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賢明なる投資家第13章②〜4社の証券分析

前回の続きになりますが、4社の証券分析を進めていきます。
gyatuby.hatenablog.com

今回は投資にふさわしいかどうかみていきましょう。

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四社における全般的な所見

  • エマーソン社の時価総額は、他三社の合計を凌駕する。
  • 同社は後に述べる「のれんの巨人」のひとつに挙げられる。
  • 高い評価には高いリスクを伴うのである。
  • 最高収益時のほぼ40倍という株価収益率が妥当であるならば、エメリー社は将来の成長という点では四社の中で最も有望である。
  • もちろん、過去の成長も極めて良い。
  • しかしこの数字は、同社が1958年に57万ドルという極めて少ない純利益からスタートしたことを考えると、将来、それほど大きな意味を持たないだろう。
  • 往々にして、規模や利益がある程度大きくなってしまうと、高い成長率を維持するのは難しくなる。

エマーソン社は時価総額1,640百万ドルと圧倒的な差を示していますが、高い評価には値崩れするリスクが高まるので注意しましょう。


また、成長株を分析する時によくあるのが、過去の純利益が極めて少ないところからスタートしているために、高い成長率を示しているように見えることです。

成長株で成功する銘柄には、強固なファンダメンタルが必要になります。

しかし往々にして、規模や利益がある程度大きくなってしまうと、高い成長率を維持するのは難しくなります。



エメリー社について

  • エメリー社において意外なのは、国内航空旅客業の業績が最悪だった1970年に収益と株価を急速に伸ばしたことである。
  • これは特筆すべきことではあるが、競争の激化、通運業社と航空業者間の新たな協定の圧力などのマイナス要因によって、先々の収益が減るのではないかという疑問が頭をもたげる。
  • このような点について的確な判断を下すには詳細な検討が必要となるだろうが、防衛的投資家は一般的な予測においてこのことを見逃してはいけない。

防衛的投資家といえども、常識を働かせて予測する事は大切です。

当時の航空業界は、マイナス材料が盛りだくさんで注意を払うべきでした。



エムハルト社とエルトラ社について

  • エムハルト社は過去14年にわたり、株式市場よりも実際のビジネスで好業績を上げている。
  • 1958年の株価収益率は22倍の水準であり、これはダウ平均とほぼ同じ率である。
  • その後、ダウ銘柄の収益上昇率が100%以下だったのに対し、同社の収益は3倍に上昇したが、1970年の終値は1958年の高値よりわずか3分の1高いだけで、対するダウ平均はプラス43%である。
  • エルトラ社の数字もこれとほぼ近い。
  • 両社とも現在の相場で特別魅力的なわけでもないが、データを見る限り数字が素晴らしく良い。

エムハルト社のPERはダウ平均とほぼ同じ率でしたが、その後の収益上昇は目を見張るものがあります。

エルトラ社もエムハルト社の数字とほぼ近いです。

1970年のPERも、両者とも10倍程度と割安感があります。



S&P社の評価

  • 将来の見通しがいいのだろうか?ここで確かな答えは出せないが、1971年にS&P社はこの四社について次のように述べている。
  • エルトラ社ーー長期展望としては、堅実な経営が続く。競争力と事業の多角化がマイナス要因を相殺する。
  • エマーソン社ーー現状から株価(71ドル)は妥当で、長期保有に向く・・・事業買収方針の継続と業界の立場、さらに加速する国際化計画から、売上と収益がさらに増加することが見込まれる。
  • エメリー社ーー現在、株価は57ドルという十分な値段だが、長期保有に値する。
  • エムハルト社ーー今年のガラスコンテナ業界における資本支出は限定的であった。1972年は経営環境の改善による収益補強が期待される。株(34ドル)は保有に値する。

エルトラ社とエムハルト社のPERが割安なのは、将来の見通しが良いのでしょうか?

本書では参考までにS&P社のコメントを載せています。

マイナスのコメントがあるのが一因のようにも見えますね。



結論

  • この会社(エメリー社)の可能性を詳細に検討した結果、これが非常に優れており、将来も楽観視できると考える人には向くだろうが、収益や株式市場の好業績に熱狂しすぎるというウォール街特有の過ちを犯さないことを心に留めておきたい、用心深い投資家には向かない。
  • エマーソン社についても同じ警告を発することができそうだ。
  • さらに10億ドルを上回る現在の市場価値が、無形資産によるものなのか収益力によるものなのかを考えなくてはならない。
  • これに対して、エルトラ社(27ドル)とエムハルト社(33ドル)は、いずれも株価に対して十分な価値のある企業の特徴を備えており、十分安全な投資に値する。
  • 投下資本に対する収益率は長い間良好だった。
  • 利益も安定し、過去の成長率も際立っていた。

