はぐれ猿でも、投資がいいんだ。

ふりむけばやさしさに飢えた弱肉強食の世界で

証券分析序文②〜大相場はこうしてできた後編

大相場は歴史的に繰り返されていることを考えると、大相場の出来方を勉強することはきっと役に立つことでしょう。

前回から引き続き、1927〜33年の大相場で何が起こったのか見ていきましょう。

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4つの問題(前回)

  • こうした株式市場の大変動の背後に存在する論理や法則を理解するには、まず最初に最近起こった出来事の大きな特徴を取り上げ、それらの現実がわれわれに投げかけるまったく新しい問いに真正面から答えていくべきであろう。
  • それらの問いを明確にするため、これから検討するテーマを次の4つの問題に絞る。
  1. 投機
  2. A.債券と優先株の投資、B.普通株の投資
  3. 投資銀行と一般投資家
  4. 相場における人間の心理的要素

1927年以前はグラフが示す通り、一定の周期で好況不況を繰り返すだけのいわばレンジ相場ともいえる状況でした。

では1927〜33年の間に何が起こったのでしょうか。

グレアムは4つの問題に絞って分析を行おうとします。

前回は投機と債券投資について見ました。
gyatuby.hatenablog.com


今回は残りを見ていきましょう。



2B、普通株の投資の問題点

  • これについてわれわれは、「普通株の熱狂」は安全な投資原則が著しく歪められた典型的なケースであるというこれまでの主張をもう一度繰り返したい。

債券投資に比べて、大相場では普通株の投資には多くの問題点があります。

この世界恐慌を契機に、普通株全般が投機とみなされるようになりました。




投資適格としての普通株

  • 新しい神話が生まれるずっと以前には、投機と厳密に区別される投資対象としての普通株の選択の原則が存在していた。
  • 投機と厳密に区別される投資対象としての普通株の選択の原則が存在していた。
  • たしかに株式が投資適格となるには債券と同じようにその安全性と安定性を保証する厳しい基準をクリアしなければならなかった。
  • こうした厳しい基準を満たした普通株だけが投資適格の対象となり、債券にはない元本の値上がりの楽しみがあったのである。

とはいえ、厳しい基準を満たした普通株は、バリュー投資先として有効でしょう。

安全域を十分に確保していれば、インカムゲインだけでなく、ゆくゆくはキャピタルゲインも期待できます。


揺らぐ普通株の投資の信仰

  • われわれの目から見ると、1928年〜33年の普通株の熱狂とその後の暴落ぶりは債券のそれよりも壊滅的ではない。
  • 昔ながらの普通株の投資基準に従えば、相場の上昇期の早い時期に保有株式を売却して利益を確保し、それ以降は再びチャンスの時期が来るまで投資を控えるというのが常道である。
  • しかし、こうした投資原則の大きな欠陥は1928〜29年のような投機熱がまん延した時期をチャンスと読み誤ることである。
  • とはいっても、株価がこれまでの狭い範囲の動きから上放れるならば、慎重な分析に基づいて普通株分散投資する保守的な投資家は満足すべき利益を手にすることができるだろう。

1929年以降の普通株の暴落によって、普通株への信仰も揺らぎました。

とはいっても安全だと思っていた債券ほどではありません。

バリュー投資家は今まで通り下がったら買い、上がったら売る戦略で利益を得られることでしょう。


ただ、問題なのは1928年〜29年の普通株の暴騰をチャンスと思ってしまわないかということです。

ここでもバリュー投資の原則に即して、分散投資をしていれば満足すべき利益を得られたことでしょう。



3、投資銀行のモラルの崩壊

  • もうひとつの問題は、投資銀行の立場と投資銀行に対する一般投資家の態度である。
  • つい最近まで大手投資銀行は、顧客の利益を守りながら自分も利益を上げるというやや矛盾する難しい役割をなんとかこなしてきた。

