公益事業債は「安全資産」として長く信じられてきました。
しかしグレアムは、その名称の乱用や計算上のごまかしに早くから警鐘を鳴らしています。
本記事では公益事業債の落とし穴と、投資家が本当に見るべき点を整理します。
公益事業債
- 公益事業債の人気が高まった1926〜29年には各社の債券が続々と発行されたが、それと比例してそれらの質は低下し、また販売会社の販売方法も節度がなくなっていった。
公益事業債は本当に「安全資産」なのか——グレアムはすでに100年前にこの神話へ警鐘を鳴らしていました。
公益事業債はその事業の安定性から人気がありましたが、序文にも説明があったように徐々にその債券の質は低下していきました。
「公益事業」の乱用
- 投資という観点から見ると、公益事業の最も重要な条件はその「安全性」である。
- その裏付けとなるのは、まず第一に多くの顧客に対して不可欠なサービスを独占的に提供していることであり、もうひとつは投下資金に対して十分な収益を保証する認可料金制である。
- しかし、こうした安定性も絶対的というよりは相対的なものであり、通常の企業と同様に世の中の大きな変化から逃れることはできない。
そもそも公益事業とは何かについて定義すると、一般的には国の認可や規制の下に国民に必要なサービスを提供する事業と言えるでしょう。
これを投資の観点から見ると、公益事業の最も重要な条件はその「安全性」にあります。
しかし、こうした安定性も他の事業よりかは安定しているという意味であって、世の中の大きな変化からは逃れることはできません。
例えば、電力会社は1918〜20年の戦時インフレ期において、人件費や原材料費の高騰とそれを吸収するための料金の値上げの遅れという大きな打撃を受けました。
擬似公益事業
- しかし、公益事業債の発行が絶頂期を迎えていたころ、投資銀行がこの人気の高い名称を公益事業らしき会社の債券を販売するために乱用した結果、それらの会社は「擬似公益事業」という異名で呼ばれるようになった。
- 製氷、タクシー、冷蔵会社などにも一般投資家の関心が向けられ、それらの会社の債券は公益事業債としてもてはやされた。
公益事業の定義が曖昧になり、投資銀行はこれに漬け込んで「擬似公益事業」の債券を発行して一般投資家に売りつけるようになりました。
これらの企業は競合性があり、安定には程遠いでしょう。
カバレッジを計算するときには減価償却費をほとんど控除しない
一般的なインタレスト・カバレッジの計算方法であれば、分子に当たる営業利益は減価償却費控除後の金額で計上されるため、今では特に問題にならないかと思います。
まとめ
おわりに
かつては「東京電力の社債を買っておけば安全だ」と考えられていた時期がありました。
電力会社は公益性が高く、収益も安定していると見られていたため、社債投資の代表的な安全資産と考えられていたのです。
しかし、東日本大震災をきっかけに状況は一変しました。
原子力発電所事故による巨額の損失と不透明な将来見通しを受けて、東京電力の信用格付けは急低下し、社債価格も大きく下落しました。
この展開を事前に正確に予想できた投資家は、ほとんどいなかったのではないでしょうか。
「安全」と思われていた企業であっても、想定外の事態が起これば信用力は一気に揺らぐという現実を、多くの投資家が突きつけられました。
この経験から学べるのは、社債投資においても分散投資が欠かせないという点です。
いくら信用力が高いとされる発行体であっても、一社に集中して投資することはリスクを高めます。
株式投資と同様に、社債投資でも「安全そうだから大丈夫」と過信せず、複数の発行体や条件に分散させる姿勢が重要だといえるでしょう。
↓押していただけると更新の励みになります。