本書もこの章で最終章となります。
最後は大きなスイングに適用されるルールと大口投資家に乗ることを覚えましょう。
バックテスト
- 1916年の株式相場にその(本書に記載された)諸原則を適用することによって、テストと比較検討を行うことができた。
- その結果、本書の内容について、大きく変更する必要のないことが明らかになった。
現在読んでいる本書は第二版にあたります。
改訂するにあたって、ワイコフはテープ解読に関する諸原則を振り返っていまだに通用するか、つまりバックテストを行ったそうです。
結果は言うまでもありません。
第一次世界大戦でトレードの性格は、先導株が入れ替わり、スイングが大きくなったものにすぎませんでした。
大きなスイングで転換点を探す
- 相場の一定の重要な転換点においてアキュミュレーション(買い集め)とディストリビューション(売り抜け)を見つけだすものである。
- 私はこの方法を主要なスイングにおける相場予測に使ってみたが、結果はうまくいった。
- そして、相場に従ってトレードする方法としては、主要なスイングでは制約があまりないので、ほかのものよりもずっとやりやすいことを発見した。
ワイコフは改めて先導株の大きなスイングで、スキャルピングやデイトレードを行ったらうまくいくと念押ししています。
日々の小さいスイングではなく、中長期間の大きなスイングです。
この点について、最終章では深堀しています。
スイングをとらえるには
- 数多くある中期的な変動だけでなく、長期的な上昇トレンドや下降トレンドをとらえる準備をどう整えたらよいかということは、テープ解読の技術を理解した者には当然分かっていることである。
- この先30分という小スイングの予測なのか、あるいはこの先2~3週間のトレンド予測なのかは対して重要な問題ではない。
- いずれの判断をする場合でも、価格や出来高や活気や支持や圧力に関して同じ指標で現れる。
スイングの大小にかかわらず、見るべきなのは価格や出来高、支持線や抵抗線、そしてムードです。
これらの点については、チャートでみるとよりはっきりわかるでしょう。
そしておそらく板やチャートだけでなく、ニュースなどにアンテナを張る必要もあるでしょう。
手掛ける銘柄のファンダメンタル分析も当然求められるかもしれません。
うわさ話や耳より情報にまでは手を出してはいけませんが、利用できるものはなんでも利用する貪欲さが、研究者にとっては必要になります。
主要なスイングとは
- 株式相場の研究は、現在の価格レベルよりも上や下にある力と研究することに等しい。
- ひとつひとつの変動には準備と実行と達成の時期がある。
- 準備の時期が長ければ、見込まれるスイングの幅もそれだけ大きなものになる。
- 相場の主要な変動の準備にはたいてい数カ月を要する。
個人的なイメージはバネと同じです。
バネは押せば押すほど、そのぶん手から離せば大きく跳ねます。
主要なスイングもまた、長い調整ともみあい期間が必要になります。
バネが遠くまで跳ぶように、主要なスイングも大きく動きます。
大きく株価が動けば、テープ解読者は多くの利益を得ることができます。
この点、トレーダーを大口と小口に分けて見てみましょう。
大口取引者の動き
- それ(相場の主要な変動)に先立つ時期に下落が生じることがあるが、大口取引者はそこで株のアキュミュレーションを行う。
- 大口取引者はあらかじめ6カ月から1年前に株式の市場価値の重要な変化を予測して、それに対処する体制を整えることができる。
- 相場変動の仕組みを心得ている者が準備の時期を研究を行えば、次回の大スイングの方向性と見込まれる幅とを明らかにできる。
- こうした重要な転換点―特にそのなかでも根本的なのはブームとパニックであるが―の研究は必須のものといえる。
大口取引者はその大きすぎる資金ゆえに、動くと出来高の大きさでバレます。
そのため、動き出すにはある程度の確信が必要になり、それだけ準備と研究に時間を掛けます。
大口の動き出しは、アキュミュレーションやディストリビューションでバレることが少なくありません。
