はぐれ猿でも、投資がいいんだ。

ふりむけばやさしさに飢えた弱肉強食の世界で

証券分析第7章①〜確定利付き証券の選択③

前回は、確定利付き証券を選ぶうえでの第一の原則として、発行企業の業績や財務基盤の強さが重要であることを学びました。

今回は、その続きとして第二の原則を見ていきましょう。

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証券の選択における4つの原則(前回)

  • われわれが検討している確定利付き証券の一般的なアプローチとして、個別銘柄の選択でも適用できる次のような4つの原則を提案したい。
  1. その証券の安全性は特定の先取特権やその他の契約上の権利にあるのではなく、すべての責務を履行できるその発行会社の財務能力によって決まる。
  2. そうした能力はその企業の好況期ではなく不況期で明らかになる。
  3. その証券の低い安全性は表面利率をどれほど高くしても補うことはできない。
  4. 投資適格債券の選択は「消去法」の原則に従うとともに、発行会社の定款に記載された条項については厳しい基準を適用すべきである。

グレアムが提言する確定利付き証券を選ぶ原則を示しています。

前回は第一の原則を解説しました。
gyatuby.hatenablog.com

今回はそのうち第二の原則について見ていきましょう。




Ⅱ、第二の原則━━債券は不況期に購入する

  • 安全な投資とは不況期にも耐え得るものであるというのは分かり切った原則である。
  • 好況期にはどのような債券を購入してもそれなりのリターンを得られるものである。
  • 優良債券がぜい弱な企業の債券より大きな強みを発揮するのは、不況の真っただなかの厳しい環境下である。
  • こうした理由から、賢明な投資家は常に好況期と不況期のいずれにも耐えられる強力な経営基盤を持つ会社の債券を選択してきた。

元本の安全を確保するための投資は、当然ながら不況の時期にも耐えられるものでなければなりません。

この第二の原則が伝えているのは、「不況期に買え」という単純な話ではなく、「好況期であっても、不況を乗り越えられるだけの優良な債券を選びなさい」という教えです。



業種と保護の度合い

  • 不況期にも耐えられる債券への信頼感は、この2つの条件のいずれかにかかっている。
  • 投資家は特定の産業では収益力の大きな落ち込みはないだろう、またはその債券の安全余裕率はかなり大きいので価格の急落はないだろうと信じている。
  • 平均的な債券投資家にとって最も大きな購入の動機は不況期のリスクを避けたいというものであろう。

不況期にも耐えられる債券への信頼は、主に「業種の特性」と「安全余裕率」の大きさに左右されます。

たとえば、電力会社の債券は景気に左右されにくい“ディフェンシブ銘柄”として買われ、USスチールの子会社の債券は、親会社による強力な支援が期待できる点で人気を集めました。


一般に、債券投資家は元本を守りながら安定した利子収入(インカムゲイン)を得たいと考えており、不況による損失リスクを避けようとします。

そのため、ある企業の業績が悪化しても債券価格があまり下がらないことがあります。

これは「その企業の財務力を深く分析して信頼した」というよりも、「単にその企業が不況に強そうだから」という、より単純な理由で買われている場合もあるのです。



不況に耐えられる企業など存在しない

  • そうした投資論理の大きな間違いは、収益力がまったく落ちないほど不況に強い企業などこの世に存在しないということである。
  • 重要なことは、不況に耐え得る企業とぜい弱な企業を区別するのではなく、その債券が大幅に下落するのか、それとも軽微な落ち込みで済むのかといった観点からその発行会社を見るべきである。

しかし、多くの投資家が誤解しているのは、「不況にまったく影響を受けない企業など存在しない」という点です。

したがって、企業を「不況に強いかどうか」で判断するのではなく、「不況時にその債券がどれほど値下がりする可能性があるか」で区別するのが適切だと述べられています。


例えば、安定した産業に属する企業であれば、債券発行によって資金を調達することも比較的容易です。

また、平常時の収益力(=安全余裕率)が大きい企業ほど、利息の支払いに十分耐えられる力を持っています。

一方で、収益が不安定な企業の場合は、安全余裕率をより大きく確保する必要があり、資本構成における債券の割合も小さく抑えるべきだとされています。



産業の性質

  • 長年の投資慣行ではその産業の性質が大きく重視されてきた。
  • しかし、例えば鉄道、公益事業または工業といった3つの産業でも、企業の安定性と利払い能力は大きく異なっている。

