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【会計士が斬る】9432 日本電信電話(NTT)【銘柄分析】

『賢明なる投資家』で説明されている内容に基づいて、会計士が銘柄分析を行います。

今回は【9432 日本電信電話(NTT)】について分析します。

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注意事項

  • 情報の精査には細心の注意を払っていますが、ミスや情報が劣化する可能性があるため、あらかじめご了承ください。
  • 1株当たり利益の算定では、潜在株式考慮後の金額を使用しています。
  • 投資判断は各自自己責任でよろしくお願いいたします。

会社概要

ロゴ
  • NTTグループ持株会社。ドコモ主力。
  • 固定電話独占、光回線高シェア。
  • 海外開拓・提携に注力



セグメント概要

セグメント

1,総合ICT事業

携帯電話事業、国内電気通信事業における県間通信サービス、国際通信事業、ソリューション事業、システム開発事業及びそれに関連する事業を主な事業内容としています。
・株式会社NTTドコモ(以下、「NTTドコモ」)
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下、「NTTコミュニケーションズ」)

NTTドコモ
  • 携帯最大手。
  • NTTが2020年に完全子会社化し上場廃止に。
  • ドコモブランドは国内シェア約35%
  • 法人向け、金融など非通信事業にも注力。
NTTコミュニケーションズ



2,地域通信事業

国内電気通信事業における県内通信サービスの提供及びそれに附帯する事業を主な事業内容としています。
東日本電信電話株式会社(以下、「NTT東日本」)
西日本電信電話株式会社(以下、「NTT西日本」)

NTT東日本
  • 新潟、長野、山梨、神奈川以東の17都道県で事業展開。
  • 個人向けは「光コラボ(光回線の卸売)」に軸足移し販促コスト圧縮。
  • 製造・物流現場のDXなど法人開拓を加速。
NTT西日本
  • 富山、岐阜、静岡以西の30府県で事業展開。
  • 担当地域にコスト負担の大きい離島などが多いが、「光コラボ」関連や自治体DXなどで成長図る。



3,グローバル・ソリューション事業

システムインテグレーション、ネットワークシステム、クラウド、グローバルデータセンター及びそれに関連する事業を主な事業内容としています。
・株式会社NTTデータグループ(以下、「NTTデータグループ」)
・株式会社NTTデータ(以下、「NTTデータ」)
・株式会社 NTT DATA,Inc.(以下、「NTT DATA,Inc.」)

NTTデータグループ
  • ITサービスで国内最大手。
  • 17年度からAWSのプレミアパートナー
  • 官公庁の大型案件にひときわ強い。
  • 2022年10月から親会社NTTの海外事業を当社子会社に集約。
  • 2023年7月に持ち株会社体制に移行。
  • 企業の情報ネットワークの監視代行・支援(MSS)で世界上位。
  • さまざまなセキュリティーサービスを展開。



定量分析

データ

『賢明なる投資家』第14章の7つの基準を用いて定量分析を行います。
gyatuby.hatenablog.com

1.企業の適切な規模:〇

平均以上の変動の影響を受けやすい小企業を排除するための基準です。

時価総額は13兆円を超えており、れっきとした大企業といえます。

2.十分に健全な財務状況:△

財務安全性の目安である、流動比率200%、および自己資本比率50%を下回っています。

とはいえ、同業他社も同様に下回っており、過度に意識する必要はないでしょう。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(純利益/金融費用)は9.8倍と安全域にあり、資金繰りに特に問題はないと思われます。


なお、これらの基準は、株主還元の余力も示しています。

現状、連続増配を図っておりますが、株主還元の姿勢の変化には注意を払う必要があるでしょう。

3.収益の安定性:〇

過去10年黒字を維持しており、収益は安定しているといえるでしょう。


また安定指数は、過去10年間において、それに先立つ三年間の平均値と比べて1株当たり利益の最大の減少を計算しています。

つまり、減少がゼロなら安定性100%ということです。

NTTは順調に成長しており、収益は安定してます。

(今までの安定性指数の算定に誤りがありました。申し訳ございません。)



