前回は、不況期でも安定して支払いが続く債券を選ぶという第二の原則について学びました。
今回はその流れを受けて、確定利付き証券を選ぶ際の3つ目の重要な原則について、さらに詳しく見ていきましょう。
- 証券の選択における4つの原則(前回)
- Ⅲ、第三の原則━━利回りのために元本の安全性を犠牲にしてはならない
- 数学的な相関関係など存在しない
- 投資に保険はかけられない
- 周期的なリスク
- 同じ基準で測れないリスクと利回り
- 「ビジネスマンの投資」の誤り
- 一般の投資家とは反対のやり方を
- まとめ
- おわりに
証券の選択における4つの原則(前回)
- われわれが検討している確定利付き証券の一般的なアプローチとして、個別銘柄の選択でも適用できる次のような4つの原則を提案したい。
- その証券の安全性は特定の先取特権やその他の契約上の権利にあるのではなく、すべての責務を履行できるその発行会社の財務能力によって決まる。
- そうした能力はその企業の好況期ではなく不況期で明らかになる。
- その証券の低い安全性は表面利率をどれほど高くしても補うことはできない。
- 投資適格債券の選択は「消去法」の原則に従うとともに、発行会社の定款に記載された条項については厳しい基準を適用すべきである。
グレアムが提言する確定利付き証券を選ぶ原則を示しています。
今回はそのうち第三の原則について見ていきましょう。
Ⅲ、第三の原則━━利回りのために元本の安全性を犠牲にしてはならない
- 債券投資の伝統的な論理では、利子率とリスクの度合いの間には数学的な相関関係があると考えられてきた。
- それによれば、利回りには①損失のリスクがないと仮定して計算された理論上の利子率である「純粋利子」と、②このリスクを補うために一定のプレミアムを加えた実際の利子率━━の2つがある。
まず、債券投資の基本的な考え方として、「純粋利子」という概念があります。
これは、損失のリスクがまったくないと仮定した場合の理論上の利子率で、たとえば国債の金利がその代表です。
実際の債券では、損失の可能性を補うために「リスクプレミアム(上乗せ金利)」を加えた利子率で取引されます。
一般的に、インカムゲイン(利子収入)が大きくなるほど元本損失のリスクも高まるため、最終的には異なる利回りの投資対象であっても、得られるリターン率はおおむね同じ水準に落ち着くと考えられています。
数学的な相関関係など存在しない
- しかし、こうした理論は実際の債券投資にはほとんど当てはまらないようだ。
- 証券の価格と利回りは予想リスクの正確な数学的計算によって決まるのではなく、その証券の「人気」に大きく左右される。
- 一般に証券のそうした人気はそこに内在するリスクに対する投資家のさまざまな見方を反映しているが、それ以外にもその発行企業の知名度、証券価格の安定さ、証券の売却の容易さ(市場性)などにも左右される。
しかし、このような数学的な理論は、実際の債券投資には必ずしも当てはまりません。
というのも、証券の価格や利回りは、予想されるリスクを正確に数値化した「ファンダメンタル要因」だけで決まるわけではなく、その証券がどれだけ人気を集めているかといった「テクニカル要因」にも大きく左右されるからです。
投資に保険はかけられない
- 個人投資家は保険会社にはなれないからである。
莫大な資本を持つ保険会社であれば、その資金力を活かして幅広く分散投資を行い、ある程度リスクの高い債券にも投資することが可能です。
しかし、個人投資家にはそのような余裕はありません。
したがって、個人の場合は利回りが低くても、その分安全性の高い債券を選ぶことが望ましいと言えるでしょう。
周期的なリスク
- 一般投資家は保険会社ではないため、年に一定のプレミアムを支払って利回りを高める代わりに元本を失うというリスクは取るべきではない。
- リスクの大きい証券は不況期には総崩れとなるものであり、そうなれば高利回り証券の投資家がそれまでに稼いできたインカムゲインはもとより、元本を失うという事態にもなりかねない。
保険会社による分散投資でさえも、実際にはリスクの大きい証券への投資は推奨されません。
なぜなら、そのような証券は不況期にまとめてデフォルトとなるものであり、そのような状況では分散投資をしても意味がないためです。
同じ基準で測れないリスクと利回り
- 以上の考察から、われわれはリターンと元本損失のリスクが同じ基準では測れないという原則を得ることができる。
- それが実際に意味するものは、元本損失のリスクは単なる高利回りで補うのではなく、むしろ元本の値上がりのチャンスで埋め合わせるべきだということである。