小口取引者がやるべきこと
- 小口取引者は、膨大な量の有価証券を売買するものの動きを読んで、その分け前を頂戴するのがよい。
- だが、そのようにして利益を得るには予測力が必要である。
- その予測力は、テクニカルな要因やそのほかの要因を研究することによって養われる。
入念な準備と研究は、わたしたち個人投資家にとっても大切です。
特に重要な転換点を見抜くことができれば、機関投資家の動きに乗って楽に稼ぐことができます。
まずは技術を学ぶことです。
本書はもちろん、何冊かファンダメンタル分析やテクニカル分析に関する良書に目を通すと良いでしょう。
そこで学んだテクニックは、実践を通じて確かな武器として機能し始めます。
相場はすべてを織り込む
- 収穫量、通貨、政治、鉄道収益などのファンダメンタルな要因は、最終的に全部、テープの上の価格に織り込まれている。
- 将来の株価のガイドとして相場の動きを研究すれば、素晴らしい成果が生み出されるのに、現実には副次的な重要性しかない要因に時間を取られるのは得策ではないと考えているのである。
- 私がこう主張するのも、いわゆる基本的要因よりも、大口取引者の取っているポジションのほうが大事だと確信しているからである。
ワイコフもまた、ファンダメンタル分析よりもテクニカル分析を重視しています。
ワイコフがいた時代より、ツールはもちろんわたしたちも進化しています。
たしかに昔は、ファンダメンタル分析を活用することでみんなよりも早くお宝を探すことができたかもしれません。
ファンダメンタル分析の古典ともいうべき『証券分析』にはエッセンスが溢れています。
しかし今では、より深い知識と強運が必要になるでしょう。
現在ではテクニカル分析が主流のようです。
ただしあくまでバランスの問題で、ファンダメンタル分析を全く使わない理由もありません。
ここで覚えてほしいのが、相場はすべてを映す鏡です。
ファンダメンタル的要素はもちろんのこと、大口の動向、大衆のムード、そして投資家自身さえも織り込んでいきます。
自分だけのトレード法を見つけよう
- ここ数年の間、私は本書で述べた原理を使って、5~20ポイントのスイングの予測を行ってきた。
- 極めて興味深く、大いに有益なこの職業に携わりたいと思う人は、特に自分個人の必要性に見合ったトレード法を作り上げることを目指すべきである。
どんなに優れた投資家たちでさえ、使うテクニックは同じではありません。
わたしたちも、自分のバッググラウンドに合ったトレード法を見つけましょう。
バッググランドと一括りに行っても、それは様々にあります。
たとえば精神的に恐れを抱いていると、注文にためらいが生まれます。
その場合は早めにスタートが切れるように、機械的な発注ルールを作ったりします。
もちろん必要なくなったら、そのルールをなくしたりカスタマイズするのは自由です。
ほかにも本業の仕事があって時間が取れなかったり、資金量が乏しかったりもあるでしょう。
とにかく自分の事情にあったトレード法を作り上げることを目指すべきです。
本書は、この抽象的だけれど大事なことを話して結んでいます。
みなさんおつかれさまでした。
まとめ
- 相場の一定の重要な転換点においてアキュミュレーション(買い集め)とディストリビューション(売り抜け)を見つけだすものである。
- 私はこの方法を主要なスイングにおける相場予測に使ってみたが、結果はうまくいった。
- そして、相場に従ってトレードする方法としては、主要なスイングでは制約があまりないので、ほかのものよりもずっとやりやすいことを発見した。
- 小口取引者は、膨大な量の有価証券を売買するものの動きを読んで、その分け前を頂戴するのがよい。
- 相場は全てを映す鏡
- ここ数年の間、私は本書で述べた原理を使って、5~20ポイントのスイングの予測を行ってきた。
- 極めて興味深く、大いに有益なこの職業に携わりたいと思う人は、特に自分個人の必要性に見合ったトレード法を作り上げることを目指すべきである。