想定外の事態が起きたとしても、そのダメージを和らげてくれます。
では、成長株と割安株では、この安全域はどのように異なるのでしょうか。
成長株投資の根本原理
- 成長株投資の根本原理には、安全域の原理と相容れる部分と相反する部分がある。
成長株投資家は、バリュー投資家とは異なった原理で動いています。
成長株投資における安全域
- 成長株を買う人たちの根拠は、過去の平均収益を上回る期待収益力である。
- よって、彼らは安全域の計算に当たって過去の数字の代わりに、このような期待収益力を基にしているといえるであろう。
- 将来の計算を控えめに見積もると同時に、その数値が株式買い付けに当たって支払う価格との比較で十分な余裕を有するのであれば、成長株投資が通常の投資の場合と同じような信頼に足る安全域を生み出すといえるかもしれない。
『賢明なる投資家』でも示されているように、成長株投資は安全域と「一致する部分」と「相反する部分」の両方を持っています。
まず一致する点です。
成長株投資家は、過去の実績ではなく「将来の期待収益力」を根拠に投資判断を行います。
つまり、安全域の計算も過去の数値ではなく、将来の成長を前提に行われます。
このとき、
- 将来の成長を保守的に見積もる
- そのうえで株価との間に十分な余裕を確保する
この条件が満たされれば、成長株投資でも安全域を確保することは可能です。
安全域と相反する部分
- 成長株投資における危険は、まさにこの点にある。
- 非常に人気の高い銘柄には、将来の収益の控えめな見積もりから十分な安全域を確保できるような株価が付かない傾向にある。
- 見積もられた数字が過去の実績と異なるときには必ず、少なくともその見積もりを若干は控えめにしておかねばならないというのが、慎重な投資の基本原則である。
- 安全域は、常に支払う価格によって決まる。
- 安全域とは、ある価格では大きく、それよりも高い価格では小さくなり、さらに高い価格では全く存在しなくなるものだ。
- われわれの考えるように、大部分の成長株は平均株価水準が高すぎるために、それを買う人は十分な安全域を得ることができないとすれば、この分野の株式に対して単純な分散投資というテクニックを用いたとしても、満足すべき結果は得られないだろう。
- このような銘柄全体に共通する、高い株価水準がはらむ危険を克服できるだけの賢明な銘柄選択を行うためには、特別な先見性や判断力が求められるのである。
一方で問題となるのが、相反する部分です。
人気の高い成長株は、しばしば将来の成長を織り込みすぎた株価になります。
その結果、
- どれだけ控えめに見積もっても安全域が確保できない
- 株価が高すぎて「余裕」が存在しない
という状況が生まれます。
安全域は「価格」によって決まるため、価格が高くなるほど小さくなり、やがて消滅します。
この状態では、分散投資をしてもリスクは十分に抑えられません。
したがって成長株投資では、
- 銘柄選択の精度
- 将来を見抜く判断力
が極めて重要になります。
割安株投資における安全域
- 安全域の考え方は、割安銘柄に適用することでさらに明白なものとなる。
- 割安銘柄は本質的に、株価がその株式の評価価値よりも安い状態にあるわけで、その差がすなわち安全域である。
- 安全域は、計算ミスや運の悪さを十分に吸収する効果がある。
- 割安銘柄に投資する人は、その銘柄が逆境に耐え得る能力があるかという点を特に重視している。
- つまり、大抵の場合、彼らにはその会社の将来の成長性に対する強い思い入れなどはないのである。
これに対して、割安株の安全域はよりシンプルです。
株価が本来の価値を下回っている――
この「差」そのものが安全域になります。
この安全域は、
- 評価の誤り
- 業績のブレ
- 不運な出来事
といったリスクを吸収する役割を持ちます。
そのため割安株投資では、
「この企業は逆境に耐えられるか」
という点が重視されます。
将来の高成長に対する強い期待は、必ずしも必要ではありません。
割安株の将来性について
- もちろんいかに株価が安くとも、投資家は将来性が全くないような銘柄を買う気にならないであろう。
- しかし過小評価された銘柄にはさまざまなものがあり、恐らくその大部分は、確実な将来性が見込まれているわけでも、かつ確実に将来性がないわけでもないというような銘柄なのだ。
- このような銘柄を割安銘柄で買えば、たとえ収益が少々低下したとしても、それは必ずしもこの投資によって満足すべき成果を収めるための妨げとはならない。
- このようなときに、安全域は本来の目的を果たしたといえるわけである。
もちろん、まったく将来性のない企業に投資することは現実的ではありません。
ただ実際には、
- 明確に成長が約束されている企業
- 明確に衰退が確定している企業
このどちらでもない「中間的な企業」が大半です。
こうした銘柄を割安で購入していれば、
仮に業績が多少悪化しても、投資全体としては十分な成果を得られる可能性があります。
これこそが、安全域が本来果たすべき役割です。
まとめ
- 成長株の安全域は「将来の期待収益」に基づく
- ただし人気銘柄は高値になりやすく、安全域が消えやすい
- 割安株の安全域は「価値と価格の差」そのもの
- 割安株投資では耐久力(下方耐性)が重視される
おわりに
割安の意味には、
- 収益力に対して割安
- 資産価値に対して割安
の2種類があります。
特に資産ベースの投資では、将来の成長はあまり織り込まれません。
それでも一部の企業は、環境の変化によって大きく評価が見直されることがあります。
そのため投資家は、
- 分散でリスクを抑えつつ
- 市場に見放された銘柄の中から「化ける可能性」を探す
という、一見矛盾した行動を取ることになります。
基本は配当などのリターンで満足しつつ、
ときに得られる大きなリターンを狙う――
これもまた、安全域という考え方の延長線上にある戦略といえるでしょう。