『賢明なる投資家』で説明されている内容に基づいて、会計士が銘柄分析を行います。
今回は【9432 日本電信電話(NTT)】について分析します。
注意事項
- 情報の精査には細心の注意を払っていますが、ミスや情報が劣化する可能性があるため、あらかじめご了承ください。
- 1株当たり利益の算定では、潜在株式考慮後の金額を使用しています。
- 投資判断は各自自己責任でよろしくお願いいたします。
セグメント概要

1,総合ICT事業
携帯電話事業、国内電気通信事業における県間通信サービス、国際通信事業、ソリューション事業、システム開発事業及びそれに関連する事業を主な事業内容としています。
・株式会社NTTドコモ(以下、「NTTドコモ」)
・エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下、「NTTコミュニケーションズ」)
NTTコミュニケーションズ
- 長距離・国際通信担当。
- 「ドコモビジネス」ブランドで法人向け事業を展開。
- レンタルサーバー事業を生かしたクラウド事業で先行。
- ただ20年末に法人向けパブリッククラウド事業を終了し、プライベートクラウドに集中。
2,地域通信事業
国内電気通信事業における県内通信サービスの提供及びそれに附帯する事業を主な事業内容としています。
・東日本電信電話株式会社(以下、「NTT東日本」)
・西日本電信電話株式会社(以下、「NTT西日本」)
定量分析

『賢明なる投資家』第14章の7つの基準を用いて定量分析を行います。
gyatuby.hatenablog.com
2.十分に健全な財務状況:△
財務安全性の目安である、流動比率200%、および自己資本比率50%を下回っています。
とはいえ、同業他社も同様に下回っており、過度に意識する必要はないでしょう。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(純利益/金融費用)は9.8倍と安全域にあり、資金繰りに特に問題はないと思われます。
なお、これらの基準は、株主還元の余力も示しています。
現状、連続増配を図っておりますが、株主還元の姿勢の変化には注意を払う必要があるでしょう。
3.収益の安定性:〇
過去10年黒字を維持しており、収益は安定しているといえるでしょう。
また安定指数は、過去10年間において、それに先立つ三年間の平均値と比べて1株当たり利益の最大の減少を計算しています。
つまり、減少がゼロなら安定性100%ということです。
NTTは順調に成長しており、収益は安定してます。
(今までの安定性指数の算定に誤りがありました。申し訳ございません。)
4.配当歴:〇
少なくとも過去20年間において、何らかの配当を出しています。
そのため、配当が無配になるリスクについて過度に心配する必要はないでしょう。
5.収益の伸び:○
2022年~2024年の平均と2012年~2014年の平均を比べると、成長率は155%で、年率約4%です。
目安となる成長率3分の1を上回っています。
6.妥当な株価収益率:〇
現在の株価は、目安となる過去3年間の平均収益の15倍を下回っています。
なお、PER15倍となる目標株価は211円です。
7.妥当な株価純資産倍率:〇
現在の株価は、目安となる純資産価値の1.5倍を上回っています。
東証はPBR1倍割れの企業に対応を求めており、その影響は無視できないでしょう。
『賢明なる投資家』では、PBRが1.5倍を超えていても、PERに余裕があれば目安となる目標株価に調整を加えてもいいと述べています。
なお、PBR1.5倍となる目標株価は176円ですが、前述の調整後株価は192円です。
定性分析
定量分析では見ることができない、質的項目について分析していきます。
業界分析(業界地図などより)
1,携帯電話事業者
- 通信単価の底打ち反転を追い風に、キャリア各社が注力する非通信分野を着実に成長させられるかが業界の行方を握っている。
- 契約数が一時減った楽天モバイルも23年に反転増。
- 一方、苦戦するのがNTTドコモだ。
- 23年夏に低容量・低価格帯ユーザー向けの新料金プランを投入したが、個人向け通信の業績は24年度も縮小すると予想される。
- 本業で顧客の奪い合いが激しさを増す中、各社は金融などの非通信分野を強化。
- 象徴的なのが他業種に対する大規模なM&Aだ。
- ドコモがマネックス証券やオリックス・クレジットといった金融事業者を子会社化、KDDIもコンビニ大手ローソンに50%出資を決めるなど大型案件が相次ぐ。