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賢明なる投資家第2章①〜インフレーションと投資

インフレーションとの戦いは継続的かつ周期的に起こっています。

今回はインフレーションと投資との関係について見ていきます。

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はじめに

  • 過去のドル購買力の低下と、とりわけ将来さらに下落することへの恐れ(投機家にとっては望むところだが)は、ウォール街の考え方に大きな影響を与えている。
  • 一定額の所得しかない人々は物価が上昇すれば生活が苦しくなるのと同様に、一定のドル資金しか持たない人々にも同じことが言える。
  • 一方、株主にとってドル購買力の低下は、配当金と持ち株の価格上昇によって相殺される可能性がある。

インフレーション(以下、インフレ)とそれへの対処は、人々の大きな関心の的になっています。


インフレが起こると、お金の価値は相対的に低下するため、低所得者や貯金支持者にとっては生活が苦しくなります。

他方で株主にとってお金の価値の低下は、配当金と株価の上昇によって相殺される可能性があり、資産を持つものは救われると言うウォール街の論理です。



本章の目的

  • 本章ではインフレ要因に対するさまざまな尺度を用い、ある結論を導く。
  • それによって将来の物価上昇によって投資家が右往左往しないようにはなるだろう。

今回はインフレをさまざまな角度から分析を行い、ある結論を導きます。

この結論によって、将来のインフレ懸念に対して投資家は右往左往しないようになるでしょう。



インフレの歴史

  • 他の金融分野の問題と同様に、この問題に対して、将来の方針を立てる際には、過去の経験から得られる知識に基づかねばならない。
  • 過去にインフレはあったーそれもたくさんーということである。
  • 最も高いインフレ率は1915〜20年までの5年間で、人々の生活費はほぼ2倍になった。
  • これは1965〜70年にかけての15%の上昇に匹敵する。
  • この間に物価の上昇・下落の割合はさまざまだが、下落した期間が3回、上昇した期間は6回ある。
  • これを見た投資家は、継続的または周期的なインフレが起こる可能性を考えざるを得ない。

日本では1945 年ベースでみても約 70 倍というハイパー・インフレとなりました。*1

現在は長く続いたデフレからの脱却が果たされつつあり、インフレの時代へ向かおうとしています。


こうしてみると、日本でもやはりインフレは継続的にまたは周期的に起こる可能性を考えた方が良いでしょう。



インフレ率の予想

  • ではインフレ率を予想することは可能だろうか?
  • 過去20年間における比較的一貫した記録からヒントを得るというのは賢明なことではないだろうか。
  • この間の消費者物価指数の年平均上昇率は2.5%であるのに対して、1965〜70年にかけては年4.5%、そして1970年の1年間で5.4%である。
  • 政府は大規模なインフレには断固とした措置を講ずるという公式方針をとっており、連邦政府の方針によってすぐに効果が現れるというよりも将来にその効果を発揮すると信じるだけの理由は確かにある。
  • そこで投資家が将来のおおよそ(確実性からは程遠い)インフレ率、例えば年率3%という数字を基に考え(1915〜70年までの平均は年2.5%であった)、決定するのは理にかなっている。

大きなインフレは政府や中央銀行に退治されることから、ある程度のインフレ率は予想できると考えて良いでしょう。

現に中央銀行インフレターゲットを定めており、インフレ率をある程度操作しようとしています。


日本の場合は2%とされていますので、予想インフレ率は2%前後を目安にすると良いでしょう。



インフレと投資

  • このような物価上昇はどのようなことと密接にかかわっているのだろう?
  • それは生活費が上がり(年平均3%のインフレ)、現在(1971年)、優良非課税中期債(約6%)から得られる収益の約半分を消費してしまうことだ。
  • これは深刻な購買力の低下につながるが、大げさに考えすぎる必要はない。
  • なぜならこれは、投資家の資産の本来の価値や購買力が何年にもわたって減少するという意味ではないからだ。
  • もしもたとえ年率3%のインフレがあったとしても、税引き後利息収入の半分を費やすだけで、この購買力は完全に保てる。

債券で増えたお金の範囲内で、インフレによって生活費が上がった分を十分回収できると計算されています。

つまり投資によってインフレにも耐えられる、というわけです。



株式投資はインフレに強かったのではないか?