4.配当歴:〇

少なくとも過去20年間において、何らかの配当を出しています。

そのため、配当が無配になるリスクについて過度に心配する必要はないでしょう。

5.収益の伸び:○

2022年~2024年の平均と2012年~2014年の平均を比べると、成長率は155%で、年率約4%です。

目安となる成長率3分の1を上回っています。

6.妥当な株価収益率:〇

現在の株価は、目安となる過去3年間の平均収益の15倍を下回っています。

なお、PER15倍となる目標株価は211円です。

7.妥当な株価純資産倍率:〇

現在の株価は、目安となる純資産価値の1.5倍を上回っています。

東証はPBR1倍割れの企業に対応を求めており、その影響は無視できないでしょう。

『賢明なる投資家』では、PBRが1.5倍を超えていても、PERに余裕があれば目安となる目標株価に調整を加えてもいいと述べています。

なお、PBR1.5倍となる目標株価は176円ですが、前述の調整後株価は192円です。



定性分析

定量分析では見ることができない、質的項目について分析していきます。

業界分析(業界地図などより)

1,携帯電話事業者
  • 通信単価の底打ち反転を追い風に、キャリア各社が注力する非通信分野を着実に成長させられるかが業界の行方を握っている。
  • 契約数が一時減った楽天モバイルも23年に反転増。
  • 一方、苦戦するのがNTTドコモだ。
  • 23年夏に低容量・低価格帯ユーザー向けの新料金プランを投入したが、個人向け通信の業績は24年度も縮小すると予想される。
  • 本業で顧客の奪い合いが激しさを増す中、各社は金融などの非通信分野を強化。
  • 象徴的なのが他業種に対する大規模なM&Aだ。
  • ドコモがマネックス証券オリックス・クレジットといった金融事業者を子会社化、KDDIもコンビニ大手ローソンに50%出資を決めるなど大型案件が相次ぐ。



2,インターネット回線
  • インターネット回線のブロードバンド契約数は成熟化に加えて、テレワーク対応のニーズが一巡したこともあり、成長が鈍化している。
  • その中で緩やかな成長に寄与しているのが、NTTグループによる光回線の卸売り「光コラボレーション(光コラボ)」と、WiFi環境を構築するワイヤレスのホームルーターだ。
  • 今後の成長ペース引き上げには工場やサプライチェーンのDXに伴う通信環境整備など法人需要の開拓や、高速大容量の利便性訴求が重要になる。



3,システム開発
  • コロナ禍を契機とした世界的なDXが官民で進んでおり、業界全体で好調な状況が続く。
  • 良好な市況が続く中、NTTデータグループや富士通など国内大手が注力するのがコンサル機能強化だ。
  • 課題解決型DX支援のブランディングも目立つ。
  • 一方、成長領域のDX事業をグループで一体運営する動きも現れている。
  • もっとも海外に目を向けると日本勢のシェアは低い。
  • NTTグループの海外事業を集約したNTTデータをはじめ、日本企業が積極的なM&Aなどを通じ、海外市場を開拓できるかも注目される。



直近の決算分析

直近決算
  • NTTデータグループの国内外の増収に加え、NTTドコモのスマートライフ事業の増収に伴い増収、為替影響1250億円。
  • eximoの移行促進も、低容量格安サービスirumo影響で減益。
  • また、固定電話など地域通信事業の不振が響いたほか、NTTドコモの販売強化に伴う費用がかさんだ。



総括

グループ各社の数や規模が大きいため、なかなか全容を把握しにくいかと思います。

大雑把に言えば、安定収入の通信事業に加え、成長事業であるシステム開発事業が乗っかったイメージを持つと分かりやすいです。

とはいえ株価は一時期人気化したときから、だいぶ下降しており、年度目標の達成も厳しいとなると株価の反転は期待しにくいのが現状にありそうです。

ただ、配当利回りは3.54%とかなりの水準にあり、豪華な株主優待が100株からもらえるため、試しに100株購入するのは選択肢としてありかと思います。

おわりに

株主優待銘柄としてとても優秀なNTTですが、個人投資家にとって株主優待はありがたい存在ですよね。

株主優待について取り扱うブログや媒体は多くありますが、私は通信事業銘柄はコスパ抜群の株主優待を提供することが多いのでおススメします。

ただし、小型株は一般的に値上がりをあまり期待できないため、買うタイミングについては慎重に行うようにしたほうがよいでしょう。

かくいう私も、NTTは170円で捕まっており、100株とはいえ失敗したなと思っています。

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