はぐれ猿でも、投資がいいんだ。

ふりむけばやさしさに飢えた弱肉強食の世界で

賢明なる投資家第1章②〜防衛的投資家が手に入れるもの

シンプルかつ安全な投資を行うのが防衛的投資家です。

では現在において、防衛的投資家が手に入れるものとは一体なんでしょうか?

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防衛的投資家とは?

  • われわれは防衛的投資家を、安全かつシンプルな投資を好む人と定義してきた。

より具体的に定義するならば、防衛的投資家とは、「大きな失敗や損失を避けることに最大の関心がある人々を指し、彼らがそれに次いで重視するのは努力や不快感、また度重なる投資判断の必要性から逃れることにある」人々を指します。


投資はけっして危険というわけではありません。

リスク管理をしっかり行えば、大した努力を払わずとも平均レベルの収益を得ることは可能です。



防衛的投資家は何を行い、何を期待すべきか

  • もしも「ごく一般で平均的な状態」というものがあるとしたら、防衛的投資家はどのような投資選択をし、どれだけの利益を期待することができるのだろう?
  • これらの質問に答えるために、以下の三点について考える。
  • まず、われわれが七年前に書いたことについて、次に、それ以来、投資家が得る収益を左右する潜在的な要因が起きた重要な変化について、そして最後に、防衛的投資家は現在(1972年)の市況において、何を行い、期待すべきかについて、である。

では防衛的投資家は何に投資を行い、どれだけの利益を期待できるのでしょうか。

本書では過去に起こったことを振り返り、どうするのかを述べています。



1、七年前に述べたこと

  • まず超優良債券と主要株式銘柄に分けて投資するべきだということ。
  • 次にその際、債券の割合は25%以上、75%以下で、残りを株で保有するということ。
  • さらにシンプルなのは、この2つを半々で保有するという選択である。
  • しかしたとえ5%でも市況が活気づいて、この割合が保てなくなったときには調整が必要となる。
  • 「市場が危機的に高い水準だと判断するなら」、普通株の割合を25%まで減らす方針をとることもできるし、逆に「市場が弱含みで、それを魅力的なものと感じるなら」最大75%まで増やすこともできるのだ。

本書で最も重要なことの一つである、アセットアロケーション(資産配分)の考え方です。

シンプルに債券と株式を半分ずつ保有することを勧めています。

もし債券部分を元本保証にしたいのであれば、預金や個人向け国債でも構いません。


アセットアロケーション日本年金機構でも採用されている考え方です。

最近では市況の好調により、年金機構の成績は素晴らしいものとなっています。
www.gpif.go.jp



1964年に起きたこと
  • 投資家は超優良課税債券で4.5%、そして優良非課税債券で3.25%の利回りを得ることができた。
  • 一方、市場牽引株(ダウ平均892)の配当利回りは、3.2%しかなかった。
  • この事実は他の要因とともに、注意を促した。
  • 「通常の市況」で同じ金額を代表銘柄株に投資するなら、投資家は配当として3.5%から4.5%を、それに加えて株の本源的価格(「通常の市況」における)にも安定した増加を見込める、つまり配当と株価上昇によって年7.5%の利益を見込めるはずだと、われわれは指摘した。
  • つまり債券と株を半々で保持することで、税引き前で約6%の利益が期待できるということだ。

1964年の状況は、現在のアメリカの市況に似ていますね。(10年米国債4%前後、ダウ平均配当利回り2.5%前後)
米国債券10年 年利回り | マーケット情報 | 楽天証券
おすすめ銘柄(個別株)の配当|米国株(個別株) | 投資の森

1964年にグレアムは、株式は配当だけでなくバリュー投資の観点で割安となっている銘柄を買いなさいと指摘していました。

これは現在にも通用するかもしれません。


先述の米国債利回りは、本当ならAA格付の債券の利回りを参照した方がいいのですが、データが見当たりませんでした。

もしかしたらAA格付の社債利回りはもっと高く、1971年の7.5%に近いかもしれません。


なお日本の場合は、異例の金融緩和の状態にあるので参考にしませんでした。

ゆくゆくは金利のある世界に戻れるでしょうか。



2、1964年以降に起こったこと

  • 1964年以降の大きな変化といえば、優良債券の利率が記録的に上昇したことである。
  • 優良社債からの収益は約7.5%で、1964年の4.5%よりも良い。
  • 一方、1969年から1970年にかけて市場が下落した間も含め、ダウ銘柄株の配当収益は上昇したが、これは1964年末(ダウ平均は900)の3.2%に対して、たかだか3.5%以下であった。
  • 金利上昇によって中期債券(例えば20年物)の市場価格は最大約38%下落した。

