例えば、NTTの株価に一喜一憂する気持ちは非常にわかります。
ですが実際にトレードして利益を得ようとなったら、話は変わってくるでしょう。
今回は、プライシング手法とタイミング手法について詳しく見ていきます。
相場変動リスク
7年以下程度の比較的短期の優良債券であれば、いざとなれば満期まで持っておけば元本は還ってくるので、債券価格の相場の変動を考慮に入れる必要はありません。
これと同じことが個人向け国債でもいえます。
個人向け国債の保有者は、常に買い付け価格で現金化することができるためです。
しかし長期債の場合、満期まで我慢していたら半生が終わってしまいます。
そのため満期までの間の価格変動を考慮する必要があります。
また株式ポートフォリオも、数年単位で見た場合、価格変動の波に逆らうことはほぼ不可能です。
相場変動で利益を上げようとしない
- 投資家が望むことは、相場水準の変化によって保有する株式の値が上がったり、また有利な価格で株を売買することで利益を上げることである。
- だが、その思考こそが真の意味での危険を伴うものであり、投資家を投機に駆り立てるものである。
- 投機行為をするなと口で言うのは容易であるが、困難なのは読者がその忠告を守ることだ。
- 投機をしたければ、最終的には恐らくカネを失うであろうこと覚悟し、すべてを承知の上でやりなさい。そして必ずリスクにさらす金額の上限を定め、投資プランとは全く別個のものとして取り組むのである。
投資家が利益を望むことは当然であり、理にかなっています。
しかし、その思考は投資的思考ではなく投機的思考といえるでしょう。
とはいえ投機を行うなと口で言うのは簡単ですが、その忠告を守るのはとても難しいです。
特にバリュー投資以外の手法、たとえば成長株投資も併用するならば尚更です。
もし投機を行う場合は、最悪失っても構わないお金を別途用意して、バリュー投資とは別個のものとして取り組む必要があります。
株価の揺れから利益を得る二つの方法
- 投資に適した優良銘柄株であっても、周期的に訪れる株価の大きな変動を避けることはできない。
- ゆえに、賢明なる投資家はそうした株価の揺れから利益を得る可能性を注意深く探るべきである。
- そのために考えられる方法は二つある。タイミング手法とプライシング手法である。
- タイミング手法とは、市場の動きを予想して、今後株価が上向きそうなときには買い付け(保有を続け)て、下げる見通しの時には売る(買い控える)ことである。
- プライシング手法とは、本来の価値以下の値がついているときに買い、実質価値以上に値が上がったら売ることである。
どんな優良銘柄であっても、相場の変動から逃れることはできません。
だからこそ利益を得る機会があり、その可能性について注意深くあるべきでしょう。
そのための手法が二つあります。
一つはタイミング手法と呼ばれ、上がりそうなら買って下がりそうなら売る手法です。
もう一つはプライシング手法と呼ばれ、本来の価値以下で売られているときに買い、実質価値以上になったら売る手法です。
プライシング手法は防衛的投資家に適している
プライシング手法は防衛的投資家に向いており、高すぎる価格を支払って株を買うことのないよう注意するだけで良いです。
その例外はドルコスト平均法、つまり継続的に株を買う方法をとっている場合のみです。
ただ、どちらの手法でも、満足のいく結果が得られるとグレアムは太鼓判を押しています。
タイミング手法は投機
- もしも彼が株価予想に重点を置くタイミング手法をとれば、その人は投機家に成り下がり、投資結果も投機家のそれと同様に終わるであろうことも確かである。
- なんらかのシステムや相場予測の指示に従って売買することでカネ持ちになりたいと考えているとすれば、無数の人々と同じことをして、数知れない競争相手よりもうまく立ち回ろうとしていることになる。
- 一般の投資家が、自分自身もその一員である一般大衆以上に的確に相場の動きを予測するなどという根拠は、理論的にも経験上においても存在しないのである。
ウォール街の大多数の人は、タイミング手法を行っています。
しかしグレアムは、相場予測やタイミングといったものへの過大評価に対して疑問を呈しています。
日々現れる、望めば簡単に手に入る数えきれない株価予測をいちいち検討することなど、到底不可能です。
しかし、実に多くの投資家が相場予測に注意を払い、それに従って行動を起こしています。
なぜなら、将来の株価について何らかの見解を持つことが重要であると彼らが思い込まされてきたからであり、また証券会社などが下す予測は少なくとも自分の予測よりは信頼できるものだと、彼らが考えているからに他ならないためです。
確かなことは、多くの優秀な人々が相場予測を行っており、一部の人は間違いなく、正しい相場予測を行った結果としてお金を手に入れているということです。
しかし、知識も経験も足りない一般の人々が相場予測で儲けることができるでしょうか。
無数の、しかも優秀な人々とも競争をして、はたして先回りして利益を獲得できるのでしょうか。
一般の投資家が、自分自身もその一員である一般大衆以上に的確に相場の動きを予測するなどという根拠は、グレアムの理論的にも経験上においても存在しません。
プライシング手法のメリット
- 信頼できる(ように思える)買いのシグナルが出るまで投資を控えることで、一体どんなメリットがあるのだろうか?
