機関投資家について学べる機会はそう多くはありません。
この章は、普段接する機会が少ない投資家を知るチャンスです。
今回は機関投資家が抱える問題について見ていきましょう。
ポートフォリオの規模の問題
- 多くの機関投資家は、その規模の大きさを問題視している。
- 彼らは何十億ドルという資産を管理しているので、簡単に売買できるような大型株が十分に存在しないからだ。
- このような規模の大きさは、中小型株を大量に売買することが難しい問題に直結している。
しかしオニール氏は、機関投資家が規模の問題で大型株に投資を限定することは間違っていると指摘しています。
ここまで読み進めた読者にはわかるように、中小型株には魅力的な銘柄が多くあります。
たしかに需給関係で思ったように売買できないかもしれませんが、得られるリターンを逃す理由にはならないかと思います。
オニール氏は「年金基金は、資金を異なる投資手法を持つファンドマネジャー数人に拡散することでこのような規模の問題に取り組むことができる。」と、機関投資家に提案しています。
最大の問題は規模ではない
- 彼らの投資哲学や投資手法こそが、マーケットから最大限の利益を得る機会を減らしている原因になっている場合があるのだ。
- 多くの機関投資家が、企業の価値について彼らのアナリストに意見を聞いて株を買っている。
- われわれは、ボトムアップ(成長銘柄になる特徴を持つ個別の銘柄を見つけることに集中する考え方)のほうが、より良い結果をもたらすと考えている。
- 最大の問題は、機関投資家の間で受け入れられているこのような時代遅れの投資判断法はそのほとんどが法律に深く基づいているという点である。
- マネジャーたちは、その期間のアナリストが作る輝かしい銘柄推奨報告書なしには商人銘柄一覧に掲載されていない株式を買うことができない。
しかしながら、オニール氏は最大の問題は規模の問題ではなく、機関投資家を取り巻く法律の問題だと指摘しています。
いったいどういうことなのでしょうか?
機関投資家の買い方の例
ファンドマネジャーやそのチームによって、機関投資家の買い方も当然変わってきます。
最近ではAIによる自動売買や、グローバルマクロ戦略など調べれば調べるほど種類は豊富にあります。
米金融引き締めなどを巡って金融市場の不安定な動きが続くなか、ヘッジファンドは株価指数などに対して堅調な運用成績を維持している。
— ぎゃつ@FIRE目指す会計士 (@gyatubeee) June 9, 2022
なかでもグローバル・マクロ戦略のヘッジファンドが好調。
ヘッジファンドに198億ドル流入 1~3月、7年ぶり水準:日本経済新聞 https://t.co/RhWeCeZd0y
なかには有名企業のみに過去何年間も投資していたファンドもあるようです。
この問題は、今も時代遅れの規則やウォール街の常識に捉われて、機関投資家による投資の柔軟性が失われていることにあります。
例えば、配当金を支払っていないから投資できないなんてルールは、大化けする成長株には投資させてくれず良い規則とはいえないでしょう。
機関投資家は法律に縛られている
- 最大の問題は、機関投資家の間で受け入れられているこのような時代遅れの投資判断法はそのほとんどが法律に深く基づいているという点である。
あなたが機関投資家の立場だったらどうでしょうか。
運用を任せた投資家から成績が悪すぎるといちゃもんを付けられたとします。
どうやって責任を全うしたと言うでしょうか?
自己責任だから諦めろと、頼ってきた出資者を切り捨ててしまいますか?