1964年以降、優良債券の利率が4.5%→7.5%とさらに上昇しました。

債券の利回りが、株式の平均利回りと比べて魅力的になったといえます。



株より預金の方が良かった時代
  • もしも投資家がダウ平均が874だった1964年に株式投資をしていれば、1971年末ごろにはわずかながらも利益を得られた。
  • 1970年には631と底を打っているが、「優良長期債券」による損失よりもはるかに少なかった。
  • 一方、もし債券投資を連邦貯蓄債、短期社債、または貯蓄口座などだけに限っていたら、この間に元本割れすることはなく、むしろ優良株で得られるよりも高い収益が得られたであろう。
  • つまり1964年には、理論上、インフレがあった場合は現金よりも株の方が良いとされたにもかかわらず、実際には投資をするなら株式投資よりも「現金類似商品」である債券の方が良いことが証明された。

1970年に一時的な暴落が起こり株価が下がりましたが、金利の急上昇もあり(長期)債券の下落よりマシでした。

この時預金や連邦貯蓄債、短期社債(満期が短いので満期までホールドすればいい)であれば、元本が保証されてるため下落せずに済みました。


ただ大抵の場合は、債券の価格変動は株価よりもずっと小さく、投資家は市場価格の変動をあまり気にせずに、どのような満期の債券も買うことができました。

現在ももし今後金利が上昇して、株価が一時的に下落することが起こるなら、現金や個人向け国債で身を守ることも大事になりますね。



3、1971年後期から1972年初期にかけての期待と方針

  • 1971年の終わりにかけて優良中期社債では8%の利回り(税引き前)を得ることができた。
  • 短期市場ならば、投資家は米5年物国債で約6%の利回りを得られた。
  • 一方、1971年、ダウ平均900のレベルにおける収益率は3.5%に過ぎなかった。

株式から得られる配当は3.5%であった一方、債券投資では6%〜8%得ることができました。

これは明らかに債券の方が株式投資より好ましいと言わざるを得ません。



全部債券に投資するべきか
  • 過去と同じように基本的な方針決定は、資金を超優良債券(またはいわゆる「現金類似商品」)とダウ平均に採用されているような主要銘柄の間でどう振り分けるかということでなされるとしよう。
  • その場合、もしも将来の著しい上昇または下落を予測するだけの有力な根拠がないとしたら、投資家はこの条件下でどの道を選ぶべきなのか?
  • まずは、逆方向への大きな変化がない限り、防衛的投資家は株式での3.5%の配当益と、年平均約4%の株価上昇を期待できるだろう。
  • 後に説明するが、本来この株価上昇は本質的には、各企業による内部留保利益の再投資に基づくものである。
  • 税込みベースで、株式投資からくる総合収益は平均7.5%となり、これは優良債券の金利よりもやや低い。
  • これらの期待値は、われわれの1964年の分析と比較すると、債券投資よりも株式投資の方が魅力に欠ける。
  • われわれが決して目を背けてはいけないのは、優良債券投資における金利と元本は、株における配当収入と価格上昇よりもずっと強く保護され、それゆえに確実であるという事実である。
  • その結果、現在(1971年末)債券投資は明らかに株式投資よりも好ましいと結論つけざるを得ない。
  • この結論が正しいとすれば、われわれは防衛的投資家に対して、株式投資における期待収益が著しく好転するまで、資金はすべて債券に注ぎ込み、株は一切持たないようにアドバイスするべきなのだろう。

では市況が著しく好転も暴落もしないと仮定したら、債券と株式への投資割合はどうするべきでしょうか?


株式に期待される収益は株主資本利益率7.5%、すなわち配当利回り3.5%に、再投資(内部留保)に伴う株価上昇4%(=7.5%-3.5%)加えた利率で計算されます。

他方で、債券利率は先述の通り8%です。

よって債券投資で得られる収益8%の方が、株式投資で得られる収益7.5%より大きいため、再投資による収益を考慮してもなお、債券投資の方が好ましいと言わざるを得ません。


さらに注意したいのが、株式の配当や値上がりは何の保証もありませんが、債券の利子と元本には法的に保護されており、それゆえ確実性があるという点です。

そうなると、株式には一切投資せずに債券オンリーが有効なのでしょうか?



インフレと株式
  • しかし、もちろんわれわれは現状の水準から株式運用よりも債券運用の方がより収益を生むとは断言できない。
  • ここで読者はすぐに、逆の状況になる潜在的な理由として、インフレという要因を思いつくだろう。
  • 第2章でわれわれは、20世紀のアメリカにおけるインフレの苦い経験から、たとえ現時点で収益に差があったとしても、債券よりも株式を選ぶことは支持しないということを述べる。
  • しかしあり得ないとは思うが、常にインフレ高進の懸念はあり、インフレ高進の状況では同じ金額を投資すれば、債券より株式においてより多くの収益を生み出し得る。