- 投資家がこうしたやり方で成功したといえるのは、待つことによって株価が十分な安値を付けたときに買い付けることができ、逸失した配当収入を相殺できたときだけである。
- すなわちタイミングというのは、それがプライシングと見合っていなければーつまり、以前売った価格よりも相当安い株価で買い戻すことができるのでなければー真の価値はないのである。
投資家は買ったら、一年程度であれば何とも思わず持ち続けます。
では本来の価値より安くなるまで買うのを控える手法には、一体どんなときにメリットがあるでしょうか。
それは配当収入を失ったとしても、本来の価値より安く買い付けることができたときです。
そう言う意味で、買うべきタイミングは安いときに買うに限ります。
ダウ理論といったタイミング手法が役に立たない理由
- この手法(ダウ理論)を簡単に説明すれば、平均株価上昇局面におけるある種の「ブレイクスルー」を買いシグナルとし、株価下落の局面においても同様のブレイクスルーを売りのシグナルとするものである。
- こうしたフォーミュラの支持者が増えて重要性が増した理由は、一定期間にわたってそれが機能してきたから、あるいは単に過去の統計データにもっともらしく当てはまったということである。
- だが支持者が増加するにつれて、その確実性は低下傾向をたどることになる。
- 第一の理由は、時間の経過とともに状況が変化し、古いフォーミュラが新たな状況に適合しなくなること、第二の理由は、あるトレーディング理論が株式市場で広まると、それ自身が相場の動向に影響を与えることになり、結局はそれが利益を上げる可能性を奪ってしまうことである。
- 人気が高まることによって理論が正当化されたように思えるのは、売買シグナルに従った理論支持者たちの売買行為そのものによって相場が上下するようになるからである。
- 当然ながらこの種の「総崩れ」は、一般トレーダーにとって利益とならないばかりでなく危険なものである。
タイミング手法で有名なものにダウ理論であり、その中で代表的なものがブレイクスルー法です。
これは株価が上がり買いシグナル(ピボットポイント)が灯ったときに、株を買い付ける手法です。
gyatuby.hatenablog.com
ダウ理論の支持者が増え重要性が増した理由は、一定期間にわたってそれが機能したからであり、あるいは単に過去の統計データに当てはめるともっともらしく機能したからと言えるでしょう。
しかし支持者が増えるにつれて、この手法の確実性は低下してしまいます。
なぜなら、時間の経過とともにその公式に当てはまらない事態が生まれるからであり、またあるトレーディング手法が株式市場で広まると、それ自体が相場に織り込まれ、利益を得る機会を奪ってしまうためです。
これがテクニカル分析が有効であると考える根拠でもありますが、みんながそれを信じて行動するためある種のパターンが生まれます。
しかしみんながパターンを信じ先回りして買ったらどうなるでしょうか?
実際に私が大きな利益を得たのも、わかりやすい綺麗なチャートパターンではありませんでした。
こうした堂々巡りが行われてしまうので、防衛的投資家には真の買いタイミングは結局わからずじまいであり、利益から遠のく結果になりかねません。
まとめ
- プライシング手法とは、本来の価値以下の値がついているときに買い、実質価値以上に値が上がったら売ること
- タイミング手法とは、市場の動きを予想して、今後株価が上向きそうなときには買い付け(保有を続け)て、下げる見通しの時には売る(買い控える)こと
- 防衛的投資家は、相場変動により利益を得ようとするタイミング手法による投機は行うべきでない。
- プライシング手法による成功とは、待つことによって株価が十分な安値を付けたときに買い付けることができ、逸失した配当収入を相殺できたときである。