CAN-SLIMとは、大化け銘柄が持つ7つの主な特徴を、7文字のアルファベットで表したものです。
引き続き、2番目の「A:年間EPSの増加」について扱います。
今回は、PERについてより深く見ていきましょう。
- 前回の記事
- PERは重要か?
- 最高の買い銘柄を逃した理由
- PERの誤った利用法
- 同一業界内の企業の誤った分析方法
- PERが高くても割安だった銘柄の例
- PERが高い銘柄を空売りしてはならない
- まとめ
- おわりに
前回の記事
前回の内容(主にEPS)については下記記事をご覧ください。
gyatuby.hatenablog.com
PERは重要か?
- PERは株価の動きとは関連性がなく、株式の売買判断にはほとんど役に立たない。
- 銘柄選択で最も重要視するべきなのはPERではなく、EPSの変化率が著しく増加しているか減少しているかなのである。
- 成長株のPERは初めはだいたい25~50倍で、それが60~115倍まで上昇する。
PER(株価収益率)とは、EPSに対して株価が割安かどうかを表す投資指標です。
理解していただきたいのが、PERが低い(高い)というだけで、株価が割安(割高)と判断してはいけないということです。
つまりPERが割安(割高)なのにはそれなりの理由があると考えるべきです。
特に成長株では、PERは頼りになりません。
市場参加者が期待している(PERの分母である)EPSが並外れて大きいと、もちろんPERは高くなります。
しかし実際のEPSもまた、ふたを開ければ予想より上振れすることは少なくありません。
すると、分母が大きくなるだけPERは急激に低くなります。
もちろんそれを見越して、EPSの期待値はますます上がっていますので、PERの変動は常に激しくあまり当てにならないことが多いです。
なかにはPER1000倍という銘柄もあります。
しかしこの1000倍も、将来EPSが急増することでPER2桁にまで落ちることは十分あり得るのです。
最高の買い銘柄を逃した理由
- PERが25~50倍以上の成長株を買わないと決めたら、最高の投資銘柄のほとんどを自動的に除外してしまっていたということだ!
- PERはEPSが増加することで現れる末端効果であり、そのために資金力のある機関投資家の買いが集まり、その結果素晴らしい値動きをするのである。
- PERが素晴らしい業績を生み出すのではない。
株価は市場参加者の需給で成り立っており、PERが高くなりがちな成長株は期待が先行し、ファンダメンタルが疎かになりがちです。
PERに夢中になるあまり、未来のGoogleを取り逃しては意味がありません。
そのため、本書ではEPS自体ではなく、EPSの増加率に注目して投資することを推奨しています。
PERだけでトレードしてはいけない
- 市場全体が急上昇する強気相場では、ある銘柄のPERが高すぎるという理由だけで選択肢から外してはならない。
- さらに、PERが低くてお買い得だからという理由だけで株を買っては絶対にならない。
- PERが低いのには、それなりの理由があるものだ。
強気相場では株価が上がるのでPERは高くなりがちです。
この場合もある銘柄のPERが高すぎるという理由だけで、選択肢から外してはいけません。
逆にPERが低くてお得だからという理由だけでも買ってはいけません。
PERが低いのにはそれなりの理由があるのです。
私の黒歴史~やっちゃえ日産
ここで私の黒歴史を紹介しましょう。
逃亡劇を繰り広げたゴーン氏が率いた日産(7201)です。
当時はPER10倍前後、配当利回り5%以上と、株式雑誌には必ず取り上げられるほど注目された高配当銘柄でした。
わたしも、日産が占める自動車業界のシェアが大きかったものですから、魅力的だと思い買い込んでいました。
しかしそのシェア拡大の裏には、多額の販売奨励金がありました。
他にも悪材料はあったかと思いますが、マーケットはすでに知っていたのでしょう。
ゴーン氏の不正が明らかになる前から、株価は不自然に(だけど当時のわたしはPERに注目していた!)高配当利回りを維持していました。
つまり株価は割安で放置されたままでした。
ゴーン氏の不正が発覚すると、株価は下落の一途をたどります。
わたしは株価下落の途中に、たまたま本書を読んでおり、「もしノーポジションならば再び投資したい銘柄か?」と問い直したため、胃はキリキリしましたが損切りしました。
含み損がなかったら、また投資することは絶対にないと信じたためです。
gyatuby.hatenablog.com
日産ではたしていくら損失を出したか、今でもできるかぎり振り返りたくはありませんが、現在でも、私が損切りした価格よりもはるか下で株価は推移しています。
4桁回復どころか半値ですからね…
このようにPERが低いのには理由があるのです。
その理由を探して投資することに納得できなければ、決して投資をしてはいけません。
他にも魅力的な銘柄はきっとあります。
PERの誤った利用法
