債券投資では「発行体の規模」が安全性を左右します。
小規模な企業や自治体は財務的にも人的にも脆弱であり、慎重な見極めが必要です。
今回は、グレアムが提示した規模の最低基準とその考え方を解説します。
出発点となるニューヨーク州法令(前回)
何の基準もない状態よりは、すでに存在する法令や規則をもとにルールを作る方が理にかなっています。
とはいえ、出発点となるニューヨーク州の法令は非常に幅広いものの、その多くは時代に合っていなかったり、理論的・科学的な根拠が十分でないものも多いようです。
そこで本書では、ニューヨーク州法令をあくまで「参考材料」として分析し、ルール作りの手掛かりとする立場をとります。
ニューヨーク州法令の一般基準(前回)
- ニューヨーク州法令に規定された債券投資の一般基準は、①発行体の性質と立地、②発行体の規模、③発行証券の条件、④債務返済・配当能力の実績、⑤支払利息に対する収益の比率、⑥債券発行残高に対する資産価値の比率、⑦債券発行残高に対する株主資本の比率━━に大別される。
今回は②発行体の規模について見ていきます。
発行体の規模
- かなり小規模な企業の債券は、保守的な投資家向きの証券としては望ましくない。
- そうした小さな企業は不測の事態に対して大手企業よりも支払い能力がないうえ、銀行とのつながりや技術資源の面でも大きなハンディがある。
- また、小規模な企業は広く資金を調達できないため個人資金に頼らざるを得ず、そうした企業への資金提供者が利益の分配や経営権に直接干渉する恐れもある。
- こうした小規模な企業への投資が適切ではない理由は小さな町などが発行する債券にも当てはまるもので、そうした地方債を購入する場合には一定規模以下の人口の地方自治体債などは避けたほうがよい。
小規模な債券は、保守的な投資家にとっては避けるべき投資先です。
なぜなら、規模が小さい企業は支払い能力が低く、さらに人材や技術などのリソースも限られているためです。
この問題は、小さな自治体が発行する地方債にも当てはまります。
したがって重要なのは、「どの程度の規模から安全とみなすのか」という基準をどこに設けるかという点です。
ニューヨーク州法令の規定
例えば州債については、ニューヨーク州に隣接する州では人口1万人以上、その他の州では3万人以上といったように、それぞれの投資対象ごとに最低基準が設けられています。
このように一定の基準を設けることで、規模の小さすぎる発行体によるリスクを避けようとしているのです。
基準に対する批判
- しかし、債券投資という全体的な観点から見ると、こうした収益の最低基準はあまり意味がないと思われる。
- こうした状況を踏まえ、われわれはそれらの基準に代わるものとして以下のような最低基準を提案する。
本著では、ニューヨーク州法令による基準についてそれぞれ検討していますが、その多くは「厳しすぎる」と批判しています。
そこでグレアムは、より実情に即した独自の基準を新たに提案しています。
工業債の要件

グレアムが示した最低規模の基準は当時としては妥当でしたが、現代の経済規模を踏まえるとやや小さく感じられます。
そのため、実際の投資では企業規模だけでなく、業界内での地位が上位にあるかどうかといった点も考慮するのが望ましいでしょう。
もっとも、グレアムは規模以外にも複数の安全基準を設けているため、過度に心配する必要はありません。
なお、当時ニューヨーク州法では工業債への投資を禁止していましたが、グレアムは「十分に安全性の条件を満たすなら例外的に認められる」として、独自の基準に工業債を含めています。
規模の大きさと債券の安全性
- これが意味するのは、規模の大きさそれ自体がその企業の繁栄度と財務力を表すものではないということである。
- 業界最大手の企業といっても、分不相応に債券債務が多ければその業界では最もぜい弱な企業であるということにもなる。
- 工業債の分野では大手企業の債券は中小企業の債券よりも安全であると言えるが、それでもその大手企業の債券が投資家の信頼を得るには好業績という裏付けが必要である。
たとえ業界の最大手であっても、財務状況が悪化している企業を投資対象とするのは避けるべきです。
大手企業の債券であっても、安全な投資先とみなすためには、健全で安定した業績が欠かせません。
まとめ
- かなり小規模な企業の債券は、保守的な投資家向きの証券としては望ましくない。
- 規模の大きさそれ自体がその企業の繁栄度と財務力を表すものではない。
- 工業債の分野では大手企業の債券は中小企業の債券よりも安全であると言えるが、それでもその大手企業の債券が投資家の信頼を得るには好業績という裏付けが必要である。
おわりに
NVIDIAの決算は無事に通過したものの、ハイテク株は思ったほど上昇せず、むしろ下落しました。
これは単なる決算反応というより、「材料出尽くし」と見た投資家が利益確定を始めたサインかもしれません。
では、引き上げられた資金はどこへ向かうのでしょうか。
今のところ、相場全体の動きを見ると、ハイテクから抜けた資金の一部はバリュー株へ流れ始めています。
安定した収益を持つ企業が見直されやすく、この動きは自然と言えるでしょう。
しかし同時に、株式市場そのものから資金が抜けつつある雰囲気も感じられます。
逃避先として注目されていたビットコインまでも大きく下落している状況を見ると、投資家心理が「攻め」から「防御」へ切り替わり始めているようにも見えます。
そんな中、存在感を増しているのが金(ゴールド)です。
街中で買取店のチラシが増えているのも、相場環境の空気を象徴しているようです。
価値がゼロにならない資産が再び注目され始めているのでしょう。
個人的には、暴落が来ても耐えられる余力があるため、今は慌てて売買する局面ではないと考えています。
資金の流れが定まらない時期こそ、無理にポジションを動かすのではなく、状況を観察し、次の動きに備えるべきタイミングなのだと思います。
市場は常に循環し、主役も入れ替わります。
その変化の兆しを捉えられるよう、引き続き冷静に相場を見守っていきたいです。
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