3つ目の問題として、投資銀行のモラルの崩壊があります。

以前までは、投資銀行の名声と存続は販売商品の安全性にかかっていたため、投資家は安心して投資銀行を頼ることができました。



投資家は騙された

  • しかし1928〜29年にいたって、名声のある投資銀行が営々と築いてきたこうした安全性の実績は全面的に崩壊したのである。
  • 発行される証券の多くは劣悪なものであり、しかも一般投資家に対する情報の開示方法にはさまざまな問題があった。
  • こうした投資銀行のモラルの崩壊で一般投資家にはリスクの大きいいかがわしい証券が大量に販売された結果、それらの投資家が被った損失は巨額なものとなった。

しかし世界恐慌前になると、名声のある投資銀行が次々と劣悪な証券を発行し、また情報開示も不十分なものでした。

そして投資銀行に頼った投資家は、多大な損失を被ることになりました。



モラル崩壊の原因

  • こうした投資銀行のモラルの崩壊には2つの原因があった。
  • そのひとつはどんな証券でも売れるという安易さであり、
  • もうひとつは安全な投資対象となる証券が絶対的に不足していたことである。

投資銀行のモラルが崩壊したのは、普通株の投機熱がピークに達していたことで、どんな証券でも売れたことがまずあります。

また以前の投資銀行が手掛けていたような安全な投資対象となる証券が絶対的に不足していたため、投資銀行の利益のために劣悪な証券を発行せざるを得なかったことも一因だと述べています。



投資適格証券の不足の原因

  • 投資適格な証券の不足は、企業の間で普通株発行による資金調達がブームになったことがその大きな原因である。
  • その結果、強力な企業は債券の新規発行をストップしただけでなく、大量の既発債の償還にも乗り出した。
  • 従来の厳しい投資適格の基準を満たす新発債が急速に減少する一方で、有利な投資対象を求める資金は記録的な水準に達していたのである。

投資適格証券が不足した原因としては、普通株発行による資金調達がブームになったからです。

その結果、財務的に強力な企業は債券の新規発行をやめたばかりでなく、既発債の償却に充てました。

ただでさえ新規発行が少なかった投資適格を満たす強力な企業の債券がさらに少なくなり、迷えるマネーが記録的な水準に達したのです。




こうして投資銀行は営利を追求した

  • 現在の投資銀行のやり方は劣悪な債券を売るのか、それとも何も売らないのか(換言すれば、大きな利益を得るのか、それとも店じまいするのか)であり、このような状況の下では投資銀行に顧客の利益を守るというこれまでの高いモラルを期待するのは無理というものであろう。

こうして投資銀行は安全な証券を売って利益を得るのが難しくなった結果、自身の名誉を捨てて大儲けをする道を選んでしまいました。



失った信頼の回復

  • こうした状況から、投資銀行はその役割と販売方法の両面で投資家から失った信頼をどのように回復するのかといった難しい課題を抱えている。
  • 将来における一般投資家の保護は、彼ら自身が投資銀行の不正行為を見抜くというよりは、投資銀行が一度犯した間違いを繰り返すことなく、失った信頼を徐々に回復すべく顧客に対して節度ある態度を続けることによってしか実現しないだろう。

グレアムは投資銀行に対して信頼回復に努めるように述べていますが、執筆後も投資銀行のモラルは回復したかと言われれば難しいでしょう。

IPOした株式の大半が初値を下回って推移していることから、いまだに劣悪な証券が売られているといえます。

そのため、投資家は一定程度の知識を身につける必要があるでしょう。



求められる投資原則の確かな知識

  • 一般の債券投資家のみならず、彼らに助言を与える専門家にとっても、投資原則の確かな知識がこれまでにもまして求められる。

そして劣悪な証券を売らざるを得ない投資銀行に対して、批判的な立場を取れるように確かな知識が求められるでしょう。



情報開示の法整備が整う

  • もっとも、1933年証券法が制定されたことによって、そうした知識や専門家の助言の必要性も幾分は弱まったと言えるかもしれない。
  • 証券法では新規証券の発行に際して投資家に対する詳細な情報の提供を義務づけるとともに、虚偽の記述や情報不足で投資家が損失を被った場合には投資銀行や発行会社の取締役も責任を取るよう定めている。
  • こうした規定の目的は証券の安全性を保証するというよりは、投資家にありのままの事実を提供することにある。

