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賢明なる投資家第5章③〜リスクと安全

リスクと安全という言葉は、バリュー投資では少し違った使われ方をします。

今回は投資のリスクや安全について学んでいきましょう。

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「リスク」の概念について

  • 良質の債券は良質の優先株よりもリスクが低く、その良質の優先株は良質の普通株よりもリスクが低いと、昔から言われてきた。
  • このことから、普通株は「安全」ではないという偏見が広まり、そうした偏見は、連邦準備制度理事会による1948年の調査にも表れている。
  • 「リスク」と「安全」という単語が証券に関してそれぞれ二つの異なった意味で用いられ、その結果、思考に混乱を招いているということを指摘したいと思う。

グレアムが言う「リスク」と「安全」は、一般的に使われるものとは異なっています。

一つずつ見ていきましょう。



一般的なリスクと安全

  • 債券は、利息や元本の支払いが滞れば安全でないことがはっきりと証明される。
  • 同様に、優先株の場合、あるいは普通株であっても、所定の配当が支払われ続けると言う期待で買った場合、減配になったり無配になることがあれば、それは安全ではないということになる。
  • 価格が取得原価を大きく下回ったときに投資家がそれを売却しなければならない可能性が高いとすれば、その投資もまたリスクをはらんでいるといえる。

債券の場合、利息や元本の支払いが滞ることがあれば安全とはいえません。

また、配当を期待して普通株を買った場合、減配や無配になればまた安全とはいえません。

そして、株価が勝った値段よりも下回った時に投資家がそれを売却しなければならない可能性があるとしたら、その投資はリスクをはらんでいるといえます。



含み損は幻

  • しかし、証券価格が下落する可能性がある場合に、その下落が周期的かつ一時的なものであり、またそうした状況下でわざわざ売却する必要性がないようなときでも、リスクという概念が拡大されて用いられることが多い。
  • こうした可能性は連邦貯蓄債券以外のどんな証券にもつきものであり、一般的には優先証券よりも普通株の方が高いものである。
  • だがこれは真の意味でのリスクではないと、われわれは考える。

しかし、含み損を抱えても売らないと決心しているのであれば、含み損は幻といえるかもしれません。

ただしこれはその下落が周期的かつ一時的、つまりいつかは戻ってくると確信がある時だけです。



真のリスクと安全

  • 善意の投資家は、保有株が値下がりしたからといってカネを失うわけではなく、ゆえに下落の可能性があるとしても真の損失リスクを負っているとはいえない(これについては、第8章で説明する)。
  • きちんとした銘柄選択がなされた株式ポートフォリオが、かなりの期間にわたって満足のいく利益を上げているとすれば、そのポートフォリオの「安全」は証明されたといえる。
  • 投資期間中に市場価値は変動するが、購入価格を下回る株価のときに売ったりはしないだろう。
  • リスクという概念を、現実の売却によって損失が確定した場合、投資先企業の経営状況が著しく悪化したために株価が下落した場合、そしてこれが恐らく最も多いパターンであるが、証券の内在的価値に照らして高すぎる株価で買い付けた結果の値下がりに絞って用いればよいのである。

含み損になったからといってお金を失うわけではなく、含み損になる可能性があるとしても、含み損に耐えるのであればそれは真のリスクとはいえません。

きちんと価値ある銘柄に分散投資を行っており、株価は価値に追いつくというバリュー投資の考えに限っていえば、安全ともいえるでしょう。

つまり、真にリスクがあるという場合は、本源的価値が悪化したため株価が下落したとき、そして最も多いのが、人気株といった価値に比べて高すぎる株価で買ったために値下がりとなったときに絞るのがいいと述べています。


