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賢明なる投資家第15章⑦〜確実に儲かる裁定取引

ほぼ確実に儲かるシチュエーションが、たまに出てくることがあります。

以前にその状況について説明しましたので、今回は実際にグレアムが行った取引を見ていきましょう。

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特別な状況ー「骨の折れる仕事」

  • 理論上は積極的投資家の売買計画に組み込み得るものなので、ここで簡単に触れておこう。
  • 本書中でこれについては既に解説が済んでいるので、ここではその類型に当てはまる実例をいくつか挙げ、さらには進取の気性に富みかつ用心深い投資家にとって、それがどんなメリットをもたらす可能性があるかについて、考察を深めていく。
  • さまざまな種類のものがあるが、1971年初めにおいて一般的なのは、次の三つのパターンであろう。

特別な状況が生まれ、ほぼ確実に利益が得られる場合があります。

今回はグレアムが三つの事例を紹介していますので、一つずつ見ていきましょう。



1、株式交換による敵対的買収

  • ボーデンによるカイザー・ロスの買収。
  • その内容は、自社の1と3分の1株をカイザー・ロスの1株と交換するというものであった。
  • その翌日には活発に売買が行われ、ボーデンとカイザー・ロスの終値はそれぞれ26ドル、28ドルとなった。
  • もしもある「投機筋」がこれらの株価でカイザー・ロスを300株買ってボーデンを400株売っていれば、またその後告知条件通りに取引が成就すれば、手数料その他は別にして、彼は約24%の利益を得られたであろう。

敵対的買収のケースです。

株式交換による裁定取引を狙える場合には、素早く動くことで利益を得られるでしょう。



コメント

  • この章の執筆当時、同社(カイザー・ロス)の経営陣はボーデンの計画を既に却下した後であった。
  • もしも株式交換が迅速に「行われていな」ければ、手数料までも含めた損失の総計は、カイザー・ロス株の購入コストの12%程度になったはずである。

しかし、相手方がその買収を拒否した場合など、買収自体がうまくいかない可能性があるのがリスクと言えるでしょう。

カイザー・ロスのケースでは、実際にボーデンの計画を却下しました。

この場合、株式交換の対象銘柄は当たり前ですが下落することが多いです。



2、現金による敵対的買収

  • ナショナル・ビスケット社は1970年11月、オーロラ・プラスティックス社の経営権を得るために11ドル(現金)での株の買い取りを表明した。
  • 当時の株価は8.5ドルで、その月の終値は9ドルとなり、その後、年末までほとんど値動きはなかった。
  • 計算上の当初の総利益は約25%であるが、買取が実行されないリスクと時間的要因によるリスクを負うことになる。

こちらも敵対的買収のケースですが、原資が株式ではなくキャッシュです。

株価9ドルに対して、11ドルで買い取る計画なので、差額の2ドルが利益となります。

当然ながら買収が実行されない可能性があるので、これがリスクとなりますが、うまくいけば総利益は約25%得ることができます。



コメント

  • 1970年の同社の業績が芳しくなかったために経営権買収条件は再調整がなされ、買い取り額は10.5ドルに切り下げられた。
  • 支払いが行われたのは5月末である。
  • これによる年間利益率は約25%であった。

オーロラ社の業績が芳しくなかったために、その後買収価格は切り下げられましたが買収は無事に実行されました。

利益も約25%得ることができ、投資家は満足いく結果を得ました。



3、企業解散

  • 既に業務を停止していたユニバーサル・マリオン社は、株主に対して企業解散の承認を求めた。
  • 会計担当者は、同社の普通株一株当たりの帳簿価格は28.5ドルであり、その大部分は流動資産の形であると説明した。
  • 同株式の1970年の終値は21.5ドルであり、つまり企業の清算によってその帳簿価格が現金化されれば、30%以上の粗利益を得る可能性があった。

企業解散による分配権をめぐるケースです。

一株当たり28.5ドルであり、その大部分が流動資産なので額面通りに受け取って良いでしょう。

株価は21.5ドルであり、企業の清算によってその簿価が現金化されれば、30%以上の利益を得られる可能性がありました。



コメント

  • 同社は、実際の株価よりも14.5ドル安い一株当たり7ドルとして、初回の現金分配を即実施した。
  • しかし株価はその後13ドルにまで下落し、清算による最終的な結果に対して疑念を生じさせることとなった。

このケースではあまりうまくいかなかったようです。

最初の現金分配から、株価はさらに下落して、最終的な分配に疑念を抱かせる結果となりました。



経験と判断力を要する

  • この分野で売買する際のコツは、経験による裏付けを基に、最も成功する見込みが高く、かつ合併が失敗しても最小限の損失で済みそうな案件を選び出す判断力を身に付けることに他ならない。
  • これら三つの事例が、1971年における「骨の折れる仕事、つまり裁定取引」のための極めて代表的なパターンだとすれば、手当たり次第に首を突っ込むべきではないというのは明白だ。
  • この分野は今やほとんどプロのための領域となっており、経験と判断力が必須である。

利益がほぼ確実に得られる裁定取引では、素早く検証して行動しないと旨みがなくなるため、経験や判断力を求められます。

そのため誰にでも勧められるものではなく、今ではほぼプロ向けの領域となっています。




まとめ

  1. この分野で売買する際のコツは、経験による裏付けを基に、最も成功する見込みが高く、かつ合併が失敗しても最小限の損失で済みそうな案件を選び出す判断力を身に付けることに他ならない。
  2. そのため、誰にでも勧められるものではなく、今ではほぼプロ向けの領域となってる。

おわりに

中間配当の便りが続々と届いてきました。

長期投資の場合は、報われるまで配当で利益が得られるのが良いところです。

投資余力が回復して、次なる投資先を探している方もいらっしゃるでしょう。

日本はレンジ相場が続いています。

米国と同様にアゲアゲの相場を期待したいとともに、今のうちに良い投資先があれば仕込んでいきたいです。

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