エメリー社の収益の伸びは優れており、株価も高く評価されています。

このような成長株への投資は、いつ衰退するかの見極めが重要になるため注意が必要になります。


またエマーソン社でも同様のことが言えますが、資産の多くを無形資産(のれん)が占めている点に警戒する必要があるでしょう。


これらに対して、エルトラ社とエムハルト社は、グレアムは十分投資する価値のある企業だと指摘しています。



防衛的投資家のポートフォリオに含まれるべき7つの統計的基準

  • この二社は、我らが防衛的投資家のポートフォリオに含まれるべき7つの統計的基準に見合う。(詳しくは次章)
  1. 適切な規模
  2. 財務状態が十分に良い
  3. 最低過去20年間、継続的に配当がある
  4. 過去10年間、赤字決算がない
  5. 一株当たり利益が、10年間で最低3分の1以上伸びている
  6. 株価が純資産価値の1.5倍以下
  7. 株価が過去3年の平均収益の15倍以下

詳しくは次章で解説しますが、エルトラ社とエムハルト社はこれらの基準を満たしています。

投資を行う上で、このような明確な基準を示してくれるのは、非常にありがたいことだと思いますので、暗記する勢いで頭に入れておくといいでしょう。



将来予測はしない

  • われわれはエルトラ社とエムハルト社の将来の収益予測はしない。
  • 投資家の普通株分散投資リストには、どうしても失望する結果となるものが含まれてしまい、このことは右の二社のいずれか、または両方にも起こるだろう。
  • しかし右記の基準および投資家がクリアさせたいその他の良識ある基準に基づいて選択した分散投資のリストそのものは、何年も十分な収益を上げるはずである。
  • 少なくとも長い経験に基づくとそうなのである。

証券分析で行ったような将来予測(販売個数なり販売価格なり)は行わず、あくまで過去の成長率が将来も続くだろう程度に留めています。

そのため、結果的には失望する銘柄も含まれるでしょうが、分散投資を行うことで、投資リストの収益は十分なものとなるとグレアムは長い経験から断言しています。



最終所見

  • 経験のある証券アナリストは、この四社に対するわれわれの総合的な論証を認めたとしても、エマーソン社かエメリー社の株式保有者にエルトラ社かエムハルト社株へ乗り換えを勧めることは、その推奨の裏にある哲学を株式保有者が明確に理解していない限り、恐らくしないだろう。
  • いかに短期間であれ、株価収益率が低い二社の株価が、株価収益率が高い二社の株価を上回ることを期待する理由はなかった。
  • 後者は、市場で好感視されていたため相当な勢いがあり、それは無限に続くものとみなされていた。
  • エマーソン、エメリー社よりエルトラ、エムハルト社を好む明らかな基準は、投資家の熟慮による価値重視の投資か、投機型の投資かの選択にある。
  • つまり、普通株の投資方針は、多かれ少なかれ投資家個人の姿勢に左右されるのだ。

防衛的投資家が満たすべき7つの基準は、あくまで防衛的投資家向けであって、他の投資家にとってはふさわしくないこともあります。

現に成長株では、分散投資していては果実が十分に得られないため集中投資しがちです。

加えて、市場が好感され続ける限り基本的には含み益を膨らませ、どこかのタイミングで利確を行うため、投機型の投資になります。


したがって、どのタイプの投資家になりたいかは、投資家個人次第であって、個人の事情や目標によって様々です。

防衛的投資家は、基本的には時間も知識も足りない人向けです。

他方で積極的投資家は、自分の興味や知識や時間次第で、手がける投資や投機は異なってきます。

ぜひ一度立ち止まって、どのタイプの投資家になるのか考えてみましょう。




まとめ

  1. 防衛的投資家といえども、常識を働かせて予測する事は大切になる
  2. 収益や株式市場の好業績に熱狂しすぎるというウォール街特有の過ちを犯さないこと
  3. 右記の基準および投資家がクリアさせたいその他の良識ある基準に基づいて選択した分散投資のリストそのものは、何年も十分な収益を上げる

おわりに

日米の金融政策決定会合を無事通過し、株価は上昇で応えました。

正直0.5%の利下げは予想外でしたが、それだけアメリカ経済(雇用)の落ち込みを恐れての結果だったのかなと考えています。


また、以前に仕込んだ銘柄のうち、前回や今回と記事を書いていて、ここの分析が足らなかったなと思う部分もあったので、分散投資とはいえ反省しているところです。

これは時期を見て、実際の日本株分析も当ブログで行って振り返りたいと思っています。


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