売りのルールを学ぶ前に、まず知っておきたいことがあります。
それは、優れた投資家ほど「売る回数そのもの」が少ないという事実です。
多くの投資家は売り方ばかりに注目しますが、実際には買うタイミングが適切であれば、損切りの回数は大幅に減らせます。
ウィリアム・オニールも、売りの問題の多くは買い方に原因があると述べています。
本記事では、売りの具体的なサインを学ぶ前に知っておくべき「損切りを減らす2つのカギ」と、オニールが重視した売却の基本原則について解説します。
売りを減らす2つのカギ
- 重要な売りのルールを細かく検証する前に、まずは二つの注意点を知っておこう。
売りのサインを覚えることも重要ですが、その前に理解しておきたいポイントがあります。
それは「正しく買うこと」と「調整に振り回されないこと」です。
この2つを身につけるだけでも、不要な損切りは大幅に減らせるでしょう。
1.ピボットポイントで買う
- まず、ピポットポイントで正しく買えれば、売りにまつわるほとんどの問題は解決される。
- 日足や週足チャートを見て、適切なベースから抜けた時に正しいタイミングで買うことだ。
- 株価が高くなってから買ったり、ピボットポイントから5%以上値を上げてから増し玉する、というようなことを避ければ、通常の調整ならポジションを売る必要は無くなるだろう。
一つ目は、適切なピボットポイントで買うことです。
日足や週足チャートを確認し、正しいベースから株価が抜け出したタイミングで購入します。
大化け銘柄は、適切なピボットポイントから買っていれば、買値から8%以上下落するどころか、ピボットポイントを割り込むこと自体があまりありません。
そのため、正しいタイミングで買えるようになれば、損切りの回数は自然と減っていきます。
仮に失敗したとしても、8%の損切りラインまで待つことなく、4〜5%程度の下落で異変を察知できるようになるでしょう。
売り方を学ぶ前に、まずは買い方を磨くことが大切です。
2.調整の売りに惑わされない
- 次に、強気相場で株を買った直後に、ティッカーやパソコンで大量の売りが示されることがある。
- しかし、この売りは知識ではなく感情任せの一時的な売りで、一見大量に見えても過去の出来高と比べてみると実はそれほどの量ではないだろう。
- 大化け銘柄には、数日から1週間ほどの間に大量の売りが出ることがある。
- そんなときには週足チャートを参考にして、大きな視点でマーケットを見るようにすれば、通常の押し目に不安を感じたり振るい落とされるのを防ぐことができる。
- 実際に大化け銘柄の40〜60%がピボットポイントちょうどか、あるいはその少し下まで下落して買い手を振るい落とそうとする。
- だが、出足が遅れて高値で買ったのではないかぎり、8%まで下落することはないはずだ。
ブレイクアウト投資では、買った直後に株価が調整することは珍しくありません。
短期的には大きな売りが出ているように見えても、週足で確認すると単なる押し目に過ぎないケースも多くあります。
実際、大化け銘柄の多くは上昇途中で投資家を振り落とすような値動きを見せます。
ピボットポイント付近まで下落し、不安になった投資家が売ったところで再び上昇することも少なくありません。
適切なタイミングで買えていれば、このような調整に耐えやすくなります。
反対に、損切りラインである8%を超えて下落した場合は、買うタイミングが悪かったか、銘柄選択に問題があった可能性が高いでしょう。
その場合は、素直に損切りすることが重要です。
損切りが続くときは
- 間違った銘柄選択ばかりでどれも損切りになってしまうような場合には、ピボットポイントよりも10〜20%上で買っていることが多くないかを確認することだ。
- 遅れて買った銘柄がうまくいくことはほどんどない。
どの銘柄も損切りになってしまう場合は、自分の買うタイミングを見直してみましょう。
多くの場合、ピボットポイントから10〜20%も上昇した後に飛び乗っているケースが見られます。
後から人気化した銘柄を追いかけて買っても、成功する確率は高くありません。
CANSLIMの条件を満たしている優良銘柄であっても、買うタイミングを間違えれば利益を得ることは難しくなります。
売りの技術を磨く前に、まずは正しい買い場を見極める力を身につけましょう。
売りのテクニカル指標
- 個々の大化け銘柄とマーケット全体がどのように天井を付けたかを調べることで、株価が天井を付けて下落を始めるときに示す兆候をいくつか発見した。
ここからが本章の核心です。
オニールは数多くの大化け銘柄や相場の天井を研究し、株価が下落へ転じる前に共通して現れる特徴を見つけました。
これらのサインを理解しておけば、大きな利益を失う前に売却する判断ができるようになります。
具体的な売りシグナルは次回以降で解説しますが、まずは売りの考え方を押さえておきましょう。
