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賢明なる投資家第18章④〜八組の企業比較4組目

上場企業といっても、その歩んできた道は一様ではありません。

長年にわたり競争を勝ち抜いてきた企業と、短期間で急成長を遂げた企業では、評価のされ方も大きく異なります。

今回は、急成長企業と伝統的な優良企業の違いを、具体例を通じて比較していきましょう。

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4組目:H&Rブロックvsブルーベル

  • この二社はニューヨーク証券取引所では比較的新参者であるという共通点があり、全く別のジャンルのサクセスストーリーを代表している。

この2社は、いずれもニューヨーク証券取引所では比較的新しい存在でありながら、対照的な成功ストーリーを持っています。



ブルーベル(作業着、制服メーカー)

  • ブルーベル社は非常に競争の激しい業界において茨の道を歩み続けた後、ついに最大手にまで上り詰めた。
  • 収益は景気によって多少変動したが、1965年以降の伸びは目覚ましい。
  • 創業は1916年だが、1923年以降、無配なしである。
  • 1969年末の時点では、株式市場は同社に注目しておらず、株価収益率はわずか11倍で、S&P指数の17倍を下回っていた。

ブルーベルは、激しい競争環境の中で長年にわたり苦戦を強いられながらも、最終的には業界最大手にまで成長した企業です。

  • 創業:1916年
  • 1923年以降、無配なし(継続的な株主還元)
  • 収益は景気の影響を受けつつも、1965年以降は大きく成長

しかし1969年末時点では、市場の評価は決して高くなく、
株価収益率(PER)は約11倍と、市場平均(S&Pの17倍)を下回っていました。

👉 堅実な実績があるにもかかわらず、割安に放置されていた典型例です。



H&Rブロック(所得税サービス)

  • これに対してH&Rブロック社は彗星の如く華々しく登場した。
  • 上場は1961年だが、初年度は総収入61万ドルで、8万3000ドルの利益を上げている。
  • ところが8年後、総収入は5360万ドル、純利益は630万ドルと急増した。
  • このころ、株式市場はこの華々しい企業に対して忘我状態であり、1969年の終値は55ドルは、それに先立つ12ヶ月の財務報告上の一株収益の100倍にも及んだ。
  • 3億ドルの株式時価総額は、株価の後ろ盾となる有形資産のほぼ30倍だった。

一方のH&Rブロックは、まさに急成長企業の典型です。

  • 上場:1961年
  • 初年度:売上61万ドル、利益8.3万ドル
  • 8年後:売上5360万ドル、利益630万ドル

短期間で驚異的な成長を遂げ、市場の注目を一身に集めました。


その結果、1969年時点では:

  • PER:約100倍
  • PBR:約30倍

👉 将来の成長期待が極限まで織り込まれた状態となっていました。



両社の評価ギャップ

  • 表18−4はブロック社とブルーベル社の評価の大きな違いを金額と比率で示したものである。
  • ブロック社の資本一株当たり利益はブルーベル社の2倍で、実質的にはゼロから始まった過去5年間の収益の伸び率はさらに高い。
  • しかし、ブルーベル社は時価総額で見るとブロック社の3分の1以下の規模であった一方で、ブルーベル社は事業としては4倍大きく、収益にしても2.5倍も高く、実質投資も5.5倍大きく、配当利回りも9倍あったのである。

表の比較から見える本質は非常に重要です。

  • ブロック社:成長率・効率性で優位
  • ブルーベル:規模・利益・配当で優位

具体的には:

  • 売上:ブルーベルは約4倍
  • 利益:2.5倍
  • 投資規模:5.5倍
  • 配当利回り:9倍

それにもかかわらず、時価総額ではブロック社の方が大きく評価されていました。

👉 市場は「現在の実績」よりも「将来の成長」に強く賭けていたわけです。



アナリストのジレンマ

  • ベテランのアナリストはブロック社の大きな勢いを認め、将来の成長について良い予測をしたことだろう。
  • 所得税サービス分野における激しい競争の危険について多少の不安はあったかもしれないが、ブロック社が実現した高投資収益に惑わされたのである。
  • 読者は先のAAA社のこの分野への事業参入を試みながら、すぐに失敗した例を思い出すだろう。
  • しかし非常に競争の激しい分野において、エイボン・プロダクツ社のように優れた企業が継続的に成功を収めていることが心にあったため、彼はブロック社の成長線が急激に横ばいになることを予測したくなかったのである。
  • このアナリストの最大の関心事は、単にこの会社に対する3億ドルという評価はまだ足りないのではないか、そしておそらくこの優れた商売から期待し得るものを過大評価していないのではないかということだったのだ。
  • 一方、極めて控えめな値を付けていたブルーベル社を優良企業として薦めることは躊躇したのである。

この状況でアナリストが直面する問題はシンプルですが深刻です。

  • 成長企業の失速を予測するのは心理的に難しい
  • 地味な優良企業を推奨するのは説明が難しい

結果として、

👉 割高でも勢いのある企業に評価が集中する傾向が生まれます。



その後の展開(1971年まで)

  • 1970年のにわか恐慌によってブルーベル社の株価は4分の1、ブロック社は3分の1に下がっている。
  • その後、一般市場の大幅な回復に合わせて、1971年2月にはブロック社の株価は75ドルに上がり、ブルーベル株は109ドルへと大きな回復を見せている。
  • 1969年末時点で、明らかにブロック株よりもブルーベル株の方が買いだった。
  • ところがブロック株がこの明らかに行き過ぎた株価からさらに35%ほど続伸したという事実は、どれほど株価が高く見えても、アナリストや投資家は優良企業を短期で売るので━━言葉であれ、行為であれ━━十分気をつけなければいけないことを示している。

市場の動きは、必ずしも合理的ではありません。
1970年の下落

  • ブルーベル:株価1/4
  • ブロック:株価1/3

その後の回復(1971年)

  • ブロック:75ドルまで上昇
  • ブルーベル:109ドルまで回復


興味深い点は、

👉 割高だったブロック社がさらに上昇したことです。

これは、
• 成長株の「天井」は極めて読みにくい
• 割高=すぐに下落、とは限らない

という事実を示しています。



投資家への教訓

この事例から得られる示唆は明確です。

  • 優良企業でも短期的には大きく売られる
  • 成長株の過熱は想像以上に続くことがある
  • バリュエーションだけで売買タイミングを決めるのは危険

👉 「正しい企業」と「正しいタイミング」は別問題です。

まとめ

  1. 新興成長企業と伝統企業では評価軸が大きく異なる
  2. 優良企業でも短期的な価格変動は避けられない
  3. 成長株の過熱は長期化することがあるため、安易な空売りは危険

おわりに

IPO銘柄や急成長企業は魅力的に映りますが、

  • 情報の不足
  • 高いバリュエーション
  • ロックアップなどの需給要因

といった不確実性も多く含んでいます。


実際、有名投資家でもIPOで安定して勝つことは難しいとされています。

だからこそ、

👉 限られた情報の中でも冷静に分析し、期待と現実を切り分ける姿勢が重要です。

次回
gyatuby.hatenablog.com

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