銘柄選びはとても大事な問題です。
ワイコフは、実際にトレードを行う前に銘柄選択のルールを作ることを勧めています。
本書の優れた点は、こういった点にも踏み込んでいるところです。
この銘柄が単にいい!だけではなく、理論に基づいて教えてくれます。
銘柄の選択
- どんな種類の株が一番一ポイント動きやすいのだろうか。それは値がさ株である。
- (大型株でも小型株でも)手数料と税金はどちらでも変わらない。
- 金利費用は3倍かかるが、テープ解読者は毎日ポジションを手仕舞うのだから関係がない。
- 300ドル以上を付けているときはトレードには向かない。
- それは1回ごとの値動きや、売りと買いの気配値の開きがあまりに大きすぎて、手早く売り買いをすることが難しいからである。
値動きで利益を得ることを目標としているので、当然値動きがある銘柄を選びます。
そういう意味では値がさ株*1が望ましいですが、300ドル以上(日本円だと3万円以上)は呼値の関係でトレードに向きません。
呼値
呼値とは、売買する際の価格の刻み幅のことを指します。
これは実際に板を見るとよくわかります。
こちらのスクリーンショットは、任天堂(株式分割前)の板です。
価格が10円単位になっていますよね。これが呼値です。
値がさ株になればなるほど、呼値の単位が大きくなります。
また一方で、TOPIX100に採用されていると、呼値の単位は小さくなります。
具体的な呼値について知りたい方は、下記リンク先を参考にしてください。
呼び値/呼値│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
任天堂のような値がさ株は、動く金額も大きくなるため利幅を稼ぐにはお勧めです。
(もちろん任天堂を推奨しているわけではありません。)
ワイコフは300ドル以下を目安としていますが、これは気配値が広がりすぎるのを抑えるためです。
上表の呼値に基づけば株価30,000円以下のときの呼値の単位10円未満がひとつの目安といえるかもしれません。
もちろんほかにも条件がありますので、あくまで参考程度にしてください。
主要銘柄
- 相場全体のトレンドは主に次のような銘柄によって形作られる。
- 影響力の大きい順番に挙げる。
- ユニオン・パシフィック鉄道会社
- レディング鉄道会社
- USスチール社普通株
- セントポール鉄道会社
- アナコンダ銅会社
- スメルターズ社
ワイコフは実際にトレードで扱うべき主要銘柄について、具体例を挙げて説明しています。
順番にみていきましょう。
ユニオン・パシフィック
- ユニオン・パシフィックは大量の浮動株*2、活発な取引、スイングの大きさという点でトップの座にある。
- 大小のフロアトレーダーが好んで手掛ける銘柄
本書に記載によれば株価164ドル前後、8分の1ドル単位で取引されています。
トレーディングを行う上では、攻守ともに流通量が多く、活発に売買されている必要があります。
そして当たり前ですがスイング(値動き)が大きくなければ、トレードで利ザヤを稼ぐことはできません。
レディング
- 日々のスイングはユニオン・パシフィックとほぼ同じ大きさである。
- だが、発行済み株式の時価総額は7000万ドルしかなく、
- ほかの鉄道会社や固定株主の持ち株が大量にあって、浮動株数が少ない。
- そのせいで株価操作を受けやすい。
- レディングはテープ解読者のトレードにうってつけの銘柄である。
ユニオン・パシフィックと比べると、時価総額が小さく浮動株も少ないです。
そのため、大口に左右されやすく値動きが荒くなります。
株数の少なさは、出来値間の幅がしょっちゅう一/四ポイントになることにも表れました。
通常であれば一/八ポイントで気配値があります。
しかしワイコフは、レディングもまた、デイトレーダーには適した銘柄にうってつけだと説明しています。
恐らくスイングの大きさを重視しているのでしょう。
USスチール
- 発行済み株式数が500万株もあり、そのせいで大衆の関心も高い。