一般的に、景気の影響を受けにくく不況に強いとされる「ディフェンシブ業種」とは、食品や日用品、医薬品といった生活必需品、そして電力・ガス・鉄道・通信などの社会インフラ関連の業種を指します。
ディフェンシブ銘柄│SMBC日興証券

ただし、本書では鉄道業を公益事業(インフラ系)から切り離して分析しています。

これはアメリカでは、鉄道会社が飛行機やトラック(自動車輸送)といったライバルと競合しており、競争が非常に激しいためと考えられます。



1931〜1933年における公益事業債の安全性の崩壊

  • しかし、1932年の公益事業債の価格を見ると、優れた投資対象としての公益事業債の安全性にも大きな疑問を抱く。
  • 不況から身を守る投資家の保護力の程度はいわゆる「並みの不況」までで、1931〜33年のような壊滅的な大不況にはなすすべもない。

とはいえ、世界恐慌のような深刻な大不況が起これば、工業債だけでなく、ディフェンシブ業種とされる公益事業債でさえ大きく値下がりしてしまいます。

つまり、業種の特性や安全余裕率による防御が効果を発揮するのは、あくまで“通常の不況”までであり、壊滅的な大不況の前ではその保護も無力になってしまうのです。



債券暴落の原因

1、公益事業会社の債券発行による過大な債務

  • 公益事業会社のデフォルトは収益の悪化によるものではなく、並みの不況にも耐えられないほど限度を超えた債務による重荷によるものであった。

公益事業債が暴落した原因の一つとして、公益事業会社による無謀な資金調達が挙げられています。

それまでの基準では非常に安定した財務体質だと考えられていた企業であっても、膨大な債券発行による利息負担の重さには耐えきれなかったのです。

とはいえ、世界恐慌のような極端な状況を踏まえても、「公益事業債は基本的に安全性が高い」という投資原則そのものが大きく損なわれたわけではありません。



2、過信された鉄道会社の収益の安定性

  • 鉄道債への投資が失敗だったのは運送業全体の安定性を過信した結果、投資家が実際には不十分でしかなかった安全余裕率を読み誤ったことにある。
  • 過去の経験から未来の手掛かりをくみ取るためにも、われわれは不況期に鉄道債を購入するときには平常時以上の安全余裕率を取るように肝に銘じるべきである。

二つ目の問題として挙げられているのは、「運送業の安定性を過信し、安全余裕を十分に確保しなかったこと」です。

本書によると、「運送業第一次世界大戦後の国内経済の大発展に歩調を合わせて収益を伸ばせなかったという事実こそが最大の問題であり、投資家はこの点をもっと厳しく見るべきだった」と述べられています。

もし投資家が工業債と同じような厳しい基準を鉄道債にも適用していれば、結果的に、本当に経営基盤の強い一部の鉄道会社の債券にしか投資しなかっただろう、と考えられます。



3、不安定な工業会社の収益

  • 工業債が急落したのは公益事業債のような不安定な財務体質のためではなく、また鉄道債の場合のように投資家が必要とされる十分な安全余裕率を取り間違ったためでもない。
  • その原因は工業会社の収益が突然落ち込んだあとに、再び収益を持ち直せるかどうかかなり疑問だったことである。
  • 長期の不況に伴う企業の営業損失の拡大に対しては好況期における十分な安全余裕率でさえも有効ではないという苦い教訓を得たのである。
  • この基準に従えば、平常時における債券のインタレスト・カバレッジを多少厳しくしたぐらいでは、将来の工業債の問題に根本的に対処することはできないだろう。

