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証券分析第5章〜証券の分類

証券は大きく「株式」と「債券」に分けられます。

しかし、「株式は危険」「債券は安全」といった単純なイメージで判断するのは正しくありません。

ここでは、もっと実態に合った証券の分類方法について考えていきます。

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はじめに

  • 証券は習慣的に債券と株式に大別され、さらに株式は優先株普通株に分けられている。

債券の保有者は、利息や元本を優先的に請求できる権利を持っています。

一方、株式の保有者は大きなリスクを負う代わりに、会社のオーナーとして利益を得られます。


このように、法律上の立場と投資としての性質の違いが、債券と株式を分ける大きなポイントとされています。



伝統的分類には反対

1、優先株普通株を一括した分類

  • 伝統的にこうした分類が一般に行われてきたが、われわれはそうした分類の仕方に強く反対する。
  • 優先株普通株と同じカテゴリーに含めていることについて、少なくとも投資という性質に関するかぎり、優先株は明らかに債券のカテゴリーに分類されるべきである。
  • というのは、標準的な優先株は確定利息と元本の安全性を目的に購入されているからである。

優先株とは、普通株よりも配当や会社清算時の財産分配を優先的に受けられる株式のことです。
優先株式|証券用語解説集|野村證券

その保有者は値上がり益(キャピタルゲイン)よりも、配当などの安定収入(インカムゲイン)を重視するため、性質的には株式より債券に近いものといえます。

ただし、日本の市場で流通している優先株はごく少数です。
銘柄一覧(優先株等) | 日本取引所グループ



2、安全性と同一視される債券

  • 債券と株式を区別する大きな特徴は、「債券形態」が安全性と同一視されていることであろう。
  • 投資家は「債券」という名称に損失に対して何か特別な保証があるかのように思っている。
  • こうした考えは基本的に間違っており、債券が大きな損失を招くことも珍しくない。

前回にも触れましたが、「債券=安全」と考えるのは危険です。
gyatuby.hatenablog.com


債券にも信頼性の高いものと、そうでないものがあります。



安全性はその発行企業の財務状態による
  • (その証券の)安全性とは債務者である当該発行会社の元利返済能力そのものであり、安全性の度合いはその能力によって100%決まる。
  • この基準に従えば、資産や収益力のない企業の債券は、そうした企業の株式と同じくまったく価値がない。

証券が安全かどうかは、企業が真面目に返済義務を果たす姿勢や、万一のときの法的救済によって保証されるわけではありません。

証券の安全性は、最終的にはその発行企業の業績や財務状況によって完全に左右されるのです。



3、名称だけではその証券の特徴が分からない

  • さまざまな証券を債券と株式に大別する分類法に(さらには債券、優先株普通株の3種に分けるやり方にも)反対する三番目の理由は、その名称がその証券の正確な特徴を表していないことである。
  • その背景には従来の標準的な内容とは異なる変種の証券が続々と登場し、また標準的な証券の特徴を変更したり、またはハイブリッド的な証券も多く見られるようになったことがある。
  • 標準的な特徴を持つ債券や優先株は、「普通社債」または「普通優先株」と呼ばれる。

ひと口に債券といっても、現在はさまざまな種類があります。

同じように、優先株も「どの権利を普通株より優先するか」によって種類が分かれます。



変種の証券
  • 今日の証券市場では、このような標準的な特徴からかけ離れたさまざまな証券が数多く発行されている。
  • その最も代表的なものは収益社債転換社債・転換優先株ワラント付き社債優先株、参加的優先株、優先権付き普通株、無議決権普通株━━などである。
  • 最近発行されている変種の証券は従来の標準的な債券や株式の特徴とは大きくかけ離れているためまったく異なる名称をつけたほうがよいくらいである。

引用で挙げられている証券だけでも、従来の普通株、普通優先株普通社債とは性質が異なります。


最近話題になった悪名高い証券としては、MSワラント(行使価額修正条項付新株予約権)が挙げられます。

この証券は行使価格が市場価格に連動して変動し、通常は市場価格より割安(たとえば終値の90%)に設定されているため、受け取った人は行使すればほぼ必ず利益が出るようになっています。



新しい分類法の提案

新しい分類法
  • このように、最近ではユニークで複雑な特徴を持つ証券が続々と発行されているため、その名称に従って証券を分類するという従来の方法は通用しなくなってしまった。
  • 従来の分類法もそれなりに便利でメリットもあるが、より正確で柔軟な分類法に代えたほうがよいだろう。
  • われわれの考えによると、その目的にかなう最も有効な基準はその証券の購入後の「一般的な特徴」、つまりその証券の購入者や保有者にとってそのリスクとリターンがどのようなものなのかをもとにすべきであろう。

確定利付き証券は投資適格の債券・優先株、変動利付き上位証券は投機的な債券・優先株と考えるとわかりやすいでしょう。

グレアムは上表のように、証券をその証券の購入者や保有者にとってそのリスクとリターンがどのようなものなのかをもとに新しく分類することを勧めています。



各証券の特徴

確定利付き証券の特徴

  • 最初のクラスの証券はその名称がどのようなものであろうとも、将来的にもその元本価値の変動は極めて小さいというのがその大きな特徴である。
  • この証券に対する保有者の主な関心は元本の安全性にあり、投資の唯一の目的は確実なインカムゲインを得ることである。