ここでよく言われるのがインフレーションです。

インフレーション(以下、インフレ)とは、私たちが普段買っている日用品やサービスの値段(物価)が上がることをいいます。


つまりインフレ下ではお金の価値が下がるため、額面が保証されている債券は不利になります。

他方で株式は、インフレに伴って株価が上昇するため、インフレがもし進むのであれば株式の方が有利になります。


しかし高インフレについては、中央銀行や政府がなんとしても退治する姿勢を見せているので、あまり考慮しなくてもいいのかもしれません。

現在は日米ともにインフレが落ち着いてきているので、インフレを考慮しなければ利率が大きい債券の方が魅力的と言えるでしょう。



株式が債券より魅力的なその他の理由
  • これもあまりあり得ないと思うが、インフレが沈静化した状況で米国経済が活況を呈し、向こう数年間で株価が大幅に上昇するということも可能性としてはある。
  • さらに株式市場が潜在価値に対して、確たる理由もなく投機的に高騰するということもあり得る。
  • これらの理由、またはわれわれが考えもつかない他の理由によって、投資家は投資収益率が好ましいものであったとしても100%債券に集中してしまったことを後悔するかもしれない。

こちらの理由の方が、全部の資金を債券に注ぎ込むのはやめた方がいいと思わせるでしょう。


インフレが沈静化して中央銀行が利下げを行うような状況、まさに現在と似ていますが、市況が活況になることがあります。

そして人々は熱狂して、さらに株価が上がるなんてこともあるでしょう。


こうしたチャンスが株式にはあるので、一切投資しないというのはそのチャンスを逃すことになりかねません。

少なくとも25%、原則50%は株式に資金を回すのが良いでしょう。



防衛的投資家の基本方針

  • 常にある程度の資金を債券に投資して、同様の資金を株式にも投資することである。
  • いずれにしても、債券と株式を半々で持つというポリシーを維持しながら、時によっては25%から75%の間で調整するのが正しい方針である。

以上のことから、ある程度は株式に投資した方がいいでしょう。

本書が最初に述べている通り、債券と株式で半々で持つのを原則として、市況に応じて25%〜75%で変動させていくのが良いと勧めています。


では日本国内ではどうでしょうか?

優良債券(20年物AA社債)の利回りは2.231%、プライム全体の株式益回り5.65%(2024/02/06時点)です。
https://www.b-trust.co.jp/pdf/taikyu/shasai.pdf
国内株式指標 :株式 :マーケット :日経電子版


日本ではマイナス金利解除が間近と言われているものの、現時点では金融緩和の真っ只中にあるので、金利は低い位置で這っています。(とはいえ長期金利は上昇していますが)

国内株式は債券より明らかに魅力的といえるので、株式に注力するのがいいと言わざるを得ません。


しかし、配当と再投資による株価上昇は保証されているものではありません。

またアメリカの状況も考えると、債券は魅力的な位置にあるかもしれません。


したがって、ここはやはり原則通り、債券と株式を半々で持つのがいいと個人的には思います。



防衛的投資家が買う銘柄

  • 投資家は新たに売り出された株や債券、またはどのような種類であれ「ホット」な、つまりすぐ儲かると勧められた株や債券を買ったところで、平均的な成果以上を望めないのである。
  • 防衛的投資家は、長期にわたって収益を上げている実績があり、財政状態の良い優良企業の株式しか買うべきではないのだ。

では防衛的投資家は何を買えばいいのでしょうか?


まず避けなければならないのが、新たに売り出された株式や(中長期)債券です。

これらは売買タイミングをしっかりしないと、もれなく損失を被ることになります。


売買タイミングが大事という意味では、「人気株」も避けなければなりません。

一時的に高騰する可能性もありますが、その分リスクが大きいです。

2度と戻らない銘柄も数多く存在しているので、防衛的投資家には向いていません。


第14章で詳しい条件が書かれていますが、防衛的投資家は、長期にわたって収益を上げていおり、財務状態の良い大企業の株式を買うことを推奨しています。

債券については短期債であれば額面で、中長期であれば割安価格で買うといいでしょう。




まとめ

  1. われわれは防衛的投資家を、安全かつシンプルな投資を好む人と定義してきた。
  2. まず超優良債券と主要株式銘柄に分けて投資するべきだということ。
  3. 次にその際、債券の割合は25%以上、75%以下で、残りを株で保有するということ。
  4. さらにシンプルなのは、この2つを半々で保有するという選択である。
  5. 投資家は新たに売り出された株や債券、またはどのような種類であれ「ホット」な、つまりすぐ儲かると勧められた株や債券を買ったところで、平均的な成果以上を望めないのである。
  6. 防衛的投資家は、長期にわたって収益を上げている実績があり、財政状態の良い優良企業の株式しか買うべきではないのだ。

おわりに

日経平均株価は4万を超え、これからも伸び続けるかという場面で冷や水を浴びせるニュースが入りました。

そして木曜には、大物投資家cis氏も超長期以外の株式を手放したとポストしています。


こうした大口投資家が相次いで売却を進めているということは、裏を返せば大衆が株式を買い進めていると言えます。

靴磨きの少年ではありませんが、相場の終わりが近づいているのかもしれません。

そのため本書が言うように、株式にフルベットするのではなく、ある程度は債券や預金にも資金を振り向けておくと良いでしょう。

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