鉄道会社や公益事業会社に比べて、工業会社の債券は収益の変動が大きく不安定でした。

そのため、一度大きく利益が落ち込んだあとに再び回復できるのかどうか疑念が生じ、それが工業債の暴落につながりました。


この経験から、「長引く不況による営業損失の拡大に対しては、好況期に築いた十分な安全余裕率でさえも防ぎきれない」という苦い教訓が得られました。

したがって、平常時の債券のインタレスト・カバレッジを多少厳しく設定した程度では、将来の工業債のリスクに根本的な対策とはならないのです。



投資適格基準を維持できない工業債

  • 「会社の規模」は工業産業が深刻な不況に陥っても好業績を維持できる重要な条件であり、この基準に照らせば工業債への投資は大手企業の債券に限定すべきである。
  • 1922年〜29年の好況期においても、中小工業会社の債券は信頼できる投資対象とはなり得なかったのである。
  • それらの企業ではずっと維持してきた収益力が突然落ち込んだケースも少なくなかった。
  • 事実、そうした予想外の出来事が頻発したことから、中小工業会社の安全性というものは本来的に当てにならず、それゆえ債券による資金調達には適していないと思われる。
  • 中小工業会社のこうした経営基盤の弱さが、資金調達の手段として転換社債ワラント債などの甘味料を付与した債券の発行を促してきたのも事実である。
  • いずれにせよ、こうした利益分配の甘味料を使わなければならない事実ひとつをとっても、中小工業会社の債券は確定利付き証券としての資格を持たないというわれわれの考えを裏付けている。

「大手企業だから安心」という考え方は、債券を購入する際にも一定の参考になります。

なぜなら、中小の工業会社は利益の変動が大きく、不況期に耐えることが難しい場合が多いからです。

そのため、グレアムは「中小工業会社の債券は、確定利付き証券としての条件を満たさない」と述べています。

また、この“企業規模”という視点は、債券だけでなく、普通株への投資を検討する際にも重要な判断材料になります。
gyatuby.hatenablog.com



劣後債を買う誤り

  • しかし、もし工業債の投資を大手企業の債券に限定するとすれば、これに該当する企業の数はかなり少なく、またそれらの企業の多くは債券をほとんど発行していないという現実に直面する。
  • その一方で、二流企業の債券発行による資金調達は問題が多く、投資銀行の活動にさまざまな悪影響を及ぼしている。
  • こうした状況の下では、投資適格な価格でリスクの大きい債券を購入することは決して賢明ではないだろう。
  • つまり、優良な債券がないという理由から劣後債を購入してはならないということである。
  • 投資家は利回りを多少犠牲にしても、自らの厳しい基準に合致した証券だけを選択すべきである。

劣後債(劣後特約付社債)は多くの企業で発行されていますが、ここでいう劣後債とは「安全性に欠ける債券」を指します。

わずかな利回りの高さに惹かれて、こうした劣後債を購入するのは避けるべきです。

投資家は、たとえ利回りを少し犠牲にしてでも、厳しい基準を満たした信頼性の高い債券を選ぶことが重要です。



債券発行に対する2つの見方

  • 企業の債券発行による資金調達については、一般に相反する2つの見方があるようだ。
  • そのひとつは、債券を発行するのはその企業の財務力が弱いからであり、そうであればそうした企業が長期の債券債務を持つのは望ましくないという見方である。
  • これに対し、その企業が株式発行による資金調達ができない場合、債券を発行して資金調達することはむしろ妥当な手段であるという別の見方もある。
  • 広く受け入れられているこうした2つの見方について、われわれはどちらも正しくはないと考える。
  • ぜい弱な企業だけしか債券を発行しないとすれば、そんな債券に対してはすべての投資家がそっぽを向いてしまうだろう。

社債による資金調達は多くの企業で一般的に行われていますが、当然ながらそれは財務基盤の弱い企業だけに限られません。

企業は、株主資本だけでなく銀行借入や社債発行などを活用して資金を集め、レバレッジをかけることで資本効率の向上を目指しているのです。



債券発行に正しい論理

  • 債券発行による資金調達の正しい論理とは、そうした見方とはまったく異なるものである。
  • すなわち長期債務としての債券は、その発行会社が債券保有者の資本を使って生み出す支払利息以上の利益を株式保有者もあずかることができるという点で、繁栄する企業にとっては大きなメリットがあるのである。
  • 逆に言えば、企業がそうした資金の借り入れをどのような状況の下でも安心に返済できる水準に抑えていれば、それはその企業と投資家の双方にとっても望ましいということである。

レバレッジ効果をもう少し詳しく説明すると、社債で調達した資金を、支払う利息以上の利益を生む事業に投資できれば、債券投資家にとっても、企業やその株主にとっても大きなメリットがあります。

