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証券分析第6章②〜確定利付き証券の選択②

前回は、確定利付き証券を選ぶ際には、まず元本の安全を確保し、そのうえで限られたインカムゲインを得ることが重要だと学びました。

今回は、実際に確定利付き証券を選ぶ際のポイントを見ていきましょう。

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証券の選択における4つの原則

  • われわれが検討している確定利付き証券の一般的なアプローチとして、個別銘柄の選択でも適用できる次のような4つの原則を提案したい。
  1. その証券の安全性は特定の先取特権やその他の契約上の権利にあるのではなく、すべての責務を履行できるその発行会社の財務能力によって決まる。
  2. そうした能力はその企業の好況期ではなく不況期で明らかになる。
  3. その証券の低い安全性は表面利率をどれほど高くしても補うことはできない。
  4. 投資適格債券の選択は「消去法」の原則に従うとともに、発行会社の定款に記載された条項については厳しい基準を適用すべきである。

グレアムが提言する「確定利付き証券」を選ぶ原則を示しています。

今回はそのうち第一の原則について見ていきましょう。



Ⅰ、第一の原則━━証券の安全性は発行会社の財務能力で決まる

  • これまでは証券の安全性を測る場合には、その証券が先取特権を持つ資産や推定価値が重視されてきた。
  • しかしわれわれの基準によれば、そうした基準は二次的なものであり、最も重視すべきであるのは債務者であるその発行会社の財務力と支払い能力である。
  • もしその会社が債券保有者の財産請求権に応じられなければ、債券保有者はその抵当資産を差し押さえて処分し、投資金を回収することができる。
  • それが可能であれば、こうしたシナリオもそれなりに有効であろうが、現実にはほとんど不可能である。
  • その理由は、①企業が倒産すればその資産価値も下落する、②債券保有者の本来の法的権利を主張するのは難しい、③破産管財の下では残余資産の処分の遅れやその他の不都合が生じる━━からである。

以前は債券を選ぶとき、企業の財務力や支払い能力も見てはいましたが、どちらかといえば「担保となる資産」のほうが重視されていました。

しかし実際には、いざ担保を回収しようとしても、思ったようにいかないケースが多いことが分かっています。

そのため、確定利付き債券を選ぶときに本当に重視すべきなのは、発行会社の財務力と支払い能力です。



1、資産価値を保証しない先取特権

  • 発行会社の安定した経営と切り離して、財産の優先抵当権をその証券の保証と考えるのは完全な間違いである。
  • 一般にその企業の担保資産の価値はその収益力によって決まるからである。
  • 債券保有者は鉄道道路、工場の建物・設備、発電施設やその他の公共事業の資産、橋またはホテルの建物などに対する先取特権を有するかもしれない。
  • しかし、これらの資産はそれらの建設者以外にはまったく利用価値のないものである。
  • このため、もしもその企業が倒産という事態になれば、その固定資産の換金可能な価値は大幅に下落する。
  • こうした理由から、その企業の担保資産の取得原価や評価額をその証券の購入基準と考えるのは完全に間違っている。

担保となる資産の取得価格や評価額を基準にして、その証券を買うかどうか判断するのは危険です。

なぜなら、その資産の評価額は「企業がそれを使って利益を出すこと」を前提にしたものであり、いざ売却しようとすると、実際に得られる金額(換金価値)は大きく下がってしまうからです。

したがって、たとえその証券に先取特権(担保の優先権)があっても、それを「安全の保証」と考えるべきではありません。



2、難しい法的権利の実行

  • 担保資産が負債と同じくらいある場合でも、債券保有者がそれを差し押さえて換金するのはほとんど不可能である。
  • その資産が先取特権の請求額以上の価値を持つ場合、裁判所が債券保有者に対してその資産を差し押さえて担保権を実行するのを認めるはずがない。
  • そうしたことが認められるならば、同じ資産に対して大きな持ち分を持ちながらその資産を保全する立場にない株式所有者や下位債券の保有者にとってかなり不公平である。
  • こうした状況ゆえに、その時点での資産価値が債券保有者の請求額をかなり下回っていないかぎり、債権保有者が担保資産を実際に手に入れることはほとんど不可能である。

