はぐれ猿でも、投資がいいんだ。

ふりむけばやさしさに飢えた弱肉強食の世界で

賢明なる投資家第4章①〜ポートフォリオ戦略

資産運用をするにあたって、ポートフォリオをどのように組むか考えることはとても大事なことです。

本書でも特に学ぶべきところ、グレアムが提唱するポートフォリオ戦略についてみていきましょう。

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ポートフォリオ戦略

  • ポートフォリオは、通常その所有者の姿勢や性格によって基本的特色が決まる。
  • 最も保守的なものは、貯蓄銀行や生命保険会社、そしていわゆる信託ファンドなどが挙げられる。
  • そしてこのちょうど反対側に位置するのは、魅力ある買い物だと思えばどんな債券や株式でもポートフォリオに加えていく、裕福で経験豊かな実業家である。

ポートフォリオは、運用する目的によって基本的特色は変わります。

例えば生命保険会社は、保険者からもらう保険料を元手に運用するため、守りの運用を長期的な観点でポートフォリオを運用していきます。

他方でリスクを取ることが許されている場合には、株式や債券などを攻めの運用でポートフォリオを運用していくことになります。



期待収益率

  • 期待できる収益率は、むしろ、投資家が自発的に投資のためにどれだけの知的努力を注げるかにかかっているはずだ。
  • 元本の安全を第一に考え、煩わしい努力を嫌う受動的な投資家は、最低限の利益しか得られない。
  • 最大限の利益を得られる可能性があるのは、最大限の知性と技術を駆使する用心深い積極的な投資家なのである。
  • 利回り4.5%の月並みの債券を購入する場合よりも、大きな利益を上げる可能性のある『割安銘柄』を買う方が、かえって真のリスクは低いものである。

一般的にリスクとリターンは比例関係にあり、期待されるリターンはその人がどれだけリスクを取る覚悟があるかに比例するものと考えられています。


しかしグレアムの認識は違います。

期待収益率は、むしろ投資家がどれだけの知識や労力をかけられるかにかかっていると説いています。


ファンダメンタル分析では、財務諸表等を睨めっこして価値ある銘柄を見つけて買い物をします。

そのためある程度の財務知識と時間を要します。


つまり、努力を惜しまなければ、リターンは大きくなるとグレアムは背中を押しているのです。



防衛的投資家のポートフォリオ作成方針

  • 資金を優良債券と優良普通株に振り分けて投資するように述べた。
  • 基本的なルールとして、株式の割合は、最低で25%、最高で75%の範囲内に、すなわち逆に債券の割合は75%から25%の間とすべきであると述べた。
  • その言外の意味は、これら二つの主たる投資媒体への資金の配分は、基本的には50対50にすべきだということだ。
  • 昔ながらの考え方によれば、長引く弱気相場によって株価水準が「割安」となったときには、株式の割合を上げるのが堅実な選択といえるだろう。
  • 逆にいえばこれは、相場水準が危険なまでに高くなったと投資家が判断すれば、普通株の割合を50%以下に下げよということになる。

本書の中で最も大事な要素のひとつである、アセットアロケーション(資産配分)の考え方を示しています。


防衛的投資家は、基本的には優良債券と優良普通株とに半々に分けて投資を行います。

そして長引く弱気相場で誰も普通株に見向きもしなくなった場合、つまり割安となった時には、最大75%の範囲内で普通株への投資を増やすのが望ましいでしょう。

逆に、普通株の熱が狂気に至り、相場水準が危険なまでに高くなったと思えば、普通株の割合を最低25%の範囲内で普通株への投資を減らしていきます。



言うが易し

  • こうした平凡なやり方は、言うは易くとも、いざ実行するのは難しいものだ。
  • なぜならそうしたやり方は、強気相場や弱気相場の行きすぎを生み出している、人間の本質に反しているからである。
  • 株価があるポイントを抜けたらも持ち高を減らし、その後に同様の下げがあれば持ち高を増やすというのは、ごく普通の株式保有者が実行するのは非常に困難なことなのである。
  • というのも、過去の大幅な上昇および下落場面において、彼らはこれとは逆のことを行なってきており、われわれは今後もこうした状況は変わらないと考えているのである。
  • 投資と投機の区別が、かつてそうであったように今日も明確なものであるならば、投資家とは、自分の持ち株を高値のときに愚かに哀れな投機家に売り、株価が下落したところで彼らから買い戻すという、経験豊かで機敏な人々だと定義できるかもしれない。

テクニカル信者は「上がったら買い、下がったら売ります」。

バリュー投資は、人間の心理を分析したテクニカル投資とは逆のことを行うため、いざ実行しようと思うと簡単ではありません。

株価が急降下したときに、落ちるナイフをはたして掴めるか考えればわかることですね。


しかし価値ある買い物だとファンダメンタル分析で判断したら、迷わず掴むのがバリュー投資です。

逆に価値以上に株価が高騰したら、売り抜けることも大事になります。



例えば1971年

  • われわれが常々そう思ってきたように、株価相場の動きが過去の基準で律することができなくなっており、しかも新たな基準がまだ確立されていないとすれば、投資家が普通株保有を最低線の25%近くにまで下げ、その後、最大限の75%まで増加させていくための、信頼できるルールを彼らに対して示すことはできない。
  • 一般論としてわれわれが強く言えることは、投資家は自分の株式ポジションに対してよほどの自信があり、なおかつ1969〜70年に起きた程度の株価下落ならば平静を保てるという確信を持てるのでなければ、投資銘柄のうち株式部分は50%いかにとどめるべきだということだ。
  • だが、50%を大きく割った比率にまで下げた方がよいとアドバイスするのも、同様に難しい。
  • もしもそうアドバイスできるとすれば、それは投資家が現在の相場水準に対して不安を抱いており、株式の比率を資金の例えば25%以下まで下げることによって安心を得られるような場合だけだからである。

