担保条項や追加発行の制限、銀行借入との優先順位、運転資本要件──債券保有者の権利は細かな契約条項で守られています。
本記事では、信託証書の保護規定とその実務上の意味を整理し、上位証券の安全性を読み解きます。
- 優先担保の禁止
- 公平な担保条項
- 土地代金譲渡抵当
- 再建策として発行された債券の請求権は銀行借り入れよりも下位
- 同等な証券の追加発行からの保護
- 運転資本の要件
- 議決権の付与
- 投資信託債の保護条項
- まとめ
- おわりに
優先担保の禁止
- まず担保付き社債について、一般に信託証書では資産に新たな優先担保を設定することを禁じている。
- ただし、企業再建策の一環として発行される債券は例外であり、そこでは新規に資金を調達するために優先担保が必要とされる。
せっかく担保を付けても、あとから優先担保を設定されるとその債券保有者の権利が侵害されてしまいます。
そのため一般的には、信託証書では資産に新たな優先担保を設定することを禁じています。
公平な担保条項
- 当初は債券に担保がついていない場合でも、あとで不動産に付けられる担保と同じ担保が付与されることもある。
同様に当初は無担保であっても、あとから担保付き債券が発行されると当初の債券保有者の権利が侵害されてしまいます。
そのため、当初は債券に担保がついていない場合でも、あとで不動産に付けられる担保と同じ担保が付与されることあります。
これを「社債間限定同順位特約」と呼びます。
土地代金譲渡抵当
- 一般に土地代金譲渡抵当(Purchase Money Mortgage)などの付与は無条件に認められている。
- この担保はあとで取得した新しい不動産に設定される抵当で、これが付与されてもほかの債券保有者の地位に影響はないといわれる。
- しかし、こうした抵当が付与されれば、証券の持分に対するその会社の総負債の比率が大きくなるのは確実で、既存の債券保有者の持ち分が希薄化する可能性もある。
土地代金譲渡抵当(Purchase Money Mortgage)は、買主が売主または第三者から購入額の一部を借り入れるために当該不動産に設定する抵当を指します。
主に米国の不動産取引で使われる取引であり、日本では一般的ではないようです。
再建策として発行された債券の請求権は銀行借り入れよりも下位
- 一方、企業再建策の一環として発行される債券の請求権は、現在または将来行われる銀行借り入れの返済権よりも下位となる。
- これは銀行融資が売掛債権や棚卸資産を担保に行われるからである。
通常でも銀行借り入れは債券よりも優先して弁済されるようです。
ただし債券に担保が付与されている場合は、その担保は債券の元利返済に使われます。
クレジット② 〜信⽤リスクと弁済順位の考え⽅〜
弁済順位|Siiibo証券(シーボ)|金利2〜8%の円建て国内債券投資
同等な証券の追加発行からの保護
- ほぼすべての債券や優先株は、同等な証券の追加発行から十分に保護されることが保証されている。
- これについて信託証書では、発行証券の支払利息に対する収益カバレッジを余裕ある水準に維持することを明記している。
先ほどの「社債間限定同順位特約」にあるように、同じ発行体が発行した複数の無担保社債間において、利金や償還金の受取りに有利不利が生じないようにする(受取る権利を保護する)為に付与される特約が通常付与されます。
目論見書に直接インタレスト・カバレッジについての記載はあまりないように思えますが、格付け会社による格付けでは、インタレスト・カバレッジ等が考慮されているため、間接的に投資適格水準を取得するうえで、インタレスト・カバレッジを余裕ある水準に維持することが求められます。
鉄道債には収益カバレッジの記載なし
- しかし、鉄道債ではこの種の収益カバレッジの規定はほとんど見られない。
- 一般に包括抵当付き鉄道債では、債券発行残高が発行済み株式数の一定率を上回った場合や、債券の新規発行額が新たに取得した不動産の原価または適正価額の一定率を上回った場合には追加発行を禁じている。
- このほか、既発債については低めの水準に担保率を設定し、新たな資金が必要な場合には下位証券を発行して賄うケースが多い。
日本では、包括抵当付き社債が個人向けに発行されるケースは見受けられません。
鉄道会社が個人向けに発行している社債には、JR西日本がありますが無担保のものです。
担保付き社債の追加発行
- 一般に担保付き社債の追加発行が認められるのは、新たに取得した不動産の担保価値が負債の増加分をかなり上回っている場合に限られる。
既発の担保付き社債保有者の権利を保護するために、追加で担保付き社債を発行する場合には新たに取得した不動産の担保価値が負債の増加分をかなり上回っている場合に限られます。
とはいえ個人向けに担保付き社債が発行されることが稀のため、具体例を探すことはできませんでした。
運転資本の要件
- 運転資本を債券発行残高の一定率以上に維持するという規定の導入はまだ一般的な慣行になっていない。
銀行借入れの際には、コベナンツ条項として良好な財務状態を維持することが求められることがあります。
たとえば、自己資本比率の一定率以上の確保などがあります。
議決権の付与
- こうした状況を踏まえ、われわれとしては、もし運転資本が一定率を割り込んだ場合に単に株式配当を見送るといったことより厳しい債券保有者の救済策を実施するのであれば、そのひとつとして議決権を株主から債券保有者に移すことを提案したい。
現在でも社債保有者には、株主のように会社の経営に関わる議決権はありません。
出版当時には具体例がないこともないようですが、一般的ではないのは確かです。
投資信託債の保護条項
- 投資信託債の信託証書には、厳しい保護条項と救済策が明記されるべきである。
- 投資信託債でもポートフォリオの時価が預かり額を常に一定率(例えば25%など)上回っていることが求められる。
- もしも時価がその比率を割り込んだ場合には、投資信託は有価証券の担保融資と同じような措置を取らなければならない。
- とりわけ投資信託債については、ポートフォリオの時価を債券発行残高よりも上の水準に維持するといった保護策が求められる。
本著にもあるように、有価証券の担保融資をイメージすると分かりやすいと思います。
もしも時価が預り額を一定率を割り込んだ場合には、株主からの増資を受けたり、または手持ちの有価証券を売却して必要な担保率を回復する必要があります。
まとめ
- 担保付き社債について、一般に信託証書では資産に新たな優先担保を設定することを禁じている。
- 当初は債券に担保がついていない場合でも、あとで不動産に付けられる担保と同じ担保が付与されることもある。
- ほぼすべての債券や優先株は、同等な証券の追加発行から十分に保護されることが保証されている。
おわりに
今週の相場は、イラン情勢に大きく左右される一週間でした。
「戦争に慣れる」という表現は本来使うべきではないのかもしれませんが、市場は非常に敏感に反応しています。
停戦協議という言葉が伝わっただけで株価が大きく上昇する場面もあり、まさに一つひとつのニュースに振り回されている印象です。
もちろん、私自身も投資家として「どこかで買い場が来ないか」と考えることはあります。
ただ、それがこのような形で訪れることを望んでいるわけでは決してありません。
事情のすべてを理解しているわけではありませんが、武力に訴えることで多くの人々が命の危険にさらされる現実を思うと、本当にそれしか方法がないのかと疑問を感じてしまいます。
遠く離れた場所の出来事とはいえ、その国で日常を生きている人々がいることを思うと、単なるマーケットニュースとして受け止める気にはなれません。
一日も早く事態が落ち着き、平穏が戻ることを願うばかりです。
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