おそらくベストは尽くしたが市場のせいだから仕方ないと、証拠なりを示して説得するのではないでしょうか。
機関投資家は、一言で言えば「制度化」されてしまっています。
多くの機関が投資判断をするときに「適正評価(レーティングなど)」や「受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)」のような法的概念に縛られています。
投資判断を自分の責任にしたくないがために、適正評価を決める別の機関は、投資成績そのものとは組織的にも法的にも全く関係ないものになっています。
もっと便利な言葉では、「善管注意義務」(善良な仕事人として行動する機関は、その資金を扱うときに注意義務を負うものとするもの)があります。
機関投資家は受託者責任を適切に果たしていれば法的責任がないというものです。
一般的には、たとえ損害を被ってもあらかじめ制度化したファンダメンタル条件を基にその企業を評価したり、適正評価によって導き出した資産配分(アセットアロケーション)やそれに準ずる証拠を基に選ばれた銘柄に投資すれば責任は問われないのです。
一見無責任に聞こえるかもしれませんが、機関投資家の立場で考えると、善管注意義務を全うした証拠を示そうとすると、案外難しいのです。
オニールのやり方が広く普及していない限り、おそらくオニール流の成長株投資は独自性が強く簡単ではないでしょう。
アナリストのススメがないと買えない
- マネジャーたちは、その期間のアナリストが作る輝かしい銘柄推奨報告書なしには承認銘柄一覧に掲載されていない株式を買うことができない。
- 機関はすでに大量の企業を保有しているためアナリストはそれらの株を追って最新情報を入手し続けなければならない。
- 興味深い新しい企業を承認済みの一覧表に載せてその企業に関する報告書を作成するのは、アナリストにとって大きな時間の負担となるのだ。
アナリストレポートがなければ、機関投資家は責任を持って買うことができないのも重大な問題です。
小型株でも専門の調査機関がありますので、機関投資家も中小型株を買うこと自体はできますが、”信頼できる”機関のお墨付きがより必要になります。
個人投資家からすると、なぜそこを分業してしまうのかと疑問に思うところですが、それだけ仕事量や責任の重さが大きいということでしょう。
もちろん法的問題や心無い一部の人たちの”おかげ”かもしれませんが。
大手証券会社のレーティングが出ると、一般的に株価が上がるのはこうした事情があるからかもしれませんね。
底値買いの至福
- 価格が下落している株を買う機関投資家が多いが、最高の業績を達成するためには必ずしも底値買いが最善策とは言えない。
- PERが高くなっている銘柄を売りたがり、PERが低くなると買いたがる。
個人投資家がやりがちな失敗は、機関投資家もやってしまいます。
だって機関投資家も人間だもの、仕方ありません。
底値買いを狙う銘柄は、業績が緩やかに悪化していたり、成長率が失速している可能性があります。
また、PERが割安なのには理由があります。
オニール氏によれば。最も成功を収めた銘柄の模範例を過去50年間分見ていくと、低いPERや「適度に低くなった」PERが株価上昇の大きな要因ではないことは分かっています。
こうしたことから、過小評価された銘柄を選択するバリュー投資にこだわっている投資家のほとんどが、優秀なマネジャーと比べると悪いパフォーマンスに陥っていることでしょう。
成長銘柄とバリュー銘柄を見比べる
- 過去12回の相場サイクルから私が学んだことは、一流のマネーマネジャーなら一回の相場サイクルの間に25%からまれに30%ほどの年間複利総利回りを生み出しているということである。
- バリューファンドは下落相場や低迷市場ではそれなりの結果を出す。
- ほとんどの期間において成長株への投資のほうがバリュー投資よりも良い成績になることが多いのだ。
やっぱり成長株が優れている
- 過去12回の相場サイクルから私が学んだことは、一流のマネーマネジャーなら一回の相場サイクルの間に25%からまれに30%ほどの年間複利総利回りを生み出しているということである。
ただしそれができるのは、少数の優秀なファンドマネジャーのみです。
成長株への投資が大きな利益を上げるのに貢献し、さらに市場が何回も好転していることが更に拍車をかけます。
バリュー株は冴えない
- 同じ時期に過小評価されている株を買う手法を使うマネジャーの場合、最高の成績を上げたマネジャーたちの平均でも15~20%にとどまった。
- バリューファンドは下落相場や低迷市場ではそれなりの結果を出す。
他方バリュー投資の場合は、20%以上の利益を出したマネジャーも数人いたらしいですが、少数派でした。
バリュー銘柄は、その前の強気相場で大きく上昇していないことが多いので、弱気相場での調整も少なくなりがちです。
そのため、バリューファンドは下落相場や低迷市場ではそれなりの結果を出します。
バフェット氏をはじめ、バリュー投資で結果を出している機関投資家もいますので、バリュー投資がだめとかではなく、その性質をよく覚えておくといいでしょう。
オニール氏による調査によれば、ほとんどの期間において成長株投資のほうがバリュー投資よりも良い成績になることが多いという結果になりました。