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【会計士が斬る】7203 トヨタ自動車【銘柄分析】

『賢明なる投資家』で説明されている内容に基づいて、会計士が銘柄分析を行います。

今回は【7203 トヨタ自動車】について分析します。

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注意事項

  • 情報の精査には細心の注意を払っていますが、ミスや情報が劣化する可能性があるため、あらかじめご了承ください。
  • 1株当たり利益の算定では、潜在株式考慮後の金額を使用しています。

会社概要

トヨタ自動車
  • 4輪世界首位
  • 国内シェア3割超



定量分析

トヨタデータ

『賢明なる投資家』第14章の7つの基準を用いて定量分析を行います。
gyatuby.hatenablog.com

1.企業の適切な規模:〇

平均以上の変動の影響を受けやすい小企業を排除するための基準です。

トヨタ自動車は日本首位の時価総額を誇っており、まぎれもなく大企業といえます。

2.十分に健全な財務状況:△

財務の安全性の目安である、流動比率200%、自己資本比率50%を下回っています。

また純流動資産流動資産ー流動負債)が固定負債を超えていません。

とはいえ、自動車業界は大規模な資産を利用して製造を行っており、自動車業界は全体的に下回る傾向があり、許容範囲か。


またこれらの基準は、株主還元の余力も示しています。

現状、増配や自己株式の取得を図るなど、株主還元に積極的な姿勢を見せていますが、その動向には注意する必要はあります。

3.収益の安定性:〇

過去10年黒字を維持しており、収益は安定しています。

また安定指数は、過去10年間において、それに先立つ三年間の平均値と比べて1株当たり利益の最大の減少を計算しています。

つまり、減少がゼロなら安定性100%ということです。

自動車株は景気循環株のため、それなりの収益の波が発生していることが分かります。



4.配当歴:〇

少なくとも過去20年間において、何らかの配当を出しています。

そのため、配当が無配になるリスクについて心配する必要はないでしょう。

5.収益の伸び:〇

2022年~2024年の平均と2012年~2014年の平均を比べると、成長率は267%で、年率約10%です。

目安となる成長率3分の1を上回っています。

6.妥当な株価収益率:〇

現在の株価は、目安となる過去3年間の平均収益の15倍を下回っています。

なお、PER15倍となる目標株価は3,754円です。

7.妥当な株価純資産倍率:〇

現在の株価は、目安となる純資産価値の1.5倍を下回っています。

なお、PBR1.5倍となる目標株価は3,810円です。



定性分析

定量分析では見ることができない、質的項目について分析していきます。

業界分析(業界地図より)

  • 昨年は半導体不足やコロナ禍でのサプライチェーンの混乱など、生産の不安定要因が解消した影響で自動車各社の販売台数は伸びた。
  • 首位のトヨタ自動車は販売台数が1030万台と過去最高を記録。
  • 今年も北米の需要が底堅く、生産環境の改善とコロナ禍以降積み上がっている受注残の解消が進むことで、販売台数は高水準を維持するものとみられる。
  • ただ、中国や欧州、東南アジアの一部では景気後退の懸念がくすぶる。
  • 自動車各社は、EVやソフトウェア、自動運転技術など新たな領域での開発競争が激化している。
  • 加えて、原材料価格や労務費がグローバルで高騰しており、サプライヤーへの支援も含めた費用の増大分を、新車価格に転嫁できるかどうかが業績を左右する。
  • これまで急激な市場拡大を続けてきたEVも、その伸びが一部の地域で鈍ってきた。
  • トヨタやホンダは20年以上技術を磨いてきたハイブリット車(HV)がドル箱になっており、市場の変化が激しい中で電動車戦略の柔軟性が問われる。
  • 新トランプ政権の関税政策により、自動車各社の利益が減少するおそれあり。



直近の決算分析

  • 型式認証不正による影響で販売台数は減少したものの、販売価格の是正や前半の円安影響により、増収を維持。
  • 好採算のHVが好調。
  • 他方で、国内の型式認証不正や日野の北米認証不正関連のコスト等がかさみ、若干減益。
  • 中国での新エネルギー車市場の拡大や価格競争激化の影響などにより販売台数は減少し、インセンティブがかさんだ影響等により持分利益も減少。
  • 販売価格はコスト転嫁による値上げが無事進んだ。
  • 前期末に比べて円高になったことにより、外貨建て資産の評価差損が発生した。



同業他社分析(対ホンダ)

gyatuby.hatenablog.com

  • 安定指数はトヨタ自動車が劣るようにみえるが、これは成長率がホンダよりも優れているため。
  • 世界のトヨタの強さを示しているといえる。
  • これは、PERやPBRといった割安指標で顕著に表れている。
  • 日米で(型式不正の影響があるものの)好調、特にSUVは両社売れている。
  • また、中国のEV市場でBYDや現地メーカー相手に苦戦しているのも両者共通。
  • トヨタは2024年3月期時点で売上高45兆円に対し、ホンダは20兆円規模。




総括

トランプ関税やEV価格競争影響などで、自動車株全体的に株価は安く推移しており、トヨタ自動車もその影響を受けています。

配当利回りは、現時点で2.78%を示しており、ホンダと比べると少し物足りないかもしれません。

この差は、トヨタ自動車が世界のトヨタとして、株式市場で評価されているのが理由として挙げられます。


目標株価は3,754円と余裕があり、バリュー株といって差し支えないでしょう。

チャートは右下がりで推移したあと、横ばいが続いており買いやすいかもしれません。



おわりに

トヨタ自動車も私のポートフォリオに組み込まれていますが、一見するとホンダに集中投資するほうがよいと思えるかもしれません。

しかし、防衛的投資では万が一の事態に備えて分散投資することを推奨しており、私もホンダだけでなく自動車株でめぼしい先にも、投資するようにしています。


積極的投資家になりたい方は、知識と時間をフル活用して集中投資するのが賢明(もちろん損切りの判断も素早く行う必要があります)だと思いますが、防衛的投資家にはその余裕はありません。

長期投資という時間を味方につけて、しかるべき配当を受け取りつつ値上がりを待つのが良いでしょう。

この点、トヨタ自動車は株価が横ばいで推移しており、あるときに上向く可能性も否定できません。

個人的にはホンダを推したいですが、トヨタも値上がりに期待できるおすすめ銘柄です。

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