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賢明なる投資家第7章②〜積極的投資家による割安株

バリュー投資といえば、割安株を購入することにあります。

今回は積極的投資家であれば、購入を検討できる割安株カテゴリーを見ていきましょう。

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普通株の売買(前回)

  • 積極的投資家が普通株を売買するとき、以下の4つの行動が特徴的に表れる。
  1. 相場が下がっているときに買い、逆に上昇しているときに売る(前回)
  2. よく吟味した「成長株」を買う(前回)
  3. 様々なタイプの割安株を買う(今回)
  4. 「特別な状況」下の株式を買う(次回)



3:割安株を買う

  • 投資において、長期的に平均以上の成果を得るためには、次の二つの観点を考慮に入れた選択もしくは運用ポリシーが必要となる。
  1. 客観的かつ整合性のある基準からみて、根本的に堅実であること
  2. 大多数の投資家や投機家のやり方とは異なっていること

グレアムの経験と研究から、上記の基準を満たす割安株の三つの方針を紹介します。

これらの方針は互いに性質が異なるため、それぞれのやり方を試みるためには個別の知識と気質が求められます。



①比較的人気のない大企業

  • 急成長していたり、何らかの理由で魅力がある企業の株式を過大評価する習性が市場にあるとすると、論理的には、停滞しているために注目を浴びることのない企業の株式は、少なくとも実際よりも過小評価されると考えられる。
  • ここで積極的投資家にとって一番重要なことは、一時的に人気の停滞している大企業に投資を集中させることである。
  • 小企業のなかにも同様の理由で過小評価されていて、時がたてば収益も株価も上がる企業も多くあるだろう。
  • しかし小企業は収益が全くのゼロになる危険があり、また収益が上がったとしても市場から無視され続ける危険性もある。

大企業の目安は、改訂版である「新賢明なる投資家」では、時価総額1兆円が例示されていますが、自分の常識で大企業と思えるのであれば、その銘柄は大企業でも構わないと第5章でも述べています。

ここで積極的投資家が投資するのは、一時的に人気の停滞している大企業です。

例えば「事故は買い、事件は売り」と言われるように、事故で一時的に下落した銘柄を狙って投資する手法が考えられます。

また一時的に業績が不振となった時も、同様に業績が再び回復することを祈って投資することも検討しましょう。


なお、中小企業でも同様の理由で過小評価され、時間が経てば収益も株価も上がる企業はもちろん存在します。

しかし、中小企業は機関投資家らの注目が集まりづらく、大企業に比べて見直し買いが入りづらいです。

また中小企業の場合は収益がゼロになる危険もあり、仮に収益が上がったとしても市場から無視され続ける危険性もあります。



大企業の二つのメリット

  • よって大企業にはメリットが二つあるといえる。
  1. 豊富な資本と頭脳があるため、逆境を乗り切り、再び十分な収益を得られる状態に戻れる
  2. 市場はこれらの企業が何らかの向上を示すと、きちんとそれを反映する

小企業は上記のメリットがなく、人気がなくなると二度と株価が戻らない危険性が少なくありません。

繰り返しになりますが大企業には機関投資家などが注目しているため、再び投資に値すると判断されれば資金が戻ってくる傾向にあります。

この戻りを狙って投資するのが、比較的人気のない大企業に投資するメリットになります。



②割安証券の購入

  • われわれが定義する割安証券とは、詳細に分析した結果、現在の価格よりも大幅に価値が高いと思われる銘柄であり、普通株だけではなく、額面割れしている債権や優先株も含まれる。
  • この定義をできるだけ正確にするため、その価値が価格と比較して、少なくとも50%以上高いものだけを、「割安」銘柄と呼ぶこととする。
  • 一般的に相場が低迷している時の普通株の大部分は割安株である。