- 例えば、額面よりかなり割安になっている債券を購入する、かなり有利な転換権の付いた債券を買う━━など
- 元本損失のリスクを高利回り、または元本値上がりのチャンスで埋め合わせるということに大きな「数字上の」違いはないかもしれないが、その「心理的な」違いは極めて大きいものである。
- というのは、低位債券の購入者は自分が取っているリスクを十分に承知しており、その債券については詳しく調査して損失と利益のチャンスを慎重に計算しているはずである。
- 重要なことは、そうした投資家は被るかもしれない損失を覚悟し、利益はそのリスクの見返りであると考えていることである。
- 実際の投資経験によれば、典型的な高利回り債を額面近くで購入するのはけっして得策ではない。
これまでの検討からわかるのは、リターンと元本損失のリスクを単純に比例関係として描くことはできないということです。
そして、もし投資家が元本損失のリスクをある程度受け入れるのであれば、高利回りの債券を狙うよりも、キャピタルゲイン(値上がり益)が期待できる投資先を選ぶほうが良いと述べられています。
「ビジネスマンの投資」の誤り
- この種の証券は相場の世界では「ビジネスマンの投資」と呼ばれ、ある程度のリスクを取れる人々だけが売買するものと考えられる。
- われわれの見解によれば、こうした「ビジネスマンの投資」とは非論理的な投資である。
- ある程度のリスクを覚悟した投資家はそれと同じくらいの元本の値上がりを期待しており、そこから得られるインカムゲインなどは二次的なものと考えているからである。
キャピタルゲイン(値上がり益)を狙う「ビジネスマンの投資」は、安定した利息収入(インカムゲイン)を目的とする債券投資とは性質が異なります。
ビジネスマン投資家は、ある程度のリスクを取る代わりに元本の値上がりを期待しており、利息や配当などのインカムゲインはあくまで副次的な要素として考えているのです。
一般の投資家とは反対のやり方を
- この問題をもっと広範な観点から考えると、投資家はインカムゲインに対する一般的な投資法とは反対のやり方をすれば良いということになる。
- 例えば、自らの条件に合致した債券を選択する場合には最上位の基準から出発し、まず最大の安全性を確保するために最低利回りの債券を調べ、次に最も魅力的なインカムゲインを持つ理想的な債券からどれだけ譲歩するのかを計算するのである。
- こうしたやり方をすれば、平均的な投資家も自分の条件に合致した債券とはベストの債券よりもやや下位にランクされるものだということが次第に分かってくるため、高利回りという魅力や債券セールスマンの甘言に乗ってリスクの大きい債券に手を出すようなこともなくなるだろう。
確定利付き証券の選び方は消去法です。
投資家は投資対象となるすべての債券に適用する安全性の最低基準から出発せよと述べています。
こうした最低基準さえ満たさない債券は、たとえ高利回りでも、または発行会社の好業績予想といった材料があっても、インカムゲインを目的とする投資対象としてはすべて除外すべきです。
債券の選択は、受け入れ難い最上位の債券から何となくランクを下げていくことによって決めるよりも、明確な最低基準の出発点から上方にランクを上げていくことで投資対象を絞っていくのです。
まとめ
- 利回りのために元本の安全性を犠牲にしてはならない。
- 例えば、額面よりかなり割安になっている債券を購入する、かなり有利な転換権の付いた債券を買う━━など、元本損失のリスクは単なる高利回りで補うのではなく、むしろ元本の値上がりのチャンスで埋め合わせるべきだ。
- 実際の投資経験によれば、典型的な高利回り債を額面近くで購入するのはけっして得策ではない。
- 債券の選択は、受け入れ難い最上位の債券から何となくランクを下げていくことによって決めるよりも、明確な最低基準の出発点から上方にランクを上げていくことで投資対象を絞っていくと良い。
おわりに
ハイテク関連銘柄の勢いはしばらく続くと思われましたが、今週は調整局面となりました。
いよいよこのバブル相場も終わりを迎えるのでしょうか。
オニール流の指標では、売り抜けシグナルがすでに3回出ており、チャート上でもレールロードトラック(天井圏での転換パターン)が確認されています。
こうした状況を見ると、「そろそろ天井かもしれない」と感じざるを得ません。
とはいえ、オニールも指摘しているように、シグナルはときに裏切るものです。
そのため、すぐに全てを手放すのではなく、一部ポジションを維持するつもりです。
下落が明確に始まってから売却しても遅くはありません。
焦らず、相場の動きを見極めながら対応していきたいと思います。
↓押していただけると更新の励みになります。