今では当たり前ですが、情報開示に関する法整備が整ったことで、投資銀行による情報不開示によって被害を被ることは少なくなりました。

とはいえ、法律は証券の安全性について意見を言うのではなく、あくまでありのままの情報をそのまま伝えることに目的があります。

つまり情報の読み手にとっては、与えられた情報を正確に読み取り自分で投資すべきか判断する必要があります。



4、人間の心理的要素

  • 過去5年間の出来事から分かったことは、証券市場でも人間の純粋な心理的要素が大きく支配しているということである。
  • しかし1921〜33年の株式循環期では、その「絶頂期」は数ヶ月どころか数年にもわたって続き、しかもその相場を支えたのは一握りの投機家ではなく証券にかかわるすべての人々だった。
  • 「よい株」(または「優良株」)はいくら高値をつけても安全な投資対象であるという新しい神話が、「投資」と言う名の下にすべての人々をギャンブル的な熱狂へと駆り立てていった。

世界恐慌前の大相場は、人間の心理的要素も関わっています。

以前であれば短命に終わった「絶頂期」が、数年続いたことで一部の投機家ばかりでなくあらゆる人が普通株投資に参戦しました。

そこではいくら値段が高かろうが、ひたすら買うべきと人々は考えました。


無形資産を重視する姿勢

  • こうした心理的な現象は、のれん、経営陣の能力、予想収益力などといった無形資産の価値がこのところかなり重視されていることとけっして無関係ではない。
  • そうした無形資産の価値は紛れもなく現実に存在しているが、数字では表せない性質のものである。
  • それらの測定基準はかなり恣意的であり、人間の心理状態で大きく変化する。
  • そのため、投資家の多くはこうした無形資産の投機的な評価額で現実の株価を測り、元本の価値はインカムゲインによって決まるという昔からの厳しい基準を適用することの大切さを忘れてしまったのである。

いくら高値がついても買うという姿勢の背景には、無形資産を過大評価していることと関連があると分析しています。

無形資産は数字では表せない性質のため、バランスシートには計上されません。

昔からの基準ではバランスシートに基づいた投資を行いますが、この無形資産の価値をどのように評価するかは投資家自身の姿勢によります。


例えば、株価が高騰している任天堂コナミといったゲーム会社では、IPはバランスシートには計上されません。

しかし、明らかにIPは収益力の源泉であるのは事実でしょう。

こうしたバランスシートに計上されない無形資産を、市場は高く評価しているわけです。

これを投機的な動きと見るかは判断に難しいところですが、昔ながらのバランスシートに基づいた投資ではありません。



連動しない証券の価値と価格

  • このほか、ウォール街の最近の経験からわれわれが学んだもののなかには、以前よりも注目しなければならない人間の性質におけるいくつかの要素がある。
  • それはある証券の価格は、その本来的な価値に対する直接的な反応やその価格と価値の関係をそのまま反映したものではなく、売り手と買い手のさまざまな感情や心理を映したものだということである。

証券の価格は、ファンダメンタル(バランスシートや損益計算書に基づく要素)ではなく需給といったテクニカル要因に左右されており、これは現在でも当てはまります。

現にデイトレードの本では、ファンダメンタルよりテクニカルを重視したほうが儲かると述べているものもあります。




市場のムード

  • さらに、投資家のメンタルな態度が市場の価格に大きな影響を及ぼすばかりでなく、市場からも強い影響を受けていることをよく知らなければならない。

上がったら買い、下がったら売るテクニカル手法が主流になると、投資家の強気な姿勢が価格に大きな影響を及ぼします。

そればかりか市場のこのような強気ムードが人々をさらに投機に走らせることにもなります。




市場流動性と本源的価値

  • 投資において重要なことは、満足すべき市場価格がずっと維持されていることである。
  • また投資対象となる証券を選ぶときには、たとえインカムゲインだけを目的とする場合でも、そうした市場価格の条件に加えてその証券の「本源的価値」(Intrinsic Value)についても十分に考慮する必要がある。