個人の不動産ローンのように、担保を差し押さえて売ることは、債券の場合ほとんどできません。

なぜなら、担保となっている資産が請求額よりも価値があると、その資産を売ってしまうことで会社の事業が続けられなくなり、他の株主や下位の債券保有者にとって不公平になってしまうからです。



3、待ち時間は高くつく

  • 担保資産を債券投資の安全基準とする考え方のもうひとつの問題点は長い待ち時間である。
  • 先取特権の金額に比べて担保資産の価値が大きければ大きいほど、さまざまな利害がからんで担保権の実行はますます難しくなる。
  • その結果、債券や株式保有者の間で資産を公平に分配するときもいっそう長い時間がかかる。
  • そして管財人の管理が長引くにつれ、投資家はそうした難しい企業のトラブルには巻き込まれたくないと思うため、その証券の下落にはさらに弾みがつく。

担保となる資産を処分してお金を分配するには、とても時間がかかるという問題があります。

その間にトラブルや不確実な状況に巻き込まれるのを避けたい投資家は、その証券を売って手放してしまうことが多いです。

つまり、担保資産をもとに「この債券は安全だ」と判断するのは危険だと言えます。



基本原則はトラブルを避けること

  • 以上の検討結果をまとめると、債券購入に際して重要なことはトラブルを避けることであり、トラブルが起こってからわが身を守ることではないということである。

債券を買うときに本当に重要なのは、担保資産の有無ではなく、その企業の財務力です。

たしかに、特別な先取特権が実際に役立つ場合もありますが、それはごく限られた特殊な状況にすぎません。

企業が破産・整理の手続きに入れば、その債券の価格は大きく下がるのが普通で、
担保資産による保護などは実際のところ、ほとんど気休めにしかならないのです。



以上の検討結果から得られる原則

1、先取特権はそれほど重要ではない

  • 優良債券の選択に際して先取特権がそれほど大きな重要性を持たないとすれば、先取特権そのものがあまり大きな意味はないということである。
  • 支払利息の負担に十分耐えられる強力な企業の無担保社債は、担保付き社債と同じく無条件で受け入れることができる。

ここまでの内容から分かるのは、企業の財務力こそが最も重要であり、先取特権にはあまり意味がないということです。

つまり、財務的に強い企業の無担保社債のほうが、財務基盤が弱い企業の担保付き社債よりも、むしろ安全だといえます。



2、安全な企業の高利回り債を買う

  • その会社のすべての証券が確定利付き証券に値するものであれば、同社が発行するすべての債券もそうである。
  • 逆に言えば、その企業の下位債券が安全でなければ、その一番抵当付き社債も確定利付き証券には値しないことになる。
  • それゆえ理論的に正しい債券投資法とは、まず安全性と財務内容のあらゆる基準を満たす企業を選び、次にその一番抵当付き社債よりも下位にある高利回りの債券を購入することである。