  • 1970〜1971年にかけて、優良債券は空前の収益率を記録しているにもかかわらず、投資家は優良債券以外のものを購入または保有することで、より多くの収益を得ると確信できるのだろうか?
  • 例えばすべて株式で運用する方法は、債券・株式の分散運用よりも好ましくないのか?
  • 普通株というのは本質的に、インフレに対する保護機能があるのではないか、そしてそれは何年にもわたって債券よりも多い収益をもたらすことがほぼ確実なのではないか?
  • われわれの55年に及ぶ研究から、株式は債券よりも投資家にずっと良い思いをさせてくれたのではなかったか?

では株式投資はインフレに強いという説はなんだったのでしょうか?

特に1970〜71年にかけては、優良債券の利回りはとても魅力的だったため、なおさら株式よりも債券で持った方が良かったのではないかという疑問が生じます。



将来は誰にもわからない

  • 事実、普通株は過去、長期にわたり債券よりも多くの収益を上げてきた。
  • (しかし)今後も普通株は過去よりも多くの収益を上げるかもしれないが、それは決して確かなものではない。

2005〜21年の推移でも、株式は債券よりもずっと多くの収益を上げています。

出所:日興アセットマネジメント

上のグラフによれば、2005年を100とすると、先進国株式は先進国債券と比べて2倍強の収益を上げています。

しかし、現在のアメリカの債券利率はさらに高いです。

今後、普通株はさらにいい値動きをすると信じるに足るだけの理由はあるでしょうか?


本書の答えは100%ノーとしています。

今後もたしかに普通株は過去よりも多くの収益を上げるかもしれませんが、それは決して確かなものではありません。



インフレと普通株

  • ここで投資成果にからむ二つの異なる時間的な要素を取り上げておく。
  • 第一の要素は、今後25年くらいの長期的未来に何が起こりうるかということ。
  • 第二の要素は、今後5年以内の短・中期的将来に、投資家にー財政的にも心理的にもー何が起こりうるかということ。
  • 投資家は、考え方、希望、不安、達成感や不満、そしてとりわけ次に何をすべきかという決定を、投資人生を回顧することからではなく、年一年と積み重ねる経験によって導き出すのだ。
  • この点について、われわれは断言できる。インフレ(またはデフレ)状態と、普通株の株価・収益変動の間には密接な関係はない。

ここで言いたいのは、過去の歴史を振り返るのではなく、将来何が起こりうるかという点で投資行動は決定されるということです。

いかに過去に普通株の成績が優れていようとも、未来の成績にはなんの関係もありません。


またグレアムは、普通株の株価・収益上昇とインフレには密接に関係していないと断見しています。

これは1966〜70年まで、生活費は22%上昇したものの、株式収益や株価は1965年以来、全体的に落ち込んでいた例を挙げています。

またその5年後は、インフレはあまり進まなかったのに対して、株式収益は目覚ましい上昇を見せたという逆の現象さえ起こっています。



まとめ

  1. 継続的または周期的なインフレが起こる可能性を考えざるを得ない。
  2. 投資によってインフレにも耐えられる
  3. 今後も普通株は過去よりも多くの収益を上げるかもしれないが、それは決して確かなものではない。
  4. インフレ(またはデフレ)状態と、普通株の株価・収益変動の間には密接な関係はない。

おわりに

世界ではインフレとの戦いが続いています。

インフレによって生活は苦しくなりますが、投資によって耐えられるという検証結果は励みになりそうです。

次回はインフレにどうやって対処するか見ていこうと思います。

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