- PERに頼った分析方法では、基本的なトレンドを見落とす場合がある。
- 市場全体が天井を打っているような状況では、すべての銘柄が値下がり局面を迎えている。
- いくら22倍だったPERが15倍に下がったからと言っても、それを過小評価されている銘柄でお買い得だと飛びつく人は愚かだし考えが甘い。
PERだけで考えるのではなく、テクニカル分析もしっかり行いましょう。
また、先ほどの失敗からもわかるように、ファンダメンタル分析もより深く行い、なぜPERが割安であるか理由を調べることも大切です。
本書では、PERを使用する際の方法として以下を提案してます。
- 成長株が今後6~18カ月の間にどれほどの伸び幅を達成することができるかを、その銘柄の将来の収益の見通しを基に予測するときである。
ただし、こちらは本書の内容だけでは情報量が少なく、実際に活用するにはかなりカスタマイズが必要と思われます。
興味がありましたらじっくりとお読みください。
同一業界内の企業の誤った分析方法
- PERの誤った使用方法として、産業内の銘柄を比較して、最も低いPERで取引されている企業が過小評価されている銘柄であり、ゆえに最も魅力的な買い銘柄だと結論付けることである。
- PERが最低水準にある本当の理由は、だいたい決算結果がひどく悪かったからなのである。
- 景気敏感株の場合、PERはだいたい低めとなり、たとえ好景気でも成長株ほどのPERの拡大を見せることはあまりない。
同業他社分析では、たとえば以下のようなことを分析します。
- 業界全体が好調か否か?その理由は?
- 当社は同業他社より優れているか?その源泉は?
よく出会うケースとしては2番手は割安になります。
しかし2番じゃダメなんです。
競争を優位に行い、将来投資を充実させるうえで、業界最大手の地位は株式市場でも大いに評価されます。
株価はマーケット参加者の意思で成り立つのであって、PERはあくまで指標にすぎません。
これは株式に限らずどんなものでも需要と供給に基づき、その時々に見合った価格がつけられます。
抜け目ない参加者たちから見過ごされているなんて、ほとんどあり得えないのです。
そして株価やPERに近い将来変化が現れたら、その背景をしっかり探りましょう。
企業の経営環境や企業情勢、人々の心理、およびそのほかのファンダメンタルに、きっと変化があったはずです。
PERが高くても割安だった銘柄の例
- 企業規模が小さく革新的な新製品を有する魅力的な企業の成長段階においては、PERが高くても、実際の価値から考えれば低いという場合がある。
- 高いPERの水準を勝手に決め込んでいる投資家は、各相場サイクルに現れる最高の投資機会を逃してしまう。
- 特に強気相場ではそのような偏見があだとなり、文字どおり莫大な損失を被ることになりかねない。
ここでいう損失は実現損失ではなく、機会損失ととらえるべきでしょう。
実際に損をしているわけではないのに、儲け損ねたと思うと心理的に大きな痛手となります。
これが規律を破った無謀な取引を行うきっかけにもなり得るのです。
したがって、私たちは前回と今回で学んだ年間EPSを有効に使うことで、有望な成長株を逃さず投資することを心がけましょう。
PERが高い銘柄を空売りしてはならない
PERだけを理由に空売りを行う。
これは初心者あるあるではないでしょうか。
私もビギナーのときにやってしまいました。
わたしの場合は、ディフェンシブ銘柄(花王とユニ・チャーム)を空売りしました。
ディフェンシブ銘柄は、一般的に長期投資家が好んで投資するものであるため、PERや株価は普段から割高になりがちです。
それなのに私は、PERが高いのになぜ株価は下がらないのだと愚かにも考えていました。
そして、思ったよりすぐに下がらず(むしろ上がりさえした!)煮え切らなくなり手仕舞いしました。
その結果は空売りポジションにつかまったことで、実現損失のダメージを受けただけでなく、ポジションを維持した時間だけ手数料等を積み重ねてしまったのです。
ましてやポジションを別に振り向けていたらという機会損失まで考えれば、PERだけで空売りするのは馬鹿らしかったと言えるでしょうね。
空売りするなら、すぐに下がると思われるものを狙うべきです。
もちろん、オニールの書籍『オニールの空売り練習帖』にも目を通したほうが良いでしょう。
gyatuby.hatenablog.com
まとめ
- 株を買うなら、過去3年連続で大幅にEPSが増加し、さらに最近の四半期でもEPSに力強い向上が見られる銘柄に絞ること。
- この条件は必ず守らなければならない。
おわりに
重要な要素は、投資チェックリストの3つだけです。
しかしこのPERについては、初心者が最初に全面的に信じてしまいがちな指標であるとともに、ベテランになっても向き合い方に違いが出るものといえるでしょう。
どんな武器も使い方によって、毒にも薬にもなります。
少なくとも、何かを盲目的に信じるのではなく、様々な角度から考えられる投資家になりたいものですね。