- この株は相場全体、あるいは大衆の投資意欲の指標の役目を果たす。
- だが、一日の値幅が平均でだいたい1ポイントしかなく、テープ解読者にとっては小さすぎる
オニールがいうところの古くて巨大な企業と言えるでしょうか。
発行済み株式数が多すぎると値動きは小さくなってしまいます。
実際に値幅は1ポイントと小さいため、デイトレードには不向きです。
しかし、マーケット全体の動向を見極める上では重要になるでしょう。
セントポール
- 概して相場環境のわずかの変化に敏感に反応する。
- 日々の変動幅はユニオン・パシフィックやレディングほど大きくない。
セントポールは、前述の2銘柄には劣ります。
しかし、少しの環境変化で大きく動くこの銘柄は、トレーディングでは儲けるチャンスを与えてくれます。
ワイコフによれば、セントポールもまた、トレード向きの銘柄としてトップクラスだと述べています。
アナコンダ
- アナコンダは銅株の代表であり、かなり満足できる値動きを示し、トレードのチャンスも豊富である。
銅はドクターカッパーとも呼ばれ、銅価格が景気の先行指標として使われることがあります。
言い換えれば、景気動向に応じて銅価格が変動するため、アナコンダは景気敏感株といえます。
セントポールと同様に、景気に敏感に反応するアナコンダもまた、スイングが大きくトレーディングに適しています。
スメルターズ
- スメルターズは株価操作されやすい銘柄
- 株価の動きは操作されているときは不安定で、たいてい予測しがたいが、ほかのときは分かりやすい。
- 日々のレンジは、ほかの株と大体似たようなものである。
- ほかの主力株のような安定性がなく、明確なトレンドがほとんど現れない。
調べた限りでは、恐らくアルミ精錬の会社を指していると思われます。
金属関連株は、先ほどのアナコンダと同様に景気敏感株です。
スメルターズもまたスイングが大きい以上、トレーディングには適しているでしょう。
テープ解読者にとっての最適の銘柄
ちょうつがいとは上のようなものです。
ドアによく付いているやつですね。
この左と右側が回転するように、通常はユニオン・パシフィックとレディングを扱っていれば、トレーディングで暇をすることはないでしょう。
ただし、特定の業種が人気になっている場合は、そちらのほうが値幅が大きく利益が得られる可能性があります。
その場合にはアナコンダやスメルターズ、USスチールが代わりを務めることになります。
そのため、業種グループがどのような値動きをするのか、その特徴を予めつかんでおく必要があるでしょう。
トレードは一回に一銘柄
- テープ解読者が手掛ける銘柄数は複数よりも一種類が望ましい。
- 念入りに研究すれば、一定の状況で株がどう動くかを予測できるようになる。
ある銘柄について十分な知識や経験が得られるまでは、少なくともその銘柄に集中したほうがよいでしょう。
ロットを大きくするのと同じように、扱う銘柄数を増やすことはいつでもできます。
実際にトレードをしてみて、継続的に利益を得ることができるようになってからでも遅くありません。
銘柄ごとに、頑固なもの、敏感なもの、鈍いもの、従順なもの、激しいものなどがあります。
実際にトレーディングしている銘柄が主役になることもあれば、ほかの株のあとを追いかけることもあるでしょう。
その株に精通しなければ、これらの動きは理解できません。
銘柄研究はファンダメンタルのほかにも、こうしたテクニカルな動きについても研究する必要があるでしょう。
まとめ
- 呼値の単位が小さい(300ドル以下の)値がさ株を狙う
- 大量の浮動株、活発な取引、スイングの大きさは必要条件
- 特定業種が人気化したら、その時はチャンスを求めて参入する。
- トレードは一回に一銘柄
おわりに
デイトレードに適した銘柄の条件とは?という内容でした。
むやみに手を出してやけどを負うよりも、こうした目安があるとありがたいですね。
具体的な銘柄選びについての話は、第3章でも続きますので、引続きお付き合いください。