債券でも優先株でも、元本が安全だと考えられる証券は「確定利付き証券」に分類されます。

この証券の保有者は、元本の安全性とそこから得られる配当や利息などの安定した収入(インカムゲイン)にしか関心を持ちません。



変動利付き上位証券の特徴

  • 二番目のクラスの証券は、将来的に元本価値の変動が見込まれるものである。
  • Aタイプの証券の投資家は安全なインカムゲインを望みながらも、転換権やその他の優先権を行使してキャピタルゲインを得ることも可能である。
  • Bタイプの証券では損失のリスクはあるが、そうしたリスクはそれ以上のキャピタルゲインのチャンスで補うことができる。

本来は債券や優先株といった「上位証券」であっても、元本の価値が変動する可能性があるものは「変動利付き上位証券」に分類されます。

その中で、転換社債はAタイプ、信用度の低い債券や優先株はBタイプに区分されます。



普通株との違い
  • クラスIIーBに含まれる証券は、①一部の下位証券より実質的な優先権を持つために、ある程度の安全性の保証がある。②利益のチャンスはあるが、理論的にまたは運がよければ普通株の投資で得られる大きな利益のチャンスに比べるとその利益の程度は限られる━━という点で普通株の形態(クラスⅢ)とは異なる。

クラスⅡ-Bの証券については後の章で詳しく説明されますが、ここでは「優先権はあるものの、値上がり益(キャピタルゲイン)は普通株ほど期待できない」という特徴を押さえておけば十分です。



確定利付き証券の代表的な証券

  • 確定利付き証券には、すべての普通社債と通常の価格で発行される優良優先株が含まれる。
  • そのほか、このクラスの証券に含まれるのは次のような証券である。
  1. 優良な転換社債(しかし、転換権それ自体は投資の主な対象とはならない。類似の特徴を持つ参加的またはワラント付き上位証券についても同じ)
  2. 投資適格の保証付き普通株
  3. 優良優先株の権利を持つクラスA株式や優先権付き普通株

こちらも後の章で詳しく触れるため、今はこんなものがあるんだと把握しておけば良いでしょう。



変動利付き上位証券の代表的な証券

  • かなり低い価格で売買されている投資適格の債券などは、将来の値上がり益が期待できるという点でが二番目のクラスに分類される。
  • この場合、価格そのものは唯一の決定条件ではない。
  • このように、特にクラスⅠとクラスⅡの証券の境界線はかなりあいまいであるため、その証券をどちらのクラスに含めるのかは証券アナリストや投資家の個人的な判断による。

クラスⅠとⅡの分類があいまいになる例があります。


たとえば、額面100ドルの長期債が60ドルで取引されていても、利率が3%なら一般的に「確定利付き証券」とみなされます。

これは価格が安くても短期での値動きはあまり期待できないからです。


一方、額面100ドルの短期債が80ドルで売られている場合は、利率に関係なく「変動利付き証券」に分類されます。

なぜなら、短期のうちに繰上償還されて割増で返済される可能性や、逆にデフォルトや急落といったリスクがあるからです。



普通株の形態

  • 普通株の特徴を持つ証券は、それが「普通株」「優先株」またはたとえ「債券」の名称がつけられていようともすべてクラスⅢに分類される。
  • これらと好対照をなすのは、上位証券という名称で特定の証券が極めて安い価格で売られたために、その会社の下位証券の実質的な持ち分がなくなったケースである。
  • そのような場合には、低位の債券や優先株は実質的に普通株のランクに格下げされてしまう。

キャピタルゲイン(値上がり益)を追求できる性質を持つ限り、その証券は普通株ではなくても「普通株と同じ性質を持つ証券」として扱われます。

例えば、約200ドルで取引されている転換社債は価格が高すぎるため、さらに上がるか大きく下がるかのどちらかになりやすく、実際には普通株に投資しているのと同じことになります。


また、上位証券が極端に安い価格で売られ、普通株の価値が実質的にゼロになった場合も「クラスⅢ」に分類されます。

例えば優先株が10ドル程度で取引されているなら、普通株には価値がないとみなされ、その優先株は実質的に普通株と同じ性質を持つことになります。

この場合、その証券は上位証券としての条件を満たさず、しかも現在の価格水準から見れば値上がり益の可能性が非常に大きいため、どう見てもハイリターンを狙う「普通株」としての特徴を持っているのです。



要約

  • 以上の検討から、われわれが意図している証券分類の主な内容と目的がかなりはっきりとしたと思われる。
  • 繰り返すが、証券分類の基準はその名称にあるのではなく、その証券特有の内容と投資家の見方という実際上の基準に基づくべきである。
  • つまり重要なことはその証券の保有者が法律的に要求できるものではなく、将来的に得ることができるもの、またはその証券を購入した時点で得られる可能性のあるものを基準にすべきだということである。

要するに、証券を分類するときは名前にとらわれず、「将来どれだけのリスクとリターンがあるか」を基準にすべきだ、ということです。



まとめ

  1. 証券を分類するときは名前にとらわれず、「将来どれだけのリスクとリターンがあるか」を基準にすべきだ。
  2. 債券でも優先株でも、元本が安全だと考えられる証券は「確定利付き証券」に分類される。
  3. 本来は債券や優先株といった「上位証券」であっても、元本の価値が変動する可能性があるものは「変動利付き上位証券」に分類される。
  4. キャピタルゲイン(値上がり益)を追求できる性質を持つ限り、その証券は普通株ではなくても「普通株と同じ性質を持つ証券」として扱われる。

おわりに

高市トレードの影響で、日経平均株価は大きく上昇しました。

その中心となったのはソフトバンクグループなどのハイテク株であり、バリュー株はあまり上がらず伸び悩む結果となりました。

前回の「いくらで買っても安全」という投機の話を思い出させるような展開で、もし月曜日に買っていれば大きな利益を得られたでしょう。

こうした「逃した悔しさ」こそが、人を投機へと駆り立てるのかもしれません。

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