債券では企業の財務力こそが重要であり、先取特権にはあまり意味がありません。

そのため、同じ企業の債券であれば、利回りが高い下位債券を選ぶほうが合理的です。


そもそも、第一抵当付き社債のような低利回りの安全志向の債券を好んで買う投資家は、「自分には企業の安全性を正しく見抜く自信がない」と認めているようなものです。

つまり、そのような選択をする投資家は、投資先を見極める力に疑問があるとも言えます。



事例
  • 1932年6月時点で一番抵当付き社債の価格は95ドルで最終利回りは約5 1/2%、無担保社債は59ドルで利回りは20%を超えていた。
  • もし投資家が同社の将来性を信頼しているのであれば、なぜ無担保社債を購入して大きなリターンを手にしないのだろうか。
  • そのたったひとつの理由は、自分の判断が間違ってこの会社が経営難に陥った場合、一番抵当による優位の保証が欲しいからである。
  • しかしたとえそうであるにしても、もしもカダヒー・パッキングがフィスク・ラバーのような倒産という事態に直面すれば、その一番抵当付き社債無担保社債と同じくらい大幅に下落するのは明らかである。
  • カダヒー・パッキングの一番抵当付き社債を選んだ投資家は損失に対するほんのわずかな安心料を得るために、無担保社債よりも1年に約15%ものプレミアム(割増価格)を支払っているのである。
  • このように、これらの投資家は手に入れるリターンの代わりにあまりにも大きな代価を支払っている。
  • 以上から得られる結論は、賢明な投資家であればカダヒー・ラバーの債券は一切買わないか、または買うのであれば高利回りの下位債券を購入すべきだということである。
  • こうした選択基準は、ある会社の一番抵当付き社債が一定価格(例えば額面近辺)を維持しているときにその下位債券が高利回りの水準で売られている場合などを含め、あらゆるケースに適用できるだろう。

この事例では、引用を丁寧に拾っています。

もし発行企業の財務力が十分に強いのであれば、利回りが5%程度の第一抵当付き社債よりも、20%を超える無担保社債を買ったほうが有利です。

なぜなら、もしその企業が破産した場合、担保付きでも無担保でも結局は大きく下落するからです。

であれば、わずかな「保証」に頼るよりも、それを捨てて15%以上高いリターンを狙う方が合理的だというわけです。



3、下位債券に大きなメリットがない場合には上位債券を選択する

  • ただし下位債券を選ぶのは、大きなリターンというメリットがあるときだけである。
  • 一番抵当付き社債の利回りが下位債券の利回りをわずかに下回っているような場合には、予期せぬ事態から身を守るためにもわずかなプレミアムを支払うほうが賢明である。

もちろん、大きなリターンの差がないなら、無理に下位債券を選ぶ必要はありません。

たとえば、第一抵当付き社債(上位債券)の利回りが、下位債券より少し低い程度であれば、たとえその担保がわずかな保証にすぎなくても、上位債券を選んだほうが無難です。

そのほうが、債券価格の変動による損失リスクを抑えるという点でも有利になります。



事例
  • 一般に次の2つの要件のどちらかひとつを満たすならば、Y社の一番抵当付き社債よりはX社の下位債券を購入したほうが有利である。すなわち、
  1. X社のすべての債務の返済が十分に保証されており、その下位債券の利回りがY社の同等債券の利回りをかなり上回っているとき
  2. 利回り面ではそれほど大きなメリットはないが、X社のすべての債務の返済の保証がY社のそれよりもかなり確実であると見られるとき

その企業の返済能力が十分に強いなら、利息の支払いが確実に行われるため、下位債券(無担保など)を選んだほうが有利です。

この考え方は、同じ企業の債券を比べる場合だけでなく、別の企業同士を比べる場合にも当てはまります。

たとえば②のケースでは、どちらの債券も同じ価格ですが、アメリカン・ガス・アンド・エレクトリック社の方が収益力(収益倍率)が高いため、パシフィック・パワー・アンド・ライト社の第一抵当付き社債よりも、アメリカン・ガスの無担保社債を選ぶほうが賢明だといえます。




まとめ

  1. 最も重視すべきであるのは債務者であるその発行会社の財務力と支払い能力である。
  2. 企業の財務力こそが最も重要であり、先取特権(担保の優先権)にはあまり意味がない。
  3. 安全な企業の同じ債券であれば、利回りが高い下位債券を選ぶほうが合理的。
  4. ただし下位債券に大きなメリットがない場合には上位債券を選択する。

おわりに

PBR(株価純資産倍率)は、株価が割安かどうかを見るときの目安になります。

しかし、会社を実際に解散して資産を処分することを考えると、処分時のディスカウントを考慮しなければなりません。

特に不動産は、古くから保有している物件でない限り、鑑定価格どおりの金額で売却するのは難しく、流動性の低さがネックになります。

そのため、資産価値に着目した投資を行う際は、資産の「換金のしやすさ」にも注目することが大切です。

私はその指標として「ネットキャッシュ/時価総額」に注目しています。

実際、昨年この基準で見つけたWOWOWの株は約80%値上がりし、良い成果を得ることができました。
https://x.com/nikkei/status/1782250644591501808?s=46&t=lFBKo0tb2kBRyFxxsO6mxA


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