投資で重要なことのひとつには、いつでも満足すべき価格で売買できることです。

急に入り用になった時などに、満足できる価格で現金化できるのは大事なことですよね。

また債券といったインカムゲインのみを目的とする場合にも、その証券の本源的価値、つまりバリュー投資家が重視する価値に照らして価格を検討する必要があります。



投機は投資の代替とはならない

  • 安全な投資法が大きくぐらつけば、「うまい投機はへたな投資より明らかに優れている」という論理に従って、投資家の目が投機のほうに向くのは当然であろう。
  • しかしそうはいっても、やはり投機というのは成功するのが極めて難しいという現実には変わりはない。
  • 人間の心理というものは相場が最高値にあるときにもっとも強気になり、どん底にあるときにもっとも弱気になるからである。
  • このようにすべての物事と同様に、成功し続けるのは一握りの並外れた投機家だけであり、他の多くの人々が損をしているときに自分だけが利益を手にするというのはどう見ても現実的ではない。

世界恐慌で株式ばかりか、債券まで下落する事態となったため、安全な投資方法などないと思うかもしれません。

しかし投機で勝ち続けるのは極めて難しいです。


成長株投資でもそうですが、投機で成功するには技術と経験はもちろん、運も求められるため勝ち続けるのは簡単ではありません。

そもそも人間心理的に相場が好調なときに強気になり、低調なときに弱気になりがちです。

投機は一種のババ抜きでもあるので、人々が強気のうちに人間心理を逆手にとってさっと降りることができるかが鍵になります。

こうした理由から、投機に関する訓練をどれほど積んだとしても、一般投資家にはあまり利益をもたらさないどころか、悲惨な失敗に終わってしまうかもしれないのです。




投資家が進むべき道

  • このように投資が満足するような成果を上げず、また投機も危険だとすれば、投資家としては何を頼りにすればよいのだろうか。
  • おそらく債券や株式を問わず、重要な事実を慎重に分析することで適切に正当化される水準よりもかなり安く売られている割安な証券、すなわち過小評価されている証券を探すことに目が向くだろう。

債券投資も安全でなく、投機も成功が難しいとすれば、投資家の目指すべき道は何でしょうか。

グレアムはいわゆる「割安証券」を探すことを検討するよう述べています。


投機の誘惑から身を守る

  • たしかにこの分野には多くのチャンスがあるが、割安な証券探しにもそれなりの落とし穴は付きものであり、とりわけ近年では多くの投資家がその落とし穴に泣かされてきた。
  • しかし、平時の状況下では平均的に満足すべき成果が得られるばかりか、とりわけ重要なことはこうしたやり方が基本的には慎重な投資に向けて投機の誘惑から投資家を守る貴重な防衛策になるということである。

世界恐慌では、「割安株」も含めて暴落したため、涙を飲んだ投資家も多いでしょう。

しかし平時の状況下では、投機の誘惑から身を守る上でバリュー株投資は優れているということです。




まとめ

  1. 大相場は①投機、②債券神話の崩壊、③投資銀行のモラル崩壊、④人間心理によって引き起こされた。
  2. 投資銀行からの情報を鵜呑みにするのではなく、自分で批判的に判断できるようにならなければならない。
  3. 証券市場でも人間の純粋な心理的要素が大きく支配している。
  4. 平時の状況下では、投機の誘惑から身を守る上でバリュー株投資は優れている。

おわりに

日本では利上げされず、アメリカでは利下げされずで終わりました。

主にアメリカの関税政策の影響を見極めたい思惑があるようです。

一般的に株価に対して利下げはプラスに、利上げはマイナスに働きますが、まとめて動いたらどうなるのでしょうか。

願わくば、市場に悪影響が出ないように動いてほしいところです。

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