢の差はもちろん、料金改定が2026年に実現できる見通しが立っているのが大きいでしょう。

他方でPERといった割安指標ではJR東海に軍配が上がり、リニア問題をどうとらえるかで投資先が変わるのかもしれません。

なおJR東日本の株価は、定量分析の結果から言うと目標株価を上回っており、現在投資するのはおすすめしません。

インバウンド需要を取り込み増収増益を維持できるか、期末決算を待ってもよいかと思います。

おわりに

JR東海の株価が昨年来安値になってしまいました。

指標面では割安も、料金改定の予定がないことと、リニア問題が尾を引いていると思われます。

ホンダの時には成功したナンピン買いはしにくいのが現状です。

何か良いニュースが降ってくれればと思います。

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