しかし現実には、その予測は極めて難しく、多くの投資家が思うような成果を上げられていないのが実情です。
成長株の「資本化乗数」
- 証券アナリストたちが株式評価について記した文章は、ほとんどが成長株の評価に関するものである。
- 彼らが提示するさまざまな方式をわれわれが研究した結果として得られた、成長株の評価に関する極めて単純化した数式を読者に示したいと思う。
- この数式の意図は、さらに精巧な数式を用いたときに得られる結果と非常に近似した値を得ることである。
- 価値=現在の(標準的)収益 × (8.5+予想年間成長率 × 2)
- 成長率に関しては、その先7年から10年後にかけての予想値を用いること。
- 注意すべき点は、われわれがこれを成長株の「真の価値」を測るための公式として読者に勧めているわけではないということだ。
- これはあくまでも、支持者が多い複雑な数式を用いた場合の結果に近い値を導くためのものである。
『賢明なる投資家』では、成長株の評価について、シンプルな近似式が紹介されています。
価値 = 現在の収益 ×(8.5 + 2 × 予想成長率)
この式は、複雑な評価モデルの結果を簡略化したものに過ぎません。
つまり「真の価値」を導くための公式ではなく、あくまで目安です。
重要なのは、このような式が存在することではなく、成長株がどれほど過大評価されやすいかを理解することにあります。
なお、成長株に投資する際には、本書とは別のアプローチが必須になります。
そこでおすすめなのが『オニールの成長株発掘法』です。
当ブログでも扱っていますので、ぜひチェックしてみてください。
gyatuby.hatenablog.com
成長率は必ず過大評価される
- 高い成長を期待されている株を評価する場合、現実に達成される成長率を予想しようとすれば、必然的に低目に見積らざるを得ない。
- 実際、もしある企業が無期限に8%以上の成長を続けるとすれば、計算上では、いくらの株価が付こうと高すぎることはないということになってしまうのである。
成長株の評価で最大の問題は、「将来の成長率」です。
仮に企業が長期にわたり高成長を続けると仮定すると、理論上はどんな株価でも正当化されてしまいます。
しかし実際には、
- 成長は必ず鈍化する
- 競争や市場環境で失速する
つまり「高成長の持続」は前提として成立しません。
したがって、現実的な分析では成長率は控えめに見積もる必要があります。
安全域
- こうしたケースにおいて、価値の評価計算の際に取り入れるべきものは安全域の概念だ。
- 安全域を設けることによって、たとえ公式が導き出した成長率よりも実際の成長率の方がかなり低くなったとしても、その買い物に課せられた目標(1963年には、将来全体収益が年率7.5%)をクリアできるであろう。
こうした不確実性に対応するために重要なのが「安全域」です。
たとえば、
- 期待成長率:8%
- 実際の評価:3%で計算
といったように、あえて保守的に見積もります。
これにより、
- 予想が外れても致命傷にならない
- 投資リターンの下振れを防ぐ
という効果が得られます。
成長株に「正解の公式」は存在しない
- 年間予想成長率が8%以上といった高成長企業を評価する方法は、現実には存在しない。
- 現在、収益および将来収益の双方に対する適切な乗数について、アナリストが実際的な数値を割り出すことは不可能である。
結論として、成長株を正確に評価する万能な公式は存在しません。
その理由は明確です。
- 将来の収益が読めない
- 金利の変動が読めない
- 市場の期待が常に変化する
特に金利は、株価評価において極めて重要な要素です。
将来キャッシュフローの現在価値は、金利によって大きく変わるため、
金利予測が不確実である以上、評価の精度にも限界があるのです。
警告
- 警告。以上のデータは、例証自体を目的として取り上げた。
- 証券分析に際しては、対象とするほとんどの企業に関する将来成長率の見積もりが欠かせないからである。
- 読者は、このような将来予測を鵜呑みにしたり、逆にいえば、予想が現実化したりそれ以上や以下となった場合、将来株価がそれに沿った形で推移するなどという誤った考えを持ったりしてはならない。
繰り返しになりますが、成長株の今後の株価を予測することは困難です。
それは将来成長率の見積もりが必要であり、この見積もりが当てにならないことが多いからです。
したがって、証券アナリストが予想する成長株の株価を鵜呑みにして、株を売買したり、保有したりしてはいけません。
なぜそれでも予測が行われるのか
- 予想将来利益を軸にした、「科学的」あるいは少なくとも合理的と言える株の評価法とは、将来的な金利変動を考慮に入れたものでなければならない。
- 予想収益や予想配当の現在価値は、今後金利の低下が見込まれる状況下よりも、金利上昇が見込まれる状況下の方が小さくなる。
- 信頼に値するような将来金利の想定は非常に困難であり、近年、長期金利が大幅に変動していることからも、予測は行き過ぎたものとなりがちだ。
- よって、いまだ適切なる公式が発明されていないようなので、古い公式を今なお用いているにすぎないのである。
それでも証券アナリストが成長株の予測を行うのは、
「他に方法がないから」
というのが実態に近いでしょう。
将来収益をベースにした評価は一見合理的ですが、
- 前提(成長率・金利)が不確実
- モデルが精緻になるほど誤差も増える
という構造的な問題を抱えています。
投資判断としてどう向き合うべきか
以上を踏まえると、成長株投資で重要なのは次の2点です。
- 目標株価やアナリスト予想を鵜呑みにしない
- 常に保守的な前提(安全域)を置く
成長株は魅力的である一方、
「期待の崩壊」がそのまま株価下落につながる資産でもあります。
まとめ
- 成長株の評価を定量的に正確に行うことは困難
- 将来予測(成長率・金利)は本質的に不確実
- 安全域を設けることがリスク管理の鍵
おわりに
一般的に、金利が低下すると成長株が優位になると言われます。
しかし実際には、
- 景気動向
- 金利の方向性
- 市場心理
が複雑に絡み合うため、単純な判断は危険です。
そのため私は現在、バリュー株中心のポートフォリオを維持しています。
成長株へ積極的に資金を振り向けるのは、
市場の期待が一度大きく剥がれた局面で十分でしょう。