グレアムは、過去の動きから強気弱気を判断するのは困難になってきており、新たな基準が確立されていないのであれば、25%〜75%の範囲内でポートフォリオを操作する具体的な基準を示すことができないと述べています。

したがって、基本は普通株と債券それぞれ50%ずつにすることを勧めています。



アセットアロケーション

  • このような理由から、多くの読者に最も単純と思われる50対50の方式を勧めるようになった。
  • この方式の大原則は、債券と株式への資金配分を限りなく均等に近づけることだ。
  • 相場水準の上昇によって普通株の比率が例えば55%になったら、株式ポートフォリオの11分の1を売却し、その分を債券に振り向ければ均衡が取り戻せる。
  • また反対に、株式の割合が例えば45%に下がったなら、債券の11分の1を売却してその分で株式を買い足すわけである。

以上の理由から、防衛的投資家には50対50のポートフォリオをグレアムは勧めています。


では、このルールを適用しているときに、例えば5%株価が上昇したらどうするでしょうか。

その際は株式ポートフォリオの11分の1を売却し、その分だけ債券(預金)を購入して50対50の比率に戻すのです。


この振替タイミングは、5%といった値幅の基準を設けるのもよし、多くの機関投資家と同様に12月末といった期末に行うのも良いでしょう。



50対50の方式の効果

  • このエール大学の例から分かることは、相場に大きな上昇がみられれば、人気を博した定式的アプローチも、致命的というべき影響を受けるということである。
  • にもかかわらずわれわれは、先ほど述べた50対50の定式が防衛的投資家にとっては意味あるものだという確信を持っている。
  • それを実行する人は、少なくとも相場の言動に呼応した行動を取っていると感じることができ、そして最も重要なことは、相場が危険なまでに上昇を続けても、投資家が普通株に入れ込みすぎるのを防げることである。
  • さらに言えば、真に保守的な投資家ならば、上昇相場の局面ではポートフォリオの半分が生み出す利益に満足し、また酷い下落相場のときには、リスクを恐れない他の投資家たちよりはうまくいっているということに慰めを見いだせるであろう。

エール大学では、グレアムと似た定式(普通株の割合が35%)に従って運用を行いました。

しかし強気相場の1950年代の初めには、このルールを守るのを断念しており、1969年には普通株を61%ほど運用していました。


このように相場の心理に左右されないようにするのは、想像以上に難しいです。

その点、グレアムのポートフォリオ戦略は、相場水準に合わせて資産配分をいじったり調整したりすることができるため、相場の心理に流されないメンタルを手に入れるのにとても役に立ちます。



1971年のポートフォリオ

  • 代表的株式銘柄よりも優良債券の方がより良い収益を得られるという現在の状況は、債券の比率を増やすことに対する強い論拠となる。
  • 投資家が株式比率を50%にするかそれ以下にするかを決定するのは、恐らく主に個々人の気質や姿勢次第であろう。
  • オッズだけを重視するような投資家ならば、株式を25%という低い割合にまで下げたいと考えるだろう。
  • 現状況下においては、債券と株式を均衡点の50対50にするのは、ダウ平均採用銘柄の配当率が、例えば債券利回りの3分の2になるまで待とうと考えるからである。

リターンだけを考える防衛的投資家は、リターンの割合に応じてポートフォリオを組むことも考えられます。

1971年においては債券と株式を均衡点の50対50にするのは、ダウ平均採用銘柄の配当率が、例えば債券利回りの3分の2になるまで待とうと考えるでしょう。

仮に配当利回りが4%(ダウ平均900に対し配当36)だとすると、債券利回りが税引後4%(=5.5%✖️2/3)へと下がるか、あるいは債券利回りが下がることなく配当も上がることもないと仮定すれば、ダウ平均が660まで下落する(つまり配当利回りが5.5%=36/660)か、これらのどちらかが起こらなければならないということになります。

また双方が共に半分ずつの変化を示せば、それも同様に「買いポイント」となるでしょう。



まとめ

  1. 基本的なルールとして、株式の割合は、最低で25%、最高で75%の範囲内に、すなわち逆に債券の割合は75%から25%の間とすべきであると述べた。
  2. 基本は普通株と債券それぞれ50%ずつにする
  3. 相場水準の上昇によって普通株の比率が例えば55%になったら、株式ポートフォリオの11分の1を売却し、その分を債券に振り向ければ均衡が取り戻せる。
  4. また反対に、株式の割合が例えば45%に下がったなら、債券の11分の1を売却してその分で株式を買い足す。

おわりに

日本の長期金利もとうとう上昇してきました。

日銀も国債買取の縮小や追加利上げの政策が意識されているようです。


債券の魅力が増せば、株式の魅力は相対的には減少します。

グレアムの教えが活きる時が来るかもしれませんね。

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