割安証券はバリュー株投資の本命といえるでしょう。

ファンダメンタル分析を行い、本源的価値と比べて価格が安い普通株優先株、債券を狙っていきます。


目安は価格が価値より50%以上安くなってるバーゲンセールです。

普通株が見向きもされない時は、その大部分が割安株となることが少なくありません。

コロナショックの時には、そうした銘柄が大企業でさえ溢れていました。



割安株を見つけ出す2つの方法
  • 第一に、見積もりによる方法。
  • これは主に将来の収益を見積もり、それにそれぞれの株に当てはまる要因を掛け合わせていく方法である。
  • この結果出た数値が市場価値を十分上回るもので、投資家が自分のとった方法に自信が持てるなら、それは割安株といえる。
  • 第二は、その事業者にとっての価値を計る方法である。
  • この価値もまた主に将来の収益見積もりによって決まることが多いので、結果は第一の方法と同じである。
  • しかし第二の方法では資産の換金価値、とりわけ純流動資産、つまり運転資本により注意が払われる。

第一の方法は、証券分析ではよく行われる方法といえます。

例えば小売業であれば、販売個数や価格、来店人数や客単価など、それぞれの銘柄に当てはまる要因を予測して掛け合わせていきます。

この予測数値に投資家が自信を持っているのであれば、求められた価値と比べて株価が安いかどうか検討します。

なおこの方法での見積もりには予測が外れる危険性もあるので、あまり当てにしないよう後に注意されています。


では第一がダメなら、第二の方法は少し読んでもよくわかりませんが、注目したいのが純流動資産、つまり流動資産から流動負債を差し引いた額です。

この資産額が株価と比べて安いかどうか検討していきます。

こちらは前書「証券分析」で詳しく解説されていますので、興味がある方はどうぞ。



不人気の株を買う基準

  • しかし残念ながら、収益と価格が下落した後に自動的に上昇しなかった例が多々ある。
  • このような事例から、投資家が株式を購入するときには、収益と価格の下落以外にも判断基準が必要だということが分かる。
  • 投資家は少なくとも過去10年かそれ以上にわたってその企業が安定した収益を上げていること、言い換えれば赤字の年がないことに加え、将来起こりうる低迷に備えた十分な規模と財務的な力があることを確認しなければならない。
  • よって理想的なのは、過去の平均収益、平均株価収益率と比較して大幅に安い優良大企業の株式を買うことである。

ところが収益と価格の下落した後に、二度と株価が戻らない例はいくつもあります。

このことから、投資家は収益と価格の下落以外にも判断基準が必要になります。


上記で述べられている条件については、詳細は第14章をご覧ください。

防衛的投資家のための判断基準ですが、割安株を買うという点では共通しています。

あとは50%以上のバーゲン価格で買うという点が、積極的投資家に求められる基準です。



運転資本以下の価値の株式

  • 最も見分けやすい割安株は、優先負債を全て差し引いた後の純運転資本以下の価格で売られている株式である。
  • つまりこの株式の購入者は、建物や機械などの固定資産や、その企業ののれん代といった無形資産に対して一銭も払わないで済む。

貸借対照表に記載されている項目のうち、流動資産から負債を差し引いて計算された純運転資本と価格を比べる手法で、先ほどの第二の手法になります。

この計算では、建物や機械などの固定資産や、企業ののれん代といった無形資産に対してはゼロと計算するので、かなり保守的です。


こうした銘柄はネットネット株とも呼ばれていますが、大きな失敗はない分、成功例は少ないです。

なぜならこの投資手法では、企業内の資金と頭脳を活かして業績が上向く可能性に賭けているためです。

そのため将来性があるかどうか自分の目で確かめ、そして市場では無関心にさらされているなか、いつか注目される時を夢を見て待ち続ける忍耐力が求められます。


この投資法で私が成功したのは、6763帝国通信工業、6249ゲームカード・ジョイコです。

他にも20銘柄監視しましたが、成功するのは4分の1程度でした。

割安で買っているため、下げ幅には限度があり大きな失敗にはならないものの、この投資手法で成功するには、何年も市場の無関心に我慢して持ち続ける忍耐力が、本当に必要になります。



割安株を購入する際の注意点

  • 過小評価されている割安株を見極め、それを利用することによって安全に高収益を得られる方法だと断言できる。
  • しかし1957年以後、市場が全体に上昇したためにこのような機会は非常に限られ、入手できたものの、ほとんどがわずかな利益しか出さず、損失さえ与えるものもあった。
  • 1969年〜70年にかけての市場の下落は、時価総額が「総流動資産以下」の株という新たな産物が生まれた。(第15章)

詳しくは第15章で述べていますが、市況が好調なときはほとんど買い物できず、売れ残っているのはクズ株だけという事態になります。

そのため買えなくても、無理に買うなんてことはしないで下さい。

チャンスの時には、少なくとも数銘柄から選べる自由があります。



③二流企業の割安株

  • われわれは二流企業を、重要産業における主要企業以外の企業と定義した。
  • よって二流企業は重要産業分野においてその規模は小さいが、それ以外の分野ではトップ企業という場合もある。
  • 例外として、成長株としての地位を確立した企業は、通常「二流」とはみなさない。
  • 実際、典型的な中堅上場企業といえども、普通の個人企業と比較すれば大企業なのである。
  • こうした企業が営業を続け、米国経済の特質である変動を乗り切りながら、相対的にはその投下資本に対して大きな利益を上げることができない理由など、どこにもない。
  • 二流企業に対する株式相場の見方は非現実的になりがちで、その結果大幅に過小評価された割安株を生み出すことがわかる。

一流の銘柄は、規模の大きさが業界内で上位4分の1、あるいは3分の1以内に入る企業を指します。(第5章)

二流銘柄は、一流以外の銘柄であって、重要産業における主要企業以外の企業と定義しています。

ニッチな産業で業界トップである企業もこれに含まれます。


二流企業であれば、腐っても中堅企業であるため、助かることが少なくありません。

大衆は一流銘柄を好みがちなため、中にはお買い得な銘柄が現れることがあります。



二流企業で利益が得られる理由

  • 二流株を割安価格で買って莫大な利益を得るパターンはいろいろある。
  1. 配当が比較的高いこと
  2. 再投資された収益が株価より多く、それが最終的に株価に大きく影響すること。
  3. 強気相場は普通、低価格の株式に対して最も有利に働くため、典型的な割安株が少なくとも妥当な水準まで引き上げられる傾向がある。
  4. 相場が比較的特色のない期間ですら絶えず株価は調整されているので、過小評価されている二流株も、少なくとも正常と思われる水準まで上昇すること。
  5. 企業の業績が芳しくないときには必ず何らかの要因があるが、この原因は多くの場合、何らかの新しい条件または新しい経営方針または経営者交代などによって是正されるものであること
  6. さらに近年、重要かつ新たな要因として、大抵の場合は経営多角化計画の一環としての、大企業による小企業の吸収合併が挙げられる。

安く買って高く売る以外にも、二流企業で利益が得られるパターンはいくつかあります。


一つには配当が高いこと、配当だけに釣られて買うのは避けたいですが、他にも魅力的な点があれば買わない手はありません。

また収益の成長が、市場で評価されていない場合もチャンスがあります。

株価収益率も低くなるため、ひとたび正当な評価がなされれば、株価の大幅上昇が期待できます。


そして最近では有望だけど評価されない銘柄は、TOBによって報われることもあります。



割安な債券や優先株

  • 1970年よりも金利が低いとき、割安証券の分野は大きく額面割れした債券や優先株にまで拡大された。
  • この分野の相場の下落には行きすぎの傾向があり、全体的に見れば、詳細かつ勇敢な分野が報われるといえる。

金融緩和している今の日本には当てはまりませんが、金利の下落によって大きく額面割れした債券を手に入れるチャンスも生まれます。

米国債券も投資対象としている投資家には、今後チャンスが訪れるのかもしれませんね。




まとめ

  • 積極的投資家による割安株には次の3つが考えられる。
  1. 比較的人気のない大企業を買う
  2. 運転資本以下の価値の株式を買う
  3. 二流企業の割安株を買う

おわりに

この中で一番やりやすいのは、比較的人気のない大企業銘柄を買うことでしょう。

後に説明される具体的な基準に基づいて分析すれば、比較的簡単に選べます。


また「一時的に」不人気の銘柄を選ぶには、不祥事を起こした銘柄を選ぶのも一手です。

不祥事の影響をある程度推し測ることができれば、元の人気に戻った時に利益を得ることができます。

最近でいえば、ブックオフが当てはまります。

従業員不正は基本的には金額的影響が大きくないため、狙い目かもしれません。

とはいえ、従業員不正で決算延期は珍しいケースなので、しばらく様子を見ます。

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