機関投資家には逆らわない
- 情報通の投資家が売っているのを見たら、あなたも売るべきだ。
- 機関投資家が大量のポジションを現金化し始めたら、個人投資家のあなたにはそれに逆らうだけの力はない。
CANSLIMの「I(Institutional Sponsorship)」でも説明されているように、機関投資家の動向は非常に重要です。
株価は需要と供給で決まります。
そして、その需要と供給を大きく左右しているのが機関投資家です。
もし機関投資家が大規模な売却を始めた場合、個人投資家がその流れに逆らうことは困難でしょう。
個人投資家の強みは機動力です。
大口投資家の流れに逆らうのではなく、うまく追随することが大切です。
ファンダメンタルズは売りの判断材料になりにくい
- 買うときには企業の収益、売り上げ、ROE(株主資本利益率)、新製品などのファンダメンタルズ指標に注目しながら銘柄を選ぶ。
- しかし、株価が天井を付けていても、収益はまだ100%上昇していたり、アナリストがこれからも成長を続けて株価も上昇すると予測しているものなので、ファンダメンタルズ指標は売るときにはあまり当てにならない。
銘柄を選ぶときには、売上高や利益成長率、ROE、新製品などのファンダメンタルズが重要になります。
しかし、売るタイミングを判断するときには事情が異なります。
株価が天井を付ける頃は、業績も絶好調で、市場の期待も最高潮に達していることが少なくありません。
アナリストも強気な予想を出し続けるでしょう。
だからこそ、ファンダメンタルズだけでは天井を見抜けないのです。
売りの判断では、株価や出来高などの実際の値動きを重視する必要があります。
上昇中に利益を確定する
- 私は大化け株のほとんどすべてを上昇中手仕舞った。
- 「1羽の手のなかにいる小鳥の価値は、茂みに隠れている2羽の鳥よりも価値がある」と言うように、手に入るかどうかわからない利益よりも、確実に手に入れた利益の方が価値があるのである。
- だからこそ、ウォール街のだれかが行った個人的な見解ではなく、異常な市場の動向(株価や出来高の動き)に基づいて売る必要がある。
多くの投資家は「もっと上がるかもしれない」と考え、利益確定を先延ばしにします。
しかし、大きな利益を得る投資家ほど、利益を守ることの重要性を理解しています。
含み益は確定しなければ利益ではありません。
下落が始まってから売ろうとしても、恐怖や迷いから行動できなくなることもあります。
だからこそ、上昇トレンドの途中で利益を確定するという考え方が重要になります。
確実な利益は、不確実な未来の利益より価値があるのです。
天井を見極めるサイン
- 天井を正しく見極めるには、いくつかの目安がある。
- クライマックストップ前後の動き、出来高の減少、そのほかの弱さを示す動きなどである。
- このような情報を研究し続けて、日々の判断材料として使い続けていれば、その多くがよりはっきりと見えるようになるだろう。
オニールは天井を知らせる代表的なサインとして、次の3つを挙げています。
① クライマックストップ前後の異常な値動き
② 出来高の変化
③ 株価の弱さを示す兆候
これらのサインを継続的に観察することで、相場や個別銘柄の異変に早く気づけるようになります。
次回以降は、それぞれのサインについて詳しく解説していきます。
売りの技術は一朝一夕では身につきません。
まずはチャートの基本を復習しながら、売りのルールを少しずつ理解していきましょう。
まとめ
- 売りの失敗を減らす最大のポイントは、適切なピボットポイントで正しく買うこと
- 大化け銘柄は上昇途中で調整することが多く、短期的な値動きに振り回されないことが重要
- 売りの判断ではファンダメンタルズよりも、株価や出来高などの実際の値動きを重視する
- 機関投資家の動向を意識し、大きな資金の流れには逆らわない
- 天井を知らせるサインを理解し、利益があるうちに手仕舞うことが大切
おわりに
モメンタム相場が続くなか、資金が集中している銘柄については、そろそろ売り時を意識し始める局面かもしれません。
その理由の一つが、機関投資家によるレーティングの相次ぐ引き上げです。
もちろん業績の裏付けがあっての評価でしょうが、市場参加者の期待が過度に高まると、株価が実力以上に買われることもあります。
相場が熱狂に包まれているときほど、「どこで利益を確定するか」という視点が重要になります。
優れた銘柄を見つけることと同じくらい、適切なタイミングで売却することも投資成果を左右するからです。
利益をできるだけ大きく伸ばしながらも、相場の反転に巻き込まれないためには、売りの技術を身につけておきたいところです。
次回からは、オニールが実際に使っていた具体的な売りサインを解説します。
クライマックストップ、出来高の異変、機関投資家の売り抜けなど、大化け株の天井を察知するための重要なポイントを見ていきましょう。