逆に言えば、適切な投資先が見つからないのに無理に資金を調達しなければ、企業と投資家の双方にとって理想的な「Win-Winの関係」が成り立つということです。



安全ではないやり方

  • こうしたぜい弱な企業が債券の発行によって何とか資金を取り入れようとしている一方で、強力な企業は株式発行を通じて難なく必要な資金を調達している。
  • もっとも、こうした企業の資金調達方法にはかなりの安全性があるとはいえ、この方法にもいくつか落とし穴がある。
  • つまり、企業が低金利で大量の資金を調達すればそれは株式保有者にはメリットになるかもしれないが、さらに増資を続けていけばそうしたメリットも次第に薄れてくるということである。

近年は「資本コストを意識した経営」が重視されていますが、基本的に株式は配当の義務がない資金調達手段です。

そのため、極端な話をすれば、無配当のままでも事業投資によって資本を増やせれば、最終的には株主にとって大きな利益となる可能性があります。

しかし、実際には有望な投資先が無限にあるわけではありません。

また、株式発行を繰り返して資金を集めすぎると、株式の希薄化によって1株あたりの価値が下がり、株主にとってのメリットも次第に薄れていくでしょう。



投資家に意味するもの

  • 以上、過去10年間に発行された工業債の状況について検討してきたが、そこから得られるのは確定利付き証券の選択は不況期に行うべきであるという教訓である。
  • とはいえ、工業債の選択ではかなり厳しい基準を適用しなければならないという一方で、優良企業の多くが次々と長期債務を返済した結果、債券投資家が投資適格債の品不足に直面したことも事実である。
  • しかし、投資家としては優良な債券がないからといって二流会社の債券を購入すべきではなく、自らの投資基準に見合った適当な債券が入手できなければ債券投資そのものを手控えたほうがよい。

不況期であっても、価格の下落が比較的少なく、着実に利子の支払いが続いている債券を見つけることはできます。

こうした債券は、むしろ好況期にはなかなか手に入らないものです。

そして、もし十分に優良な債券が見つからない場合は、安易に妥協して投資するよりも、思い切って債券投資そのものを控えるほうが賢明でしょう。



要約

  • 不況抵抗力がある債券を購入するというのは、昔から言われてきた投資原則のひとつである。
  • 投資家は工業債の購入に際しては、①会社の規模、②支払利息を十分に賄えるほどの収益力━━という2つの基準を厳しく適用して、さまざまなリスクからわが身を守るべきである。

たとえば、資本力の大きい電力会社やガス会社の債券は、不況期であっても比較的安定した価格を保ちました。

また、1930年以前から利払いを十分にまかなえる収益力を持っていた一部の鉄道会社の債券も、一定の価格を維持しています。

一方で、工業債の場合、それまで好調な業績を上げていた大企業の債券でさえ信頼できず、中小企業の債券に至っては目も当てられないほどの下落を見せました。

このため、工業債を購入する際には、企業規模と安全余裕率を慎重に見極め、厳しい基準で選定する必要があります。



まとめ

  1. 第二の原則が伝えているのは、「不況期に買え」という単純な話ではなく、「好況期であっても、不況を乗り越えられるだけの優良な債券を選びなさい」という教えである。
  2. 重要なことは、不況に耐え得る企業とぜい弱な企業を区別するのではなく、その債券が大幅に下落するのか、それとも軽微な落ち込みで済むのかといった観点からその発行会社を見るべきである。
  3. 工業債への投資は大手企業の債券に限定すべきである。
  4. 投資家は利回りを多少犠牲にしても、自らの厳しい基準に合致した証券だけを選択すべきである。

おわりに

日経平均株価はとどまることを知らず、ついに 52,000円 を突破しました。

相変わらず恩恵を受けているのはハイテク関連銘柄であり、バリュー株は依然として苦戦しています。


最近、『オニールの成長株発掘法』を読み直しながらブログのリライトを進めているのですが、
「今儲けないでいつ儲けるんだ」という気持ちが頭をよぎります。

しかし、バリュー投資と成長株投資は本質的に相入れない。

短期的な熱狂に流されず、冷静に企業価値を見極める姿勢を忘れてはいけません。


とはいえ、ポートフォリオのリバランスを検討するタイミングなのかもしれません。

今の相場環境を冷静に見つめ直し、自分の投資スタンスを改めて問い直す良い機会とも言えそうです。

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