とはいえ含み損は現在の損失です。

日経平均はバブル後最高値を34年ぶりに更新しましたが、極論でその時に普通株を買っていたとしたら、34年も含み損が消えるのを待たなければいけませんでした。

そんな悠長に待っている間に、儲けるチャンスはいくらでもあったはずです。


そのため付け加えるとしたら、市況が狂気の時に買わず、価値が株価より安い時に株式を買った場合に限っていえば、確かにリスクは負っていないといえるでしょう。



普通株のリスクとは

  • 多くの普通株は、こうした株価下落のリスクをはらんでいる。
  • だが適切な分散投資がなされた株式ポートフォリオにはこのような本質的なリスクは存在せず、よって単に株価変動という要素をとらえて「危険」だとすべきではない。
  • しかし、内在価値に照らして明らかに高すぎる株価で買ったかもしれないという危険があれば、その後、深刻な値下がりが回復する可能性があったとしても、そこには本質的なリスクが存在することになるのである。

ほとんどの普通株には、株価下落のリスクをはらんでいます。

しかし「適切な価格」で適切に分散投資がなされたポートフォリオであれば、含み損で売却を強制されるわけではないので、いつか株価が価値に追いつくのであれば含み損は幻であり、損失を負うリスクは確かに存在していません。

そのため、単に株価の変動をリスクとして捉えるべきではないのです。


しかし、価値と比べて明らかに高すぎる株価で買った場合には、その後、価値に追いついて株価が値下がりした場合には、たとえ株価が戻る可能性があったとしても、そこには本質的にはリスクが存在しているといえるでしょう。



「財務内容の良い有名な大企業」とは

  • 事業会社の場合で保守的な財務内容と言えるのは、株主資本純資産が、全ての銀行借入までを含めた総資産の少なくとも半分以上のときである。鉄道会社や公益企業ならば、この数字は30%以上となる。
  • 「有名な大企業」という概念は、その業界内で主たる地位を占め、かつ相当の事業規模を有している企業に対して用いられるものだ。
  • そうした企業のほとんどは「一流」といわれ、それ以外の企業の株式は「二流」と呼ばれる。例外は成長株で、通常これらとは別個にランク付けされている。

ではどんな株式をポートフォリオに入れれば良いでしょうか?

その満たすべき条件のうち一つに、財務内容の良い有名な大企業が挙げられています。


「財務内容が良い企業」は、自己資本(株主資本)比率が50%以上である必要があります。

また「有名企業」とは、その業界内で主たる地位を占めてる企業です。

そして「大企業」は、相当の事業規模を有している企業を指します。


以上を総合して、「財務内容の良い有名な大企業」をグレアムは「一流」と称し、それ以外(成長企業を除く)を「二流」と呼んでいます。



一般常識で有名企業であり大企業なら良い

  • 具体性を増すために数字で示せば、今日「大企業」といえるのは、5000万ドル以上の資産を有しているか、あるいは5000万ドル以上の売上がある企業であり、「有名企業」は規模の大きさが業界内で上位4分の1、あるいは3分の1以内に入る企業である。
  • しかし、このような便宜上の基準に固執するのはバカげたことであろう。
  • 投資家が自分自身で定めた基準であっても、それが一般常識の範囲内で「有名企業」であり「大企業」といえるものならば、それはそれでよいのである。

改訂版である『新賢明なる投資家』では、大企業の目安として時価総額100万ドル超を基準として例示しています。

とはいえ、このような数字の基準に固執することなく、自分にとって「有名企業」であり「大企業」であれば、あとは財務状態さえ良ければ一流株として見ても良いと説明されています。



まとめ

  1. 善意の投資家は、保有株が値下がりしたからといってカネを失うわけではなく、ゆえに下落の可能性があるとしても真の損失リスクを負っているとはいえない
  2. 市況が狂気の時に買わず、価値が株価より安い時に株式を買った場合に限っていえば、確かにリスクは負っていないといえる
  3. 財務内容の良い有名な大企業がその候補に挙がる

おわりに

いわゆるガチホのお話ですが、それは再び復活する見込みがある場合にガチホは有効です。

特に成長株だった銘柄は、2度と株価が戻らないなんてのはザラです。

時には損切りも大切になることは、心に留めておいた方が良いでしょう。

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