今回は、巨大企業と成長企業の対比から、その本質を見ていきます。
5組目:フレーバーズvsハーベスター
- ダウ平均採用の30巨頭の一社であるインターナショナル・ハーベスター社はあまりにも有名だが、ニューヨーク証券取引所名簿で隣り合わせのインターナショナル・フレーバーズ&フレグランスの名前を聞いたことのある読者が、何人いるだろう?
- 語るも不思議な話だが、このフレーバーズ社は1969年末で株価総額が7億4700万ドルと、ハーベスター社の7億1000万ドルより多いのである。
- ハーベスター社がフレーバーズ社の17倍もの株式資本、27倍もの年間売上があることを考えるとさらに驚く。
- ハーベスター社の純利益は1969年のフレーバー社の売上より多かったのである。
ダウ平均採用銘柄であるインターナショナル・ハーベスターは誰もが知る大企業です。
一方で、ニューヨーク証券取引所で隣り合わせに掲載されていたインターナショナル・フレーバーズ&フレグランスの名を知る人は当時それほど多くありませんでした。
しかし興味深いことに、1969年末時点ではフレーバーズ社の時価総額が約7.47億ドルと、ハーベスター社(約7.1億ドル)を上回っていました。
これは、ハーベスター社がフレーバーズ社の17倍の資本規模、27倍の売上高を持っていたことを考えると極めて異例です。
規模では圧倒しているにもかかわらず、市場評価は逆転していたのです。
収益力と成長がすべてを決める
- なぜこれほどまでの格差が生じたのだろう?
- 答えは二つのマジックワード、収益力と成長にある。
- フレーバーズ社は双方抜きん出ており、ハーベスター社はあらゆる面で遅れをとったのだ。
- 表18−5を見れば一目瞭然で、フレーバーズの14.3%という驚異的な売上利益率に対し、ハーベスター社は2.6%にすぎない。
- 同様に、フレーバーズ社は株主資本に対して19.7%の収益があるのに対し、ハーベスター社は5.5%にとどまっている。
- さらにフレーバーズ社の純利益は5年間でほぼ倍増しているが、ハーベスター社は実質的に横ばいである。1959年〜69年の間、この傾向は変わっていない。
この差を生んだ要因はシンプルです。
収益力と成長性です。
フレーバーズ社は以下の点で際立っていました。
- 売上高純利益率:14.3%(ハーベスターは2.6%)
- ROE:19.7%(ハーベスターは5.5%)
- 利益成長:5年間でほぼ倍増
一方のハーベスター社は、利益がほぼ横ばいで成長性に乏しい状態でした。
つまり、
- フレーバーズ=高収益・高成長
- ハーベスター=低収益・低成長
という明確な構図です。
株価に反映された評価の差
- こうした業績の違いによって典型的な市場評価の格差が生じた。
- 1969年、フレーバーズ社は最終報告利益の55倍で売られたが、ハーベスター社は10.7倍にすぎなかった。
- またフレーバーズ社は簿価の10.4倍の評価だったが、ハーベスター社は純資産額を41%も下回る価格で売られたのである。
こうした業績差は、そのまま株価評価に反映されます。
- フレーバーズ社:PER55倍、PBR10.4倍
- ハーベスター社:PER10.7倍、PBRは1倍未満
フレーバーズ社は典型的な成長株として高く評価され、ハーベスター社は割安株として放置されていました。
投資判断としての落とし穴
- 最初に言っておくべきなのは、フレーバーズ社の市場での成功は、中心事業の発展に専念することを心がけ、近年ウォール街で流行の企業の策略、買収計画、資本過大構造などに巻き込まれなかったためである。極めて利益率の高い業務に専念した、実はそれだけのことである。
- ハーベスター社の歴史を見るとこれと全く別の疑問がわくが、これらの「売り上げの多さ」とは関係がない。
- なぜこのように、長い繁栄にもかかわらず、多くの大企業の収益が落ちたのだろう?
- 企業が株主の投資に十分応えられる利益を上げられないなら、25億ドル以上に及ぶビジネスの有利性はどこにあるのだろう?
- 経営陣の問題だけではなく、株主一般にも問題があること、そしてそれに対処できる最高の頭脳と努力が必要であることに気づくべきだと言いたい。
- 普通株選択の観点からすれば、どちらの株式もわれわれの言う健全で、然るべき魅力を持ち、適正な価格という投資基準に満たない。
- フレーバーズ社は典型的な華々しい成功企業だが、過大評価が著しい。
- ハーベスター社の場合は、割安であっても真に魅力的というにはあまりにも月並みである。
- それなりの価格帯で、もっと良い価格の高いものが間違いなくあった。
ここで重要なのは、どちらも「買い」とは言えない点です。
フレーバーズ社は確かに優れた企業ですが、
すでに成長期待を織り込んだ過大評価状態にあります。
一方でハーベスター社は割安ですが、
事業の質や成長性に乏しく、投資妙味に欠ける企業です。
つまり、
- 成長株 → 良い会社でも高すぎればリターンは限定的
- 割安株 → 安くても質が低ければ上がらない
という現実がここにあります。
後日談(1970年の下落局面)
- ハーベスター株は1969年末に低価格だったため、1970年の暴落時にそれ以上大きく下落せず、10%下げただけで済んだ。
- フレーバーズ株の方が大きく反応し、30%も下げて45ドルとなった。
- その後の景気回復で両社とも1969年の終値を大きく上回る水準まで回復したが、ハーベスター社はすぐに25ドルまで下げてしまった。
1970年の市場下落では、この違いが明確に表れました。
- フレーバーズ社:30%下落
- ハーベスター社:10%の下落にとどまる
割安株は下落耐性がある一方で、その後の回復局面では差が出ます。
ハーベスター社は回復後も再び下落し、企業の質の低さが露呈しました。
まとめ
- 企業規模は投資価値を決めない
- 評価を決めるのは「収益力」と「成長性」
- 割安=買いではない
- 優良企業=投資対象とも限らない(価格次第)
おわりに
市場では、業績が低迷している企業でも「再建期待」によって株価が上昇する場面が見られます。
特に大企業はその期待が集まりやすい傾向があります。
しかし重要なのは、期待ではなく実態です。
収益力と成長性、そして価格のバランスを見